「まさか」
夕食時だった。
はハリーからグラウンドを離れてから何があったのか、詳しく聞いた。
「シーカーなの?」
「だけど一年生は絶対ダメだと・・・なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな」
もロンも驚きを隠せなかった。
「・・・・・百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」
ハリーはパイを掻き込むように食べていた。
「来週から練習が始まるんだ。でも誰にも言うなよ。ウッドは秘密にしておきたいんだって」
「ジェームズやパパが聞いたらなんて言うかしら・・・・・素晴らしいわ」
はうっとりとハリーを見た。
ハリーは少し恥ずかしくなったのか、頬を薄いピンク色に染めた。
その時、双子のウィーズリーがホールに入ってきて、ハリーを見付けると足早にやって来た。
「すごいな」
ジョージが低い声で言った。
「ウッドから聞いたよ。僕たちも選手だ――ビーターだ」
「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ」
フレッドが言った。
「チャーリーがいなくなってから一度も取ってないんだよ。だけど今年は抜群のチームになりそうだ。ハリー、君はよっぽどすごいんだね。ウッドときたら小踊りしてたぜ」
「じゃあな、僕たち行かなくちゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたっていうんだ」
「それって僕たちが最初の週に見付けちまったやつだと思うけどね。きっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」
フレッドとジョージが消えるやいなや、会いたくもない顔が現れた。
クラッブとゴイルを従えたマルフォイだ。
「ポッター、最後の食事かい?愛しの両親のところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
ハリーが冷ややかに言った。
二人ともどう見たって小さくはないが、上座のテーブルには先生がズラリと座っているので、二人とも握り拳をボキボキ鳴らし、にらみつけることしかできなかった。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖たけだ――相手には触れない。どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて怖くて出来ないのか?」
「君こそどうなんだ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」
マルフォイもハリーもロンさえも睨み合った。
「クラッブだ。真夜中でいいね?トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」
マルフォイがいなくなると、ハリーとロンが顔を見合わせた。
「ねぇ、本当に戦える程の実力があると思ってる?もしかしたらマルフォイが罠に引っかけようとしてるのかもしれないわ。出歩くのは止めた方がいいと思うけど・・・・・」
がそう言うと、自信たっぷりにロンが言った。
「もしあいつが今夜来なかったら負け犬って今度から呼んでやるさ」
「ちょっと失礼」
三人が見上げると、今度はハーマイオニー・グレンジャーだった。
「まったく、ここじゃ落ち着いて食べることも出来ないんですかね?」
ロンが言った。
「聞くつもりはなかったんだけど、あなたとマルフォイの話が聞こえちゃったの・・・・・」
「聞くつもりがあったんじゃないの」
ロンが呟いた。
「・・・・・夜、校内をウロウロするのは絶対ダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。まったくなんて自分勝手なの」
「まったく大きなお世話だよ」
ハリーが言い返した。
「バイバイ」
ロンがとどめを刺した。
そして、二人は大広間を出ていった。
「ハーマイオニー、じゃあ私も行くね。手紙を書かなきゃいけないから」
は残念そうにそう言うと、席を立った。
寮に戻るため、が階段を登っていると、上から格好良さ気な生徒が降りてきた。
はどこの寮かと気になり、階段の途中で止まった。
すると、その生徒は不思議そうにに話しかけた。
「どうしたの?」
「え・・・・・」
は話しかけられるとは思っていなかったためか、その生徒が格好良いからか、頬を少し染めた。
「あの、別に・・・・・ごめんなさい!」
はパニックになってしまい、急いでその場を去ろうとした。
「待って。君、・ブラックだよね?僕、セドリック・ディゴリー。ハッフルパフの生徒さ。暇なら少し話さない?」
の頭の中は真っ白だったか、その中でセドリックの名前がエコーした。
「授業には大分慣れた?」
場所を中庭に移し、たちは座り込んだ。
「大分慣れました」
はカチコチに固まり、いつものように上手く話すことが出来ない。
「そんな敬語だなんて、いいよ。それにセドリックでいい。」
セドリックはに笑いかけた。
「そういえば、昨日、変身術の授業中、僕の友人たちがなかなかネズミを変身させられなかったんだ。そうしたら、先生が『今の一年生の中にはマッチを数分で針に変えた子がいます!上級生のあなたたちがこんなことも出来ないとは情けないとは思いませんか?』って、言ったんだ」
セドリックは何が面白いのか、顔がにやけた。
「――そう、それで誰かがそんなことをしたのは誰だって聞いたんだ。そうしたら先生、最初は僕らには関係ない、でいう一点張りでさあ。でもとうとう折れて君の名前を漏らしたんだ。ねぇ、君、凄いよ。あのマクゴナガル先生だって驚いていただろう?」
は最初、セドリックの言っていることがわからなかった――セドリックが私のことを凄いって・・・・・。
「うん、驚いていたわ」
の言い方がおかしかったのか、セドリックはクスクス笑い始めた。
「学校のことで何かわからなかったら聞いていいよ。勉強でもね。出来る限り協力するよ」
彼はニッコリ笑った。
「さあ、ちょっと長居をしすぎちゃったかな。そろそろお互いに寮に戻らないとね」
はまだ話していたかったが、一人で減点される勇気などなく、セドリックに素直に従った。
「じゃあ、またね」
セドリックは最後までに親しみを持って接した。
はそれが何より嬉しかったし、また、別れ際にセドリックが自分の黒髪を誉めてくれたのも嬉しかった。
幸せな気分で寮に戻ると、相変わらず、寮の方は賑やかだった。
そんな中、ハリーとロンは談話室の片隅で今夜の計画を練っているようだった。
「ねぇ、私もついて行っていい?」
が二人に聞くと、二人は顔を見合わせた。
「なら大丈夫だよね」
「うん、いいよ。11時半に談話室に来て」
ハリーとロンは周りに聞こえないように出来る限り小さな声で言った。
はわかったと言う代わりに、右手の親指を立てた。
は仮眠をとろうと、ベッドに横になったが眠れなかった。
セドリックに見事に翻弄されてしまいました。汗