The storm 嵐
「どの寮でもいいけど、あの子のいないとこがいいな」
杖をトランクに投げ入れながら、ロンが言った。
「へぼ呪文め。ジョージから習ったんだ。ダメ呪文だってあいつは知ってたのに違いない」
「君の兄さんたちってどこの寮なの?」
ハリーが聞いた。
「グリフィンドール」
ロンはまた落ち込んだようだった。
「ママもパパもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ」
「そこって、確か、例のあの人がいたとこよね」
が呟いた。
「あぁ」
ロンはそう言うと、ガックリと席に座り込んだ。 とハリーは顔を見合わせ、ロンが寮のことを考えないように話しかけた。
「それで、大きい兄さんたちは卒業してから何してるの?」
「チャーリーはルーマニアでドラゴンの研究。ビルはアフリカで何かグリンゴッツの仕事をしてる」
ロンが答えた。
「そういえば、グリンゴッツって、誰かが、特別警戒の金庫をあらそうとしてなかった?何にも盗られてないみたいだけど――捕まっていないんでしょう?」
はふと思いだし、チラリと口に出した。 するとコンパートメントの空気が恐怖に変わった。 ロンが気を取り直すようにして、言った。
「君たち、クィディッチはどこのファン?」
ハリーとロンは二人でクィディッチの話しにのめり込んでしまった。 仕方がないので、は窓の外をぼーと見ながら、移り行く景色を楽しんだ。 すると、突然、またコンパートメントのドアが空いた。 男の子が三人入っていた。 ハリーとは真ん中の男の子が誰だか一目でわかった。 マダム・マルキン洋装店にいた、青白い子だ。 ダイアゴン横丁の時よりずっと強い関心を示して二人を見ている。
「ほんとうかい?このコンパートメントにハリー・ポッターと・ブラックがいるって、汽車の中じゃその話で持ちきりなんだけど。それじゃあ、君たちなのか?」
「そうだよ」
ハリーが答えた。 はハリーの上着を掴み、青白い男の子に警戒していた。
「あぁ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ」
ハリーの視線との警戒に気付いた青白い子が無造作に言った。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンは、クスクス笑いを誤魔化すかのように軽く咳払いをした。 マルフォイがめざとくそれを見とがめた。
「僕の名前が変だとでも言うのかい?君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子供がいるってね」
それからハリーとに向かって言った。
「そのうち家柄のいい魔法使いとそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
男の子は二人に握手を求めたが、ハリーももそれに応じなかった。
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でも出来ると思うよ。どうもご親切さま」
ハリーが冷たく言った。 ドラコ・マルフォイは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。
「ポッター君。僕ならもう少し気を付けるよ。はそうは思わないだろう?」
からみつくような言い方だ。
だって僕と同じ意見だ。それに、馴れ馴れしく彼女の名前を呼ぶな」
ハリーは背中にの震えを感じた。
に自分の意見を押し付けない方がいい。彼女はブラック家の末裔だよ。寝首を噛まれないようにしないと・・・・・それにウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、彼女はそのうち裏切るだろうね」
ハリーもロンもそれを聞いて立ち上がった。
「もう一ぺん言ってみろ」
ロンが叫んだ。
「へえ、僕たちとやるつもりかい?」
マルフォイはせせら笑った。
「ここから出ていかないんならね。――も歓迎していないし」
ハリーはマルフォイを睨みつけながら、の泣きそうな、腹立たしいような顔を見て言った。 しかし、内心は自分たちよりも成長しているゴイルとクラッブを恐れていた。
はブラック家の末裔だ。ポッター家とは家柄が違う。下手に関わらない方が良いよ」
「残念ながらそんなことがあるわけがない。僕の父さんとの父さんは親友なんだ。君にの何がわかる?」
ハリーものことを言われ放題だったためか、タンカを切った。
「・・・・・フン。まぁいいさ」
マルフォイは返す言葉が見付からず、しかし敗けを認めるのもしゃくだったため、格好をつけ、コンパートメントから出ていった。
「ハリー、私――」
いなくなった後、はハリーに何かを言いた気だったが、口をつぐんでしまった。
「ごめん、
ハリーも何かを言いたそうにしていたが、言葉が見付からず、それだけで終わった。 そんな二人の間にある絆の強さに、ロンは驚いたと同時に、うらやましくもなった。
「あなたたち、寄ってたかってをいじめたの?」
いつの間にか戸口にはハーマイオニーが立っていた。
「違う。泣かせようとしたのは僕たちじゃない」
ロンは彼女を見ると、瞬く間に不機嫌になった。
「ふーん。まあ、信じるわ」
口ではそう言いながらも、あまり信用していないようだった。
「私、さっき前まで行って運転手に聞いてきたの。もうすぐでホグワーツに着くわ。早くローブに着替えて」
「着替えるから、悪いけどその間、を連れてってよ」
何故かこのコンパートメントに居座ろうとする雰囲気のハーマイオニーに出ていく口実を与えるためか、ハリーはに新着の制服を持たせ、コンパートメントから二人を追い出した。
「全く酷いと思わない?まるで、私たちを追い出そうとしているみたいだったわ」
ハーマイオニーが言った。
「さあ、、私の方のコンパートメントで着替えましょうよ。あなただけまだ私服だなんておかしいわ」
にとってハーマイオニーの相手は楽だった。 ただ、切れの良いところで相槌をうてばよかった。
「ハーマイオニー、ありがとう。私、戻らなきゃ。荷物も向こうだし・・・・・本当にありがとう。じゃあ組分けの時にね!」
は数分後、新調の制服に包まれ、自分たちのコンパートメントのドアを開けた。
「おかえり」
中ではまた一段と仲良くなったハリーとロンが彼女を出迎えた。
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早速、ドラコは偵察。ハリーも精一杯、抵抗しました。