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Children be chosen 選ばれし子供
ヴォルデモートの全盛期の今、新しい命が誕生した。その子はくりくりした目で、真っ黒な髪、整った顔立ちだった。
「おめでとう、」
まだ、退院して、そんなに経っていないのに、リリーは夫、ジェームズと共に、今日、生まれたばかりの赤ん坊との祝福のため、病院を訪ねた。傍らには、夫、シリウスも、その親友、リーマスとピーターがいた。
「ありがとう」
にっこりと笑って、は生まれたばかりの赤ん坊を抱いていた。
「ハリーと同学年ね、この子。きっといい友達になると思うわ」
リリーが赤ん坊を受け取り、抱っこした。
「きっと優秀な子だろうね、シリウスとの子供だもん」
ピーターが期待に満ち溢れた目で、赤ん坊を見た。
「悪戯ができれば、それでいいさ」
シリウスはリリーから受け取り、赤ん坊を高く持ち上げた。すると、赤ん坊は楽しそうに笑った。
「リーマス、お願いがあるの」
ふと、はリーマスを見た。
「なんだい?」
「この子の名付け親になってほしいの」
は父親であるシリウスと戯れている愛しい子供を見た。
「シリウスはハリーの名づけ親じゃない?だから、ジェームズにしようかと思ったのだけれど、父親があれで、名付け親もあんなだったら、この子がまともに育つとは思えないもの。だから、リーマス、お願いできるかしら?」
「頼むよ、リーマス」
シリウスも横から口を挟んだ。
「本当にいいのかい、私で・・・・・」
「リーマスだからお願いしているのよ」
が用心深いリーマスに念を押した。
「じゃあ・・・・・それなら・・・・・引き受けよう」
ありがとう、ととシリウスがリーマスに頭を下げた。
「明日までに考えてくるよ。シリウスよりいい名前を持ってくる」
リーマスは悪戯っぽく笑った。
それから、一年後、結局リーマスに""と名づけられ、すくすくと育っていった。 また、の父親はお金持ちで、別段、困るようなことはなかった。
ある夜、が突然声を上げて泣き出した。 小さい子供に夜泣きはよくあることなので、始め、両親はそんなに気にしていなかった。 しかし、一向に泣き止む気配が見えないを不審に思い始めた。 そこで、は親友のリリーに相談してみることにした。
シリウスもこんな時間、こんな時期に一人では心配だ、というので、をつれて、3人、ポッター家へ向かった。 そこで、見たものは悪夢と言っても過言ではなかった。 家はほぼ、崩れ落ち、ジェームズが一人で杖を持ち、誰かと向かい合っていた。 シリウスの第六感は危険をしらせていた。
「ジェームズ!」
そういうと、をに任せ、ジェームズと向き合っている謎の人物に杖を向けた。 雲の隙間から、月明かりが漏れて、謎の人物の顔を映し出した。
「ヴォルデモート卿・・・・・」
が小さく呟いた。 彼は自分に向けられている二つの杖に気づいていたようで、ちょうど、その隙間にいた、防御もなにもできない小さな男の子を捉えた。
「
アバダ ケダブラ
」
そう唱えた瞬間、不思議なことが起こった。 シリウスもジェームズもも何もしていないのに、ハリーの体は呪文を弾いたのだ、一つの大きな傷を残し、リリーから守られながら吹き飛ばされた。 また、ヴォルデモートは人間の姿をもうしておらず、そのまま一瞬にして、その場から消えた。
「ジェームズ!」
彼がいなくなった途端、地面に倒れこんだジェームズにシリウスは駆け寄った。
「一体、何があったんだ?」
「見ての通りさ。ピーターは僕等を裏切ったんだ」
ジェームズの目には怒りと悲しみがあった。
「ハリーとリリーを見てくれないか、シリウス」
ジェームズはそっと息を吐き出した。
「あぁ」
シリウスもあまり多くは語らずに、今は瓦礫となったジェームズの家に足を踏み入れた。 すると、不思議なことに、も父親の後を追ってきた。
「、危ないから、ここで待っていなさい」
シリウスが、いくら瓦礫から追い出しても、はめげずに付いてきた。 仕方がないので、に見張ってもらおうと、周りを見渡すと、はで負傷したジェームズの手当てをしていた。
「仕方がない」
そう呟くと、を抱っこして、シリウスは瓦礫に足を踏み入れた。
「ハリー、リリー」
シリウスは目を皿にしながら探し回った。しかし、二人から返答もないし、検討もつかない。すると、が抱っこに飽きたのか、暴れだした。
「おい、、大人しく・・・・・」
