「メリークリスマス、」
「メリークリスマス、ママ」
クリスマスの朝、は七時半にを起こしにきた。
「さあ、早く下においでなさい。朝食を早く食べてもらえないかしら、プレゼントを開ける前に」
はそう言い残すと下に降りて行った。
は急いで寝巻きから着替え、プレゼントの山を跨ぎ、下に降りて行った。
「メリークリスマス!」
の声はリビング中に響いた。
「メリークリスマス」
ジェームズもシリウスもリリーも口々にそう言った。
「いくら休みだからって寝過ぎだ、」
シリウスがたしなめた。
は笑って誤魔化した。
何十分か後、朝食も食べ終わり、各自、自由な時間になった。
もちろんは真っ直ぐに部屋に向かった。
部屋に入り、ドアを閉め、プレゼントの山を一眺めした――さて、開けるか。
はそう言って気合いを入れた。
まずは小さいものからだ。
可愛くラッピングされていた小箱には百味ビーンズが入っていた。
送り主はハリーとロンだ。
は、二人が今何をしているのだろうか、と思いを巡らした。
そんな調子でドンドン贈り物を開けていくと、心辺りのない包みが見付かった。
ただの手紙だけだったが、には十分嬉し過ぎた。
メリークリスマス、。
元気にしているかい?
君は僕と同じく帰宅組だと聞いたよ。
一年目は意外と心も身体も疲れているから、ゆっくり休養した方がいいと思う。
それじゃあ、ホグワーツでまた。
セドリック・ディゴリー
手紙を何度も読み直していると、いきなり部屋のドアが開いた。
「、プレゼントは開け終わった?」
は反射的に手紙を背中に隠し、ドアを開けたジェームズを見た。
「そんな怖い顔しないで。の恋愛の邪魔はしないよ」
ジェームズは凄んでいるを軽くかわした。
は半信半疑だったが、どんなにあがいてもジェームズには敵わない、と凄むのを止めた――その時、ジェームズの言葉が頭でリピートされた。
「す、好きな人なんていないもん」
の顔は今や真っ赤だった。
そんなの百面相をジェームズは楽しんでいた。
「で、ジェームズは何しにきたの?」
はジェームズにからかわれていることを理解し、どうにか心を落ち着けると言った。
「が今から仕事に行くことを知らせよう、と思って」
それを聞くとは部屋を飛び出し、階段の手すりから身をのりだして下を見た。
シリウスととリリーがいた。
「ママー、お仕事いってらっしゃい!いつ帰ってくるの?」
シリウスたちは上から聞こえてくるの声に始めは驚いた。
しかし、その後、がに説教を始めたことの方が驚いていた。
「手すりから身をのりだしちゃ危ないって何度言えばわかるの!」
の説教を終え、が仕事に行くと、シリウスがに言った。
「少しは反省したか?」
「全くしてない」
はまた、手すりから身をのりだし、悪戯っぽく言った。
シリウスもと違って怒る様子などなく、と一緒になって笑っていた。
リリーものやんちゃな行為にはもう成れているのか、溜め息をつくと、リビングに向かいながら言った。
「、ジェームズを呼んできて。お茶にしましょう」
は素直に返事をすると部屋に戻った。
部屋ではジェームズがさっきの姿勢のまま立っていた。
しかし、ジェームズはの手紙を読み終えていた――もちろん、ジェームズはそのことをに言うことなどしなかった。
はジェームズが読んだとも知らず、セドリックの手紙をズボンのポケットに入れた。
「リリーがお茶にしようって。早く」
ジェームズはに急かされながら下に降りて行った。
「、プレゼントは開け終わったの?」
リリーが机の向かい側から聞いた。
「まだよ。でもあと三個。多分ハーマイオニーからとフレッドとジョージからと、パパたちからのだと思うな」
「じぁあ今まで開けた中で一番嬉しかったプレゼントは?」
ジェームズは意地悪い笑みを浮かべ、に聞いた。
の頬は真っ赤だ。
「へぇ」
その意味がわかったのか、シリウスとリリーは意外そうな顔をしたが、すぐにジェームズと同じく意地悪い笑みを浮かべた。
「そっ、そんなのわかんない」
ジェームズとシリウスの視線に耐えられず、は下を向いた。
すると、リリーが助け舟を出すようにのプレゼントの話から会話をそらしてくれた。
「そういえば、授業はちゃんとついていけてるの?」
「なら大丈夫だよ、女の子だし、シリウスみたいに外に出歩く度に呪いをかけるような子じゃないもんね」
ジェームズはシリウスを見てクスクス笑った。
すると、シリウスも反撃に出た。
「は俺の娘だし、ジェームズみたいに辺り構わず杖を振り回すやつじゃないからな」
ニヤリと口許を緩め、シリウスはジェームズを見た。
その間でリリーは呆れていた。
「あなたたち二人なんか、比べる価値もないほどのバカよ」
ズバッと言ったリリーにジェームズもシリウスもなにも言い返す言葉がなかった。
「リリー、夕食はシチューがいいわ」
やっと静かになった自分の父親と昔の同輩をしり目に、はリリーに夕食の献立をねだった。
「わかったわ。じゃあ買い物に行きましょうか。ジェームズ、シリウス、荷物持ってね」
ジェームズとシリウスには拒否権などなさそうだ。
無事に食事が食べられたのはそれから2時間後のことだった。
は久しぶりの買い物に喜んでいたが、荷物を持たされる二人はクタクタだった。
ジェームズが音を上げるまで買い物は続いたのだ。
また、はニコラス・フラメルのことを忘れたわけではなかった。
ちゃんと調べていたが、よりも賢い、しっかりした大人が四人もいるため――それぞれの闇祓いの仕事で家にいないこともあったが――詳しく調べるのは不可能だった。
そんなこんなでのクリスマス休暇は幕を閉じた。
リリーさんのカカア天下。笑