次の日、ハリーとロンとが疲れた様子で、でも上機嫌で、まだホグワーツにいるのを見て、マルフォイは自分の目を疑った。
朝になってみるとあの三つ頭の犬に出会ったことが素晴らしい冒険に思えたし、次の冒険が待ち遠しい気持ちになっていた。
とりあえず、ハリーとはロンに例のこと、それがホグワーツに移されたのではないかということを話した。
あんなに厳重な警備が必要な物っていったいなんだろうと、二人はあれこれ話した。
「ものすごく大切か、ものすごく危険な物だな」
ロンが言った。
「その両方かも」
ハリーが言った。
三頭犬と仕掛け扉の下に何が隠されているのか、ネビルとハーマイオニーはまったく興味を示さなかった。
また、でさえも、興味を持ったがあまり首を突っ込むのは良くないと思っていた。
三人がいつものように朝食を食べていると、ふくろうが群れをなして大広間に飛んできた。
六羽の大コノハズクが食わえていた細長い堤がすぐにみんなの気を引いた。
ハリーも興味津々で、あの大きな包みはなんだろうと見ていた。
驚いたことに、コノハズクはハリーの真ん前に舞い降りて、その大きな包みを落とした。
六羽のふくろうがまだ飛び去るか去らないうちに、もう一羽が包みの上に手紙を落とした。
ハリーは急いで手紙を開けた。
親愛なる息子、ハリー
話はマクゴナガル先生から聞きました。
ジェームズもリリーも、もちろんシリウスもも喜んでいます。
新しい箒が必要なので、あなたが欲しがっていたニンバス2000を送ります。
少し早めのクリスマスプレゼントですよ。
また、に伝えておいてください、少し女の子らしくするように、と。
あなたの活躍を期待しています。
ジェームズ、リリー
に手紙を渡しながら、ハリーの顔には満面の笑顔が浮かんだ。
「ハリー、すごいわ!」
は手紙から顔を上げ、ハリーに向かって笑顔を見せた。
「でも、私に女の子らしくするように、なんて言わないよね?」
ハリーとロンが笑った。
そして、三人は急いで朝食を食べると駆け足でクィディッチ競技場へと向かった。
授業が始まる前に、乗ってみるためだ。
しかし、玄関ホールの途中で、クラッブとゴイルが寮に上がる階段の前に立ち塞がっているのに気づいた。
マルフォイがハリーの包みをひったくって、中身を確かめるように触った。
「箒だ」
マルフォイは妬ましさと苦々しさの入り混じった顔付きで、ハリーに包みを投げ返した。
「今度こそおしまいだな、ポッター。一年生は箒を持っちゃいけないんだ」
ロンは我慢しきれずに言い返した。
「ただの箒なんかじゃないぞ。なんてったって、ニンバス2000だぜ。君、家に何持ってるって言った?コメット260かい?」
は堪えきれずに、クスクスと笑い始めた。
「コメットって見掛けは派手だけどニンバスとは格が違うよね」
「君に何がわかる、ウィーズリー。柄の半分も買えないくせに。君と兄貴たちとで小枝を一本ずつ貯めなきゃならないくせに」
マルフォイがかみついてきた。ロンが応戦しようとしたときに、フリットウィック先生がマルフォイの肘のあたりに現れた。
「君たち、言い争いじゃないだろうね?」
先生がキーキー声で言った。
「先生、ポッターのところに箒が送られて来たんですよ」
マルフォイが早速言いつけた。
「いやー、いやー、そうらしいね」
先生はハリーに笑いかけた。
「マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。ところでポッター、箒は何型かね?」
「ニンバス2000です」
マルフォイのひきつった顔を見て、笑いを必死で堪えながらハリーが答えた。
しかし、は既にハリーの隣でクスクス笑っていた。
「実は、マルフォイのおかげで買っていただきました」
マルフォイは怒りと当惑をむき出しにした顔をした。
二人は笑いを堪えながら、はクスクス笑いをしながら階段を上がった。
もう授業前に乗る時間はなかった。
大理石の階段の上まできたとき、三人は思う存分笑った。
「だって本当だもの。もしマルフォイがネビルの『思いだし玉』をかすめていなかったら、僕はチームに入れなかったし・・・・・」
「それじゃ、校則を破ってご褒美をもらったと思っているのね」
背後から怒った声がした。
ハーマイオニーだった。
ハリーが持っている包みを、けしからんと言わんばかりににらみつけ、階段を一段一段踏みしめて登ってくる。
「あれっ、僕たちとは口をきかないんじゃなかったの?」
ハリーが言った。
「そうだよ。いまさら変えないでよ。僕たちにとっちゃありがたいんだから」
ロンが言った。
ハーマイオニーは、ツンとそっぽをむいて行ってしまった。
「今の言い方は酷いと思うわ」
がハーマイオニーの背中を見つめながら呟いた。
「どうしてだい?本当のことを言うのがいけないと言うのか?」
ロンがくってかかった。
「あなたたちだって、自分ではわかっているんでしょう?ハーマイオニーは正論を言っているだけよ。ただ、たまたま私たちは罰則を受けないで済んだけれど」
は今度ははっきりと、二人を見て言った。
しかし、そこで怒ったも、もちろんハリーがもらって箒は気になるわけで、ハリーもも一日中授業に集中できなかった。
夕方、三人は出来る限り急いで夕食を食べ、寮にかけ戻った。
ハリーとロンは他の同室の男の子には秘密で、を寝室に招き入れた。
ベッドカバーの上に転がり出た箒を見て、ロンは「ワオー」と溜め息をついた。
箒はスラリとして艶があり、マホガニーの柄の先に、長くまっすぐな小枝がすっきりと束ねられ、柄の先端近くに金文字でニンバス2000と書かれていた。
「これがクリスマスプレゼントってすごいわね。私のクリスマスプレゼントが惨めに見えるわ」
が苦笑して、しかし目を輝かせながら箒を見た。
三人はそうやってしばらく箒を見ていたが、ハリーがクィディッチの練習があると言うので、二人は未練がましそうに箒から離れ、ハリーを見送った。
相変わらずハーマイオニーには冷たい二人。笑