毎日たっぷり宿題があり、週一回は必ず返ってくる親からの手紙に返事を書いたりしながらするうちに、二ヶ月経っていた。
ハロウィーンの朝、パンプキンパイを焼くおいしそうな匂いが廊下に漂ってきて、みんな目を覚ました。
もっと嬉しいことに、「呪文学」の授業でフリットウィック先生が、そろそろ物をとばす練習をしましょうと言った。
先生がネビルのヒキガエルをブンブン飛び回らせるのを見てからというもの、みんなやってみたくてたまらなかった。
先生は生徒たちに二人組みを作るように言った。
「ネビルがこっちを見てるの」
は困ったようにハリーとロンに耳打ちした。
「じゃあ君はハリーと組んだらいい。僕はシェーマスと組むから」
ロンはそう言ってシェーマスと組もうとしたが、彼はもう別の人と組んでいた。
余っているのは既にハーマイオニーだけになかっていた。
二人ともこれにはカンカンだった。
「さあ、今まで練習してきたしなやかな手首の動かし方を思い出して」
いつものように積み重ねた本の上に立って、、フリットウィック先生はキーキー声で言った。
「ビューン、ヒョイ、ですよ。いいですか、ビューン、ヒョイ。呪文を正確に、これもまた大切ですよ。覚えていますね、あの魔法使いバルッフィオは『f』ではなく『s』の発音をしたため、気が付いたら、自分が床に寝転んでバッファローが自分の胸に乗っかっていましたね」
先生はそう言って、一人一人に羽を配った。
「からやってよ」
ハリーはにねだった。
はコクンと頷いて、杖を握った。
「ウィンガーディアム レウ゛ィオーサ!」
するとの羽は2、3メートルくらいを漂った。
「オーッ!良くできました!グリフィンドールに二点あげましょう」
フリットウィック先生はに笑いかけた。
「、君って本当に凄いね。変身術も魔法薬学も・・・・・信じられないよ」
ハリーは心底驚いたようで、目を丸くしていた。
そして、数分後、の成功の興奮から醒めた生徒たちはまた自分の羽を飛ばす練習を始めた。
「うーん、飛ばないね」
ハリーとはびくともしない羽に頭を抱えた。
しかし、そのとなりでロンとハーマイオニーのペアも大変そうだった。
「ウィンガディアム レウ゛ィオーサ!」
長い腕を風車のように振り回し、ロンが叫んでいた。
ハーマイオニーのとんがった声が聞こえる。
「言い方が間違っているわ。ウィン・ガー・ディアム レウ゛ィ・オー・サ。『ガー』と長くきれいに言わなくちゃ」
「そんなによくご存知なら、君がやってみろよ」
ロンが怒鳴った。
ハーマイオニーはガウンの袖をまくりあげて杖をビューンと振り、呪文を唱えた。
「ウィンガーディアム レウィオーサ!」
すると、羽は机を離れ、頭上一、二メートルぐらいの所に浮いたではないか。
「素晴らしい!グリフィンドールにもう二点あげましょう!」
先生が拍手を送った。
クラスが終わった時、ロンは最悪の機嫌だった。
「だから、誰だってあいつには我慢出来ないっていうんだ。まったく悪夢みたいなヤツさ」
廊下の人混みを押し分けながら、ロンが二人に言った。
そのとき、ハリーに誰かがぶつかり、急いで追い越して行った。
「ロン、彼女、傷付いたみたいよ。泣いていたわ」
はロンに謝るようにそっと促し、またきっぱりと言い放った。
「それがどうした?」
ロンも少し気にしたようだったが、許す気はさらさらないようだった。
「誰も友達がいないってことはとっくに気が付いているだろうさ」
「私は彼女の友達だわ!」
はロンに怒った。
「あー、つまり君以外はいないだろう?」
「ロン!」
とうとうはロンに激怒し、またそれを怒らないハリーに対しても怒った。
しかし、ロンは肩をすくめ、ハリーはあまり本気にしなかった。
次のクラスでは、はハリーたちと離れ、パーバティたちと一緒に座った。
ハーマイオニーの姿はなかった。
夕食前、は一人でハーマイオニーを探しに行った。
案の定、彼女は女子トイレの個室で泣いていた。
「ハーマイオニー、ハリーが、ロンが何と言おうと私はあなたの友達よ」
はハーマイオニーがこもっているトイレの前に座り込み、何十回とその言葉を言った。
「一人にして、」
そのたびにハーマイオニーはそう言った。
「だからいやだってば!ハーマイオニーがいなきゃハロウィーンだって楽しくないし、ご馳走だって美味しくない。絶対にここから動かないからね」
そう言うと、は杖を取り出した。
「あと十秒で出てきてくれなきゃドアを壊すから」
はニヤリと笑い、杖を構えた。
「十、九、八、七――」
始め、ハーマイオニーはドアを開ける気などさらさらなかった。
「――六、五、四――」
しかし、が本気だと思い、慌てた。
「――三、二、一、ハーマイオニー。壊す――」
そのとき、ドアが勢いよく開き、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも、怒っているハーマイオニーが出てきた。
「!あなた、ドアを壊したら怒られるわ!」
「それでハーマイオニーの顔が見れるんだったらそれでいいよ」
そういうと、はハーマイオニーに抱きついた。
「早く、食べに行こうよ、ハーマイオニー」
はハーマイオニーがまたガミガミ言わせないように、素早く話をそらした。
「嫌だわ。彼らがいるもの。また、私を傷付けるのよ」
ハーマイオニーの目には涙が浮かんだ。
「大丈夫よ、ハーマイオニー。私はハーマイオニーの友達よ。彼らなんて放っておきましょうよ」
はそう言ってハーマイオニーを慰めた。
「、ありがとう」
ハーマイオニーはに抱きついた。
まさか、ハーマイオニーに抱きつかれるとは思っていなかったは、ビックリしながらも、その顔は笑っていた。
「ハーマイオニー、早く行かないとデザートもなくなっちゃうわ。私、お腹ペコペコなの・・・」
「そうね、行きましょうか」
そう言って二人がトイレを出ようとした瞬間、ただならぬ匂いが漂った。
「何の匂い?」
「さ、さあ・・・・・?」
とハーマイオニーは小首を傾げた。
いよいよトロール君登場です。笑