そのまま二人が座ったままでいると、後ろからハーマイオニーが声をかけた。
「、早く荷物を置いて!図書館に行くんだから」
ハリーはゆっくりと腰を上げ、ハーマイオニーを呼んだ。
はさっきの話を二人がしている間に、荷物を置いてこようと思い、ハーマイオニーに席を譲って寝室に向かった。
寝室にあるベッドはきちんと整い、休暇前にグチャグチャにしたシーツもきちんとしわを伸ばしてひいてあった。
はベッドの上に荷物を置いて、ハーマイオニーのベッドと仕切られているカーテンを開けた。
の目にはハーマイオニーの整ったベッドと既に片付けられた荷物が目に入った。
しかし、だからと言って、は荷物を片付ける気などおきなかった。
そのまま急いで談話室に降りた。
暖炉の前ではハリーとロンを相手にハーマイオニーがお説教をしていた。
「それならニコラス・フラメルが誰なのか探してくれればよかったのに!」
「ごめん」
ハリーはハーマイオニーの話が上の空だった。
「ハーマイオニー、図書館に行くんでしょう?早く行こう」
はハーマイオニーが自分にいつ気づくのか気になるところだったが、ロンの捨てねこのようなしせんに耐えきれず、ハーマイオニーに声をかけた。
「ああ、。荷物を置いてきたのね。じゃあ行きましょう、時間がもったいないわ」
ハーマイオニーはの存在に気づくとせかせかと動きはじめ、本のチェックリストを手にした。
ハグリッドがニコラス・フラメルの名前をもらし、四人が本をあさり始めたときからつけてきたものだった。
ハーマイオニーを先頭に、四人は図書館に向かった。
「ロン、どう?助かったでしょう?私に感謝した?」
はハーマイオニーに聞こえないように悪戯っぽくロンに話しかけた。
「ああ、助かったよ。このまま夕食までお説教かと思った。感謝してるさ」
ロンは心底安心した、というように大袈裟に溜め息をついてみせた。
そんな調子で四人が図書館につくと、まだ休み中なためか、人はまばらで、ニコラス・フラメルを探すには好都合だった。
いちいち他人に何を探しているのかと聞かれて、作業の手を止めるなんてたまったものではない。
「、見つかった?」
ハリーはずっと一ヶ所で視線が止まっているを不思議に思って小声で話しかけた。
「ううん、ただ・・・・・――やっぱりなんでもないわ、ごめんね」
「何だ、言いなよ。気になるじゃないか」
ハリーは興味津々で、身をのりだしたが、はあまり乗り気ではない。
「聞いてがっかりしない?」
「しない」
「聞いてバカにしない?」
「しない、しない」
「聞いて嫌いにならない?」
「なるわけないじゃないか!」
のあまりの慎重ぶりに、ハリーは少し大きな声になった。
そのためか、は意を決めて口を開いた。
「ママは私たちが危険な真似をしているから心配で少し怒ってたの。だから、今回またニコラス・フラメルみたいな私たちが関わっちゃいけない問題に関わっているって知ったらどうするんだろうな、って思って」
は少し心配そうにハリーを見た。
「父さんたちも怒ってた?」
しかし、ハリーはが求めていた返事でも、恐ろしがっていた返事でもない返事をした。
「パパ?パパもジェームズも心配はしてなかったと思う。でももしかしたら陰で心配はして――」
「そうじゃなくて、何か言ってた?」
ハリーはの言葉を遮った。
「あ、えっと、"もう少し暴れてくると思ってた"とかなんとか・・・・・」
が自信なさそうに言ったのにも関わらず、ハリーはを安心させるように言った。
「なら大丈夫だ。父さんたちは見方だよ、きっと」
ハリーが上手いように意味をとったことを指摘しようとしただが、それをする前に別のことに気をとられてしまった。
「やあ、」
「あら、マルフォイ」
さっきとはうってかわって、は冷酷な態度に急変した。
「向こうに行けよ、マルフォイ。ここは僕たちが座ってるんだ」
ハリーは不愉快そうにマルフォイを見た。
「ポッター、悪いけど僕は君に指図される覚えはない」
マルフォイも不愉快そうにハリーを見た。
「二人ともけんかだったら向こうに行ってやってね」
はもう止められないと感じたのか、やれやれとばかりに二人を見た。
「僕は君に用があるんだ、」
他人事のように話に入らないにしびれを切らしたのか、マルフォイは少し荒々しい口調で言った。
「私はあなたに用なんかない。話したくもないわ。言ったでしょう?私、執念深いたちなのよ」
あざ笑うようにマルフォイを見るとは席を立った。
「ハリー、めぼしい本をまた持ってくるね」
「待てよ!」
しかし、そうはさせないとばかりに、マルフォイはの腕を掴んだ。
「離せよ、マルフォイ」
が驚きと共にマルフォイを見ると、ハリーが口を挟んだ。
「お前には関係ないだろう?ポッター。それともの保護者とでも言いたいのか?」
「お前こそ、の何だよ。友達でもないじゃないか」
二人は立ち上がって睨み合った。
はマルフォイに腕を掴まれたまま、身動きが取れない。
すると、そのとき助っ人とも言える人が乱入してきた。
「あんたたち、けんかなら外でやりなさい!」
マダム・ピンスだった。
今や、図書館の中にいるほとんどの人が三人を見ていた。
はその中に心配そうな、腹立たしそうなハーマイオニーの姿を見つけた。
三人はそのままマダム・ピンスに図書館から追い出されてしまった。
「早く向こうに行けよ。もう僕たちは寮に戻るんだから」
ハリーはお前の所為だ、とばかりにマルフォイを睨んだ。
すると、マルフォイは何か言いたそうな顔をしたが、そのままクルリと二人に背中を向けて行ってしまった。
「ハリー?」
「何?」
「私、ハリーが保護者でも嬉しいからね?」
ちょっと場違いなの言葉に、ハリーは笑ってしまった。
ちょこっとハリーに気がありそうな雰囲気ですが・・・・・