「で、どういう意味だったの?」
日が沈み、大分世の中も静かになった頃、やっとハリーは帰って来た。そして、それと代わるようにシリウスたちは全員、自分たちの家に帰っていった。
リリーとテディに手伝ってもらい作った夕食をハリーのために温め直し――もちろんしっかりシリウスたちも夕食を食べた――はハリーの向かい側に座った。そして何を話すかと思えば、日中彼らと何をしていたかということ。が一部始終話している途中だった。
「なんかね」
は自分用に用意した紅茶を飲んだ。
「あ、そういえば、紅茶の葉もパパたちが買ってきてくれたの」
昼間、シリウスとジェームズが抱えていた買い物袋の中身はすべて自分達の家に必要な買い物だった。
「お金は?」
「払うって言ったんだけどね・・・・・」
がため息まじりにそう言うとハリーが苦笑した。
「押しに負けたんだ」
「だってー。リーマスもリリーもいいからっていうんだもん」
仕方ないじゃない、とが言い張った。確かにリーマスにもリリーにも押されたら断り切れない。ハリーは気をとり直すように言った。
「今度、遊びに行ったときにでもなにか持っていこう――それでなんだったんだい?」
ははじめ、ハリーに何を聞かれているのかわからなかったが、しばらく考えた後、思い出したようだった。
「そうそう。だからね、なんかリーマスが言うには、私がいつもハリーとセットにして自分を数えてるんだって――例えば、私の家じゃなくて、私たちの家っていう感じに」
そういえば、とハリーもいくつか思い当たる節がいくつかあった。
「多分、毎回がそう言う度にのろけてるように聞こえるんだろうね」ハリーが笑った。
「悪かったですね!」
がちょっとふくれてみせると、ハリーはにっこり笑って言った。
「僕としては嬉しいけどね」
「からかうなら夕食もうあげないわよ」
ごめんごめん、とまったく反省していない表情でハリーが謝った。
「ところでさ、今日、キングズリーに会ったんだ。そしたら君に臨月に入る前に悪いんだけどもう二回くらい顔を見せてほしいらしいよ。そう伝言を頼まれた」
「なにかあったのかしらね?」
が心配そうな目をすると、ハリーは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ、。ただ君の手を借りたいだけだと思うよ――君の場合、産休取るのがかなり早かったしね」
そう付け足すものだから、はむくれた。
「私だってもう少し仕事する予定だったわ。だけど、危険な仕事だからってパパたちも言うし、キングズリーも無理矢理休ませたの!大体あなただって一緒になって休ませようとしてたくせに」
「わかってるって。ちょっとからかっただけだよ。ごめんね?」
ハリーは慌ててに謝った。もちょっと機嫌を直し、言った。
「じゃあ明日はデザートにケーキを買ってきて」
ハリーは苦笑すると、わかりましたとおどけてみせた。
「それにしても、いつキングズリーのところに行こうかな」
がそう考えている間にハリーは夕食を食べ終え、食器を台所に運び、勝手に皿洗いするように魔法をかけた。家事に関しては二人で分担しているため、いつの間にかハリーも家事に関しての魔法が上手くなっていた。
「それとさ」
台所から帰ってくると、今度ハリーはの隣に座った。
「来週の水曜日、仕事が休みになったんだ」
「一応、二連休ってこと?」
はカレンダーを確認して言った。ハリーは責任ある立場ということもあり、休みが不定期だったし、もし何かあればすぐに現場に向かわなければならなかった。
「うん。一応ね」ハリーがちょっと笑った。
「多分、何事もないと思うよ。一応、その日はほとんど全員の闇祓いの出勤日だから」
じゃあ、とが嬉しそうにハリーを見た。
「二人で出かけましょう」
がハリーの手をとった。
「僕もそのつもりだよ」
ハリーはその手を引き寄せ、優しくにキスをした。
「楽しみね――パパたちに伝えておかないと」
うん、とハリーは相づちを打つと、つかみ所のない表情を見せ、言った。
「昼間に浮気しないようにね、奥さん」
「誰とよ」
が素早くそう突っ込むと、ハリーがニヤリと笑った。
「父さんとか、リーマスとか?」
あのねえ、とが苦笑した。そしてもニコッと笑うとハリーに言った。
「心配?」
「もちろん」
ハリーがの顔を両手で挟んだ。
「妬いてるの?」
「そうさ」
がハリーの首に腕を巻き付けた。
「職場で浮気しないでね、あなた」
「しないさ、当たり前だろ――目を閉じて」
ハリーが優しくそう言うものだからはつられて目を閉じた。明日、ハリーは仕事のはずだが――と頭の片隅で思ったが、そんな考えもすぐに消え失せた。
ふと目を覚ますとまだ辺りは暗く、窓の向こうも静かだった。隣には軽く寝息を立ててハリーが寝ている。気だるい身体を動かし、は水分を求めて台所に向かった。
「寝られない?」
台所で水を汲んでいると後ろから声をかけられた。
「ごめんなさい。起こしちゃったかしら」
いや、とハリーもの隣に並び、水を汲んだ。
「身体は大丈夫?」
うん、とは笑ってみせた。ハリーがに無理をさせたことなどほとんどなかった。
「良かった」
「心配しないで。あなたこそ明日も仕事でしょう?」
はそう言いながら、自分のとハリーのコップを合わせて片付けると、寝室へと彼を引っ張った。
「まあね。でも心配することないさ」
「その油断が命取りになるのよ」
がため息をついた。
「身に染みてる」
ハリーがのために寝室のドアを開けた。
「ならいいけど」
はベッドに腰かけ、ハリーを見上げた。大分、お腹も大きくなったので、立っていると腰にくるのだ。
「」
「ダメよ。もうおしまい」
ハリーが甘い声で名前を呼んだので、はピンときて、即座にそう言った。ハリーは不満げだった。
「私だって出来たらいいけど――」
が少し赤くなった。
「――また朝からパパたちがくるのよ」
ハリーが盛大なため息をつき、を見た。
「君に人気がありすぎるのも困ったものだね」
「文句ならリーマスとジェームズに言うのね。そのうち、ジェームズも朝から来そうな勢いよ」
ハリーはドサッとの隣に座ると、の髪に触れた。
「まったく・・・・・君に一人で留守番させるのも怖いけど、父さんたちが押し掛けてくるのもある意味で恐ろしいね」
「そう?」
はハリーにもたれ掛かった。
「あぁ。早く産まれてきