一週間経ち、大分なれた木曜日の朝、はやっと返ってきた親からの手紙を読んでいた。
親愛なる息子、ハリーと、娘、
貴方たちから手紙をもらって嬉しく思います。
どうやら楽しく学園生活を送っているよるですね。私たちはが数分で変身術を成功させたのには驚かされました。
また、スネイプ先生の方ですが、彼は紛れもなく私たちの同輩です。残念なことにジェームズとシリウスとは仲が悪いのです。だから、ハリーに向かって意地悪をしたのだと、ジェームズとシリウスは言っています。
が注意を受けなかった理由はをスネイプ先生が好きだった、という点からだとも彼らは言っています――きっとの姿ととを照らし合わせているのでしょう。
今、世の中はグリンゴッツ銀行に強盗が入るなど、物騒です。くれぐれも気を付けて。
ジェームズ、シリウス、リリー、
は読み終えるとハリーにその手紙を渡した。
「ありがとう」
ハリーはそう言って食事の手を止め、読み始めた。
そして、はみんなが食べ終って騒いでいる中、一人朝食を取り始めた。
グリフィンドールの机に座っている一年生は何故かそわそわしていた。
理由は単純明快だった。
今日がスリザリンとの合同飛行訓練の日だからだ。
は食事をし終わり、みんなの話の中に入ろうとすると、一羽のめんふくろうがネビルにおばあさんからの小さな包みを持ってきた。
ネビルはみんなに急かされながら、ウキウキとそれを開けて、白い煙のようなものが詰まっているように見える大きなビー玉ぐらいのガラス玉を取り出した。
「『思いだし玉』だ!ばあちゃんは僕が忘れっぽいことを知ってるから――ほら、こうやって握って、中が赤くなったら――あれれ・・・」
ネビルは少し考え込んだ。
「でも、僕、何を忘れてるのか、それも忘れちゃった」
それを聞いてグリフィンドールのその辺りの集団は笑った。
しかし、ハーマイオニーだけはけしからんとばかりに睨んだ。
そのとき、マルフォイとその護衛のようなクラッブとゴイルがスリザリンのテーブルからグリフィンドールの机を通り過ぎようとしながら、ネビルの手にあった「思いだし玉」を引っ付かんだ。
ハリーとロンがそれと同時に立ち上がった。
はそんな二人からただならぬ気配を感じた。
しかし、三人の間にいざこざが起きようとした瞬間、マクゴナガル先生が現れた。
「どうしたんですか?」
「先生、マルフォイが僕の『思いだし玉』をとったんです」
マルフォイはしかめっ面で、すばやく玉をテーブルにもどした。
「見てただけですよ」
そう言うと、マルフォイはクラッブとゴイルを従えてスルリと逃げた。
その日の午後、三時半、はハリーとロンと一緒に、初めての飛行訓練を受けるため、校庭へと向かった。
スリザリン寮生は既に集まっていて、地面には二十本の箒が並べられていた。
その時、校庭を横切り歩いてくるマダム・フーチの姿が見えた。
白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしている。
「なにをボヤボヤしてるんですか」
開口一番ガミガミだ。
「みんな箒のそばに立って。さあ早く」
はハリーとハーマイオニーの間に立った。
「右手を箒の上に突き出して」
マダム・フーチが掛け声をかけた。
「そして『上がれ』と言う」
みんなが上がれと叫んだ。
の箒はすぐさま飛び上がっての手の中に収まった。
同様にハリーも収まっていたが、ハーマイオニーのはコロコロと地面を転がっていた。
次にマダム・フーチは箒の端から滑り落ちないように箒にまたがる方法をやってみせた。
ハリーもも父親から教えてもらっていたので、マルフォイのように注意されることはなかった。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ――一、二の――」
ところが、ネビルは緊張するやら怖気付くやら、一人だけ地上に置いてきぼりを食いたくないのやらで、先生の唇が笛に触れる前に思いきり地面を蹴ってしまった。
地上では大笑いするスリザリン生と心配そうなグリフィンドール生とマダム・フーチが残された。
そんな中、は決心を固め、手近にあった箒にまたがり、地面を蹴った。
「ブラック!今すぐ戻ってきなさい!!」
しかし、それでもは無視した。
はネビルより速度を上げ、追い付こうとした。
しかし、その時、ネビルが声にならない悲鳴を上げ、箒から真っ逆さまに落ちてきた。
ほんの一瞬のタイミングではネビルを掴めず、彼女は箒の柄を下に向け、ネビルを追った。
「ネビル!!」
下にいる面々は心配そうに見守っていた。
そして、は地面からあと数十センチというところでネビルのローブを引っ付かみ、そのまま、ゆっくりと地面に下ろした。
「!」
が箒を持って地面に立つと、一斉にグリフィンドールの女子生が集まった。
「素晴らしかったわ」
「素敵よ、」
「怪我はない?」
はその一つ一つに丁寧に返事をした。
女子の歓迎が終ると、今度は男子生が言った。
特にハリーは心配そうで、ロンは素晴らしさに目を輝かせていた。
そのとき、マダム・フーチが全員に言った。
「どうやらこの子は気絶しているようなので、私は今から医務室に連れていきますが、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ」
マダム・フーチは全員の顔を一睨みした。
「また、・ブラック。貴方が無断で飛んだことは寮監とあなたのご両親に伝えておきます」
そしてクルリと背を向け、校舎の方へと急いだ。
ハリーはに耳打ちした。
「どうするんだい?シリウスももこれを聞いたら怒るんじゃ・・・・・」
「さあ・・・・・私には分からないわ。でも怒られたとしても吠えメールくらいで、学校にいる間は大丈夫だと思うわ」
は肩をすくめてみせ、ハリーに心配してくれてありがとう、と言った。
すると、その二人の雰囲気を敏感に感じとったのか、マルフォイが言った。
「ポッター、もうと熱い仲なのか?それともお前が自惚れているだけなのか?」
他のスリザリン寮生たちもはやしたてた。
「ひがむのはやめてよ、マルフォイ」
が静かに言った。
「あなた、周りに男子しかいないから寂しいんでしょう」
すると、グリフィンドール寮生がはやしたてた。
マルフォイの顔は怒りに満ちた。
「!君はブラック家の末裔だろう!」
「だからって貴方に束縛される義務なんてない!」
とマルフォイの間に見えない火花が散った。
「その通りだよ、」
ハリーはマルフォイと睨みあっているを落ち着けるため、肩を叩き、優しく言った。
「君の言う通りだよ。マルフォイなんか気にすることない」
「ドラコ、あいつらの言うことなんて気にすることないわ!」
マルフォイの方も同様にパンジーに慰められていたが、その効き目はまったくと言って良いほどなかった。
「まあいいさ。何れにしろ・・・」
マルフォイは不敵に笑った。
マルフォイは突っかかってくるのが大好きなようです。