あの悪夢から約10年、ジェームズとリリーとハリーはシリウスやの希望で、そのままずっとシリウスの家に住んだ。
しかし、を名付けたリーマスが家に現れることはなかった。
二人ももう11歳だが、まだ幼い感じが抜けないだった。
二人は自分が小さいころに行ったことを既に聞いていたが、それでプレッシャーなどを感じることはなかったし、周りの目を気にすることもなかった。
そんなある日、ハリーとの手元に一通の手紙がそれぞれ届いた。
「パパ、パパ、学校から呼び出しされちゃった!」
フクロウから受け取ると、は暖炉の前で寛いで座っていたシリウスの元に走り込んだ。
シリウスは呼び出しをされて何故嬉しがるのか理解不能だった。
それにその手紙に呼び出しされることはまず書かれていないのを知っていた。
「あー、喜んでいるところ、悪いが、その手紙は入学案内の手紙で呼び出しの手紙ではない」
シリウスは手紙をから受取り、ハリーの方にも届いただろう、と聞いた。
「うん。でもハリーはジェームズを探しに行っちゃたよ」
シリウスはそうか、と一言言うと、台所にいるとリリーを呼んだ。
二人は話が聞こえていたのか、シリウスから何も言わずに手紙を奪い取った。
「母は強しだよ」
が驚いているシリウスに言った。
するとシリウスの顔がひきつった。
「もとうとう入学ね。早いわね。ハリーのところには届いていないのかしら?」
リリーが姿の見えないハリーを探すようにキョロキョロした。
するとそのときジェームズがハリーと共にシリウスの隣に姿あらわしした。
「リリー、ハリーも入学だよ!」
ジェームズは大喜びだった。
「私は呼び出しだよ」
の一言を聞き、ジェームズの口があんぐり開いた。
「よ、呼び出し?」
「違う。こいつが入学と呼び出しを違えて楽しんでいるだけだ」
シリウスがジェームズを見上げた。
するとジェームズは安心したように言った。
「あぁ、そうか。驚かさないでくれよ、」
は反省する様子もなく、ケラケラと笑った。
「じゃあ、明日は買い物に行かなきゃね。ダイアゴン横丁が混んでしまう前に」
が二人に笑いかけた。
「そうすると誕生日プレゼントは豪華なものにしないとならないな」
シリウスは考え深げに言った。
「私、箒がいい!」
「だめよ」
の自己主張をが一喝した。
「どうして?」
ハリーも箒が欲しかったため、不満そうな声をあげた。
「一年生は箒を持てないことになっているのよ」
「でも、私、パパの箒で飛んだわ」
リリーにが抗議した。
「とにかくだめよ、」
はガンとして受け入れなかった。
するとシリウスがこっそり耳打ちした。
「もしおまえ達がクィディッチの選手になることが出来たら買ってやるよ」
しかし、運の悪いことにリリーに聞こえてしまった。
「シリウス!子供たちに変なことを教えないで!それに選手は2年生以上なのよ」
「ハリーなら出来るよ」
リリーをなだめるためか、逆上させるためか、がハリーを引き出した。
「ハリーは空飛ぶの、巧いよ」
がそう言うと、ハリーの顔が少し赤くなった。
「とにかくだめなものはダメ」
は取り付く島もなかった。
「じゃあペットは?」
今度はハリーが言った。
「それなら良いわよ」
リリーが答えた。
「出来ればどちらかが、フクロウを持っていてくれるといいんだけどな」
ジェームズが呟いた。
「どうして?」
「に変な男が寄り付かないように見張るんだよ、ハリー」
「ジェームズ!貴方の方が変な男よ」
リリーはジェームズにお怒り状態だ。
そして気をとりなおすようにが言った。
「とにかく、明日、自由に選びなさい。フクロウでも猫でもネズミでもヒキガエルでもいいわ」
次の日、ハリーとはリリーとに連れられてダイアゴン横丁に行った。
ジェームズとシリウスは気が乗らないとかで、来なかった。
まず四人はお金を下ろすため、銀行に向かった。
入り口には小鬼が立っていて、四人が進むと、お辞儀した。
そして小鬼に連れられ、まずはポッター家、次にブラック家の金庫に行った。
どちらともお金持ちで二人の母親はそれぞれ持てるだけ持った。
銀行から出るとリリーとは何やら相談し始めた。
子供だけで少し買い物をさせないと時間が足りないらしい。
