ハリーが暴れる箒にしがみつき、見事に勝利を決めたクィディッチの試合が終わり、もうすぐクリスマス。
12月の半ごろ、とハーマイオニーはホグワーツ発の汽車の中にいた。
長い汽車の旅の中、はこれまでのことを思い出していた――スネイプが足を三頭犬によって怪我をしたこと、またハリーを箒から叩き落とそうとしたこと、そして、ニコラス・フラメルとは誰なのか。
「ハーマイオニー、本当にママたちに聞いたら駄目?」
は窓の外から視線を外し、本を読んでいたハーマイオニーに話しかけた。
「駄目」
本から顔を上げずにハーマイオニーが言った。
「私たちがニコラス・フラメルを探っていることがスネイプに伝わったら大変だわ。例え、あなたのお父さんとスネイプの仲が悪くともね」
は納得したような、不満そうな声を上げた。
「、大丈夫よ。ハリーとロンだって探しているんだし」
ハーマイオニーは不服そうなに諭すように言った。
「それはわかっているけどさ」
は窓の外に視線を戻した。
汽車はどんどん進んで行った。
そして、夕方、駅に着いた。
はキョロキョロと周りを見回したが、シリウスとの姿は見当たらなかった。
「、私のお父さんとお母さんよ。こちらは・ブラック。私の友達」
は優しそうな夫妻と握手を交した。
「こんにちは、。君の話はハーマイオニーから聞いているよ」
は照れ臭そうに笑った。
「ハーマイオニー、早く行きなよ。私の方は大丈夫だしさ」
少し恥ずかしさを感じ、はハーマイオニーを急かした。
そして、ハーマイオニーはその言葉に甘え、楽しそうに人混みに消えた。
「」
そのとき、ホームにシリウスとジェームズが現れた。
「元気にしてたかい?ホグワーツは楽しいだろう?」
ジェームズはを抱き締めた。
「うん。楽しいよ」
は久しぶりにシリウスやジェームズの顔を見て嬉しくなった。
「確かに波乱万丈な学校生活らしいしな」
シリウスが悪戯っぽく笑った。
「トロールを倒したのは良いが、マダム・ポンフリーの荒療治に泣くとはな」
クックッと喉を鳴らし、シリウスはを抱き締めた。
「おかえり、」
「ただいま、パパ」
ジェームズもこのときばかりは大人しく、邪魔に入らなかった。
「さあ、ダイアゴン横丁に行こう。そこから家に行くから」
久々にと手が繋げて、ジェームズはとても嬉しそうだった。
ダイアゴン横丁の漏れ鍋から、たちは家の暖炉に出た。
が灰だらけででると、机に向かっていた女性がの元に来た――リリーだった。
「ただいま、リリー」
「おかえり、」
リリーは杖を取りだし、の服などに付いた灰を落とした。
すると、の後ろから、ジェームズが現れて、リリーに抱きつこうとした。
「ただいま、リリー」
リリーはきれいにそれを避けて、一言、冷たく言った。
「一生帰って来なくていいわ」
また、ちょうどそのとき、階段から、暖炉からとシリウスが現れた。
「おかえりなさい、シリウス、ジェームズ。それに、。ホグワーツは楽しかったでしょうね」
がにっこりと笑った。
その笑いには僅かだが、いやみが含まれていたように、は感じた。
は二言、三言、リリーと話すと二人で階段を上がって行った。
「ママは怒ってるの?」
せっかく帰って来たのにたいして喜びもしないを、は悲しくなりながら聞いた。
「そんなことないさ。ただ、は――まあ、リリーもそうだな――君たちが危ない真似、つまり規則を破って怪我をしそうなんで怒ってるのさ。気にするな。飛行訓練とトロールの件だけで済んだんだ。私たちはもっと君たちが暴れると思っていたからな」
シリウスはたいして気にする様子もなく、さらりと言った。
多分、手紙がついてからずっとこうなのだろう、とは感じた。
「さあ、もうすぐ二人は食事の準備をするころだ。二人には悪いけど一足先に、ホグワーツはどうだったか聞きたいな」
ジェームズの態度は明らかに"聞きたいな"ではなく"聞かせろ"という感じだった。
「ジェームズはハリーが帰って来なくて寂しくないの?」
はホグワーツについて話す前に、自分の素朴な疑問を口にした。
「寂しくないと言ったら嘘になるけど、気持ちはとっても分かるんだ。僕たちも冬休みは帰りたくなかったからね。シリウスと離れたくなくて」
「お前が離れたくなかったのはリリーからだろ」
ジェームズの言葉にシリウスが突っ込んだ。
ジェームズはシリウスに向かって、少し、悪戯っぽく笑った。
「パパもジェームズと離れたくなかった?」
シリウスはのその質問に曖昧に笑って誤魔化した。
もちろん、ジェームズはそれをゆるさなかった。
「シリウス、酷いよ!僕と離れたかったのか!?」
もシリウスも、あまりのジェームズのショックの受けように笑いを堪えきれなかった。
「ほら、そこの三人とも!そんなところで笑ってないで夕食の準備を手伝いなさい!」
リリーの声はたちの笑いを無くすには十分で、三人とも大人しく夕食の支度を手伝いに台所に向かった。
数分後、夕食の支度が整った。
「、学校は随分楽しかったようね?危険な真似ばかりして。あなたに箒で飛ぶことを教えてなかったらどんなことになっていたやら」
がそう言う横で、リリーはコクコクと頷いていた。
「でもママ!ああでもしなきゃネビルが死んでいたかも――」
「わかってる」
の抗議の声を片手で制止た。
ジェームズもシリウスもリリーもただ見ているだけだった。
「もちろん、あなたをその件で叱るつもりは全くなかったわ。だけど、心配なのよ。ただでさえ、ルシウス・マルフォイの息子が同学年なのに、あなたからわざわざ危険に飛び込むなんて」
の声は落ち着いていての頭に響いた。
「人助けが悪いとは言わないけど、くれぐれも注意して――まあ、こう言ってもあなたの父親がこんな人だったら無意味だろうけど」
がそう言ってシリウスを見ると、シリウスはに向かってウィンクをした。
は父親が味方なのだと痛切に感じた。
帰ってきた途端、ちょっとお説教モードです・・・(-_-;)