あまりにも激しく暴れるので、シリウスは誤って、を落としてしまった。 しかし、痛がる様子もなく、元気に瓦礫を走り回っていた。 突然、が止まり、座り込んだ。そして、一生懸命、穴を掘ろうとしていた。 シリウスはちょっと呆れながら、を再び、抱き上げた。
「そんなところに二人がいるのかい?」
シリウスはあまりにも熱心にが腕から逃げようともがくので、シリウスはが掘ろうとしていた場所に座り、積まれている板などをどかしてみた。すると、中からは小さな子供の泣き声がする。シリウスは急いで、すべての板などを退かしてみた。中にはハリーを守るように抱いた、リリーが出てきた。ハリーは額に大きな傷を負っていた。 意識がないようで、シリウスはリリーを浮かび上がらせ、ハリーは腕に抱え、安全な場所まで運んだ。 そのシリウスの後ろからトコトコとが着いてくる。
「リリー!」
から手当てを受け終えたジェームズは出来るだけ急いでリリーに近寄った。
「ハリーは?」
「ここにいる」
シリウスが腕に抱えていたハリーを抱くと、ジェームズはほっとしたような顔になった。
「生きているのか?」
リリーの様子を観察しているにジェームズが聞いた。
「わからないわ――でも、とっても冷たいの」
は涙をこらえながらそう言った。口には出せないが、リリーが死んだのは明らかだった。
「あ、こら、!」
シリウスの横からまた、はすり抜け、リリーの顔を覗いた。 そして、幼いながらに、たたき起こそうと、頬をパチパチと叩いた。 しかし、リリーが起きないので、は――彼女も何故そうしたのか、分からないだろうが――リリーの頬にキスした。 シリウスはもう十分だろう、とを抱き上げ、大人しくさせた。 そのとき、が歓喜にあふれた声で言った。
「リリーの手が暖かくなってきてるわ!」
言い終わるかくらいに、リリーは目を覚ました。
「ジェームズ・・・・・」
「リリー、僕が分かるかい?」
小さく、しかしはっきりとリリーは頷いた。 場の雰囲気を感じ取ったのか、はキャイキャイと喜びの声を上げた。 シリウスはそんなを見ながら、ジェームズに話して聞かせた。 「がハリーとリリーを見つけたんだ。それに今、もしかしたらの力でリリーが目覚めたのかもしれない。どう思う?」
ジェームズはしばらく考え込んだ。
「こんな小さな子が出来るとは考えにくいけれども、は違うのかもしれない。ハリーにも呪文が効かなかった。とにかく、ダンブルドアに知らせないと――」
「大丈夫じゃよ。大丈夫だったかね、4人とも、いや、6人とも」
ダンブルドアは一人一人に目を合わせ、と目を合わせると、にっこりと微笑んだ。
「その子は、相当頭が良いようじゃな。ご苦労じゃった、」
は名前を呼ばれたことで嬉しかったのか、またキャイキャイと喜び溢れた声を出した。
「さて、ジェームズ。君はしばらくシリウスのところに滞在するがよい。君は知らんと思うが、彼の家に忠誠の術を今年の冬、かける予定になっておったが、時期を早めるとするのでな、少しは安全じゃ。リリー、君は直ちに病院へ行くがよい。少し、が傷を治した――」
「まさか、そんな!」
シリウスもジェームズも絶句した。
「いや、そうと考えるのが一番筋が通っておる。もう一度言うが、この子は相当頭が良い。下手をすれば、ヴォルデモートよりも恐ろしくなることもできるじゃろう――話しを戻すが、リリーは病院へ、ジェームズとハリーはシリウスの家へ向かうのじゃ。ジェームズ、シリウス、くれぐれも言っておくが、その子たちは今後、新聞や雑誌などで、大変騒がれるじゃろう――ハリーはヴォルデモートを倒した英雄として、は瀕死の状態だった者に命を吹き込んだ女神として――しかし、それだからといって何か、特別なことをするでないぞ。二人がその重さに耐えられるようになるまでのう」
「ハリーの傷は治りませんか?」
ジェームズが心配そうに聞いた。
「傷は良いものじゃよ・・・・・消そうと思っても消えぬかもしれん。じゃが、なら、もしかしたらできるかもしれないのう」
ダンブルドアはじっとを見つめた。
「先生、リリーに着いていってはいけないでしょうか?」
はまるで授業中に聞くように手を上げて言った。
「おぉ、もちろんよいぞ。仲間は大切じゃ・・・・・ピーターの件は残念であった」
ダンブルドアはそういうと、6人を急かした。
「良いか、くれぐれも二人を特別扱いするでないぞ」
ジェームズとシリウスは子供二人を連れて家に向かい、リリーとは病院に向かって姿くらましした。
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二人とも選ばれし子かもしれません。