リリーが二人の子供に言った。
「一番重要な杖と、必要な制服は自分で買っていらっしゃい。その間に教科書とか大鍋とか買ってくるから。買い物が終わったら漏れ鍋にいること。私たちも終わったらそこへ向かうわ。それで四人そろったらペットを見にいきましょう。それでいいかしら?あぁ、ハリー、の面倒を見てね。迷子にならないように」
「わかった、ママ」
ハリーは大きく頷くと母親から15ガリオン受け取った。
すると、もに向き直り、言った。
「いい、。くれぐれもハリーの側を離れないで、迷子にならないでね」
「自分の面倒くらい自分で見れるわ」
は膨れてみせると、からハリーと同じく15ガリオンもらった。
そして、子供たちはマダムマルキンの洋装店へ向かった。
その後ろ姿を母親たちはちょっと不安そうに見送っていた。
たちが店に入るとマダム・マルキンが話しかけてきた。
「今、もう一人お若い方が丈を合わせているところよ。だから、どちらか一人、先に寸法を図ることが出来ますよ」
「ハリー、先にやって」
はマダム・マルキンにハリーの返事を聞かずに、こちらが先で、と言った。
別段、ハリーも嫌な顔をしなかった。
ハリーが踏み台の上に立つと、マダム・マルキンはのために、ハリーの真ん前に椅子を出してくれた。
がそこにすわると、ハリーの隣で丈合わせをしていた、青白い、あごのとがった男の子が話しかけてきた。
「やぁ、君もホグワーツかい?」
「えぇ、彼も一緒よ」
はハリーを指差した。
「へぇ」
男の子は体して気にしていないようだ。
「君、自分はどの寮に入るか予想ついている?」
「いいえ」
も体してその男の子に興味がないので、そっけなく答えた。
「僕はきっとスリザリンだ。家族がそうだし」
「あら、家族は関係ないと思うわ」
がちょっと顔をしかめると、その男の子は慌てて話をそらした。
「気に触ったのなら謝るよ。君の両親も僕らと同族なんだろう?そっちの男の子も」
「二人とも魔法使いと魔女よ。そういう意味で聞いているのなら」
はウンザリしたようにハリーを見た。
しかし、ハリーにはなす統べもなく、を見つめ返すばかりだった。
「他の連中は入学させるべきじゃないと思うよ。そう思わないか?連中は僕らと同じじゃないんだ。僕らのやり方がわかるような育ち方をしていないんだ。手紙をもらうまではホグワーツのことだって聞いたこともなかった、なんてやつもいるんだ。考えられないようなことだよ。入学は昔からの魔法使い名門家族に限るべきだと思うよ。君たちの家族の姓は何て言うの?」
男の子は一気に巻くし立てた。
はこの男の子に自分の姓を言うべきなのか迷い、ハリーを見つめた。
ハリーは隣の男の子に分からないように首を振ると、初めて男の子に口を聞いた。
「君の家の姓は何て言うんだい?」
そして、その男の子が自信たっぷりに答えようとすると、その前に、マダム・マルキンが「さあ、終りましたよ、坊ちゃん」と言って、その男の子との会話は終わった。
「じゃ、ホグワーツでまた会おう」と気取った男の子が言った。
彼が店を出た瞬間、は溜りに溜っていたものを爆発させた。
「何、あの人!まるで自分がどっかの王子とでも思っているんじゃないかしら。クリーチャーや私のおばあちゃんより――あー同じくらいね――最低だわ」
「、言い過ぎだよ」
ハリーがたしなめた。
「でも、ハリーのママはマグル生まれよ。酷いわ・・・」
はそれでも怒りが収まらないらしく、続けた。
「確かにママはマグル生まれだけど、君のママと同じくらい優れてるよ。それに、周りがどんなことを言ったってママはへこんだりしないよ。だから、自身がママのことを想っていればいいんじゃないかな」
少なくとも僕はそう思うよ、とハリーが言った。
は驚いた顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻って、ハリーって大人だね、と言った。
そのとき、ハリーは密かにが子供すぎるんだ、と思っていたのは別にして。
「お嬢ちゃん、準備が整いましたから、こちらへどうぞ」
マダム・マルキンにそういわれ、はハリーの隣に立った。
ちょっとハリーと甘い雰囲気?ドラコとの溝は深まります。