The tease いじめ
翌日の朝、は新しい寮、グリフィンドールで目が覚めた。 昨晩はとても素晴らしかった。 ハリーもロンも、またハーマイオニーもがグリフィンドールで、上級生らは歓迎してくれ、食事も豪華だった。 しかし、そんな余韻に浸っている暇はなくなった。 母親たちが魔法を簡単に扱うので、ただ呪文を唱えれば良いと思っていたには、大打撃だった。
水曜の真夜中には天文学、週三回は不思議なきのこや植物の育て方、用途を学ぶ薬草学。 なんといっても一番退屈なのは魔法史で、唯一ゴーストが教える教科だった。 また、呪文学や闇の魔術の防衛術など、あったが、マクゴナガル先生の授業、変身術は違っていた。 マクゴナガル先生は逆らってはいけない先生だというハリーとの勘は当たっていた。
「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます」
それから先生は机を豚に変え、また元の姿に戻してみせた。 しかし、素人である生徒たちがいきなりそんなことが出来るはずがなく、さんざん複雑なノートを採った後、マッチ棒が配られ、それを針に変える練習が始まった。 驚くべきことに、は始めてから数分後に、完璧な針に変身させてみせた。 これにはマクゴナガル先生も驚いたようで、グリフィンドールに10点もくれた。
金曜日、たちは魔法薬学のクラスにいた。 ロンが言うにはスネイプはスリザリン贔屓の先生らしい。 そのことについては、ハリーもも身をもって体験した。
スネイプはまず出席を取った。 そして取り終るとつぶやくような話し方で、語り始めた。 生徒たちはそれと同時にシーンとなった。
「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力・・・・・諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である――ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
大演説の後はクラス中が一層シーンとなった。 スネイプが突然、ハリーの名を呼んだ。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
は隣にいるハリーがパニックになっているのを感じた。 また斜め前ではハーマイオニーの手が高々と上がっていた。
「わかりません」
ハリーが答えた。
「フン、有名なだけではどうにもならんらしい」
ハーマイオニーの手は無視された。
「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」
ハーマイオニーが思いっきり高く、椅子に座ったままで挙げられる限界まで高く手を伸ばした。 ハリーにはベゾアール石がいったいなんなのか見当がつかないようだ、とは思った。
「わかりません」
「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」
は理不尽だと思った。 スネイプはハーマイオニーの手をまだ無視していた。
「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」
この質問でハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。 そして、は耐えきれず、ハリーのローブを引っ張り、自分の羊皮紙を見せた。
「アスフォデルとニガヨモギを合わせると眠り薬になり、生ける屍の水薬と言われています。ベゾアール石は山羊の胃から取り出す石で、たいていの薬に対する解毒剤となります。モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物で、別名をアコナイトとも言われ、とりかぶとのことです」
ハリーはスネイプに突っ込ませる暇を与えずに、一気に読みあげた。 今までニヤニヤ笑っていたマルフォイたちや、手を挙げていたハーマイオニーでさえ、ハリーに注目した。
「諸君、何故今のを全部ノートに書き取らんのだ?」
いっせいに羽ペンと羊皮紙を取り出す音がした。 ハリーはヘナヘナと椅子に座り込んだ。
「ブラック、君がポッターに解答を教える権利はない。今後一切、我輩の前でポッターにノートを見せることを禁ずる。次、見せた暁には、処罰に値する」
スネイプがに冷たい目を向けた。
「私は答えなど教えていません!それに、そんなの酷すぎます!」
も見せたことはいけないかもしれないと、反省したが、禁ずるという言葉にそんな気持ちは吹っ飛んだ。
「蛙の子は蛙だな。口を慎みたまえ。――グリフィンドールはポッターの無礼な態度により二点減点」
その後も魔法薬学でグリフィンドールの状況は悪くなる一方だった。 どうやらお気に入りらしいマルフォイと、何故かを除いて全員が注意を受けた。
ボロボロになって寮に帰ると、ハリーのペット、ヘドウィグが手紙を持って待っていた。
「誰から?」
は興味津々で手紙を覗いた。 その様子は愛らしく、さっきまであの陰険なスネイプとやりあっていたとは到底思えなかった。
「ハグリッドからだ。もし暇なら遊びにおいでって書いてある。行くかい?」
ハリーは二人を見た。
「うん、僕は行くよ」
ロンは頷いたが、は首を横にふった。
「私、今日は疲れたからここにいるわ。ママたちに手紙も書いた方が良いと思うし。だから、ヘドウィグを貸して?」
ハリーとロンはとヘドウィグに見送られながらハグリッドの小屋に向かった。 は二人がいなくなると、寝室に行き、羊皮紙と羽ペンを出して手紙を書き始めた。

親愛なるパパ、ママ、ジェームズとリリー

元気ですか?
まだ一週間も経っていませんが、とても忙しいけど楽しいです。だけど、ハリーは授業に付いていくのが大変みたい。 組分けですが、パパたちと同じ寮になれました。ハリーも一緒です。また、汽車の中で知り合ったロン・ウィーズリーという子とハーマイオニー・グレンジャーという子も一緒です。

はそんな具合に手紙を書き始め、汽車でのドラコ・マルフォイの事、マクゴナガルの授業で数分で変身させた事、スネイプの陰険な態度の事など、羊皮紙につらつらと書き並べた。 やっとのことで書き上げ、ヘドウィグに持たせた。
「じゃあお願いね」
がヘドウィグを撫でると、ふくろうはお任せあれ、とばかりに甘噛みをして飛び立っていった。 ヘドウィグを見送り、談話室へ降りていくと、ハーマイオニーがいた。 ハーマイオニーも一人なのか、部屋の片隅で本を読んでいた。 いつまでもハリーと一緒になどいれないと思い、は思いきってハーマイオニーに声をかけた。
「一緒に夕食に行かない?」
が少しビクビクしていると感じ取ったのか、ハーマイオニーは優しく、母親のようにもちろん、と言った。 その瞬間、の顔がパァッと輝いた。 ホグワーツに来て、初めてはハリーと別々に食事をした。
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親離れならぬ、偽兄離れ?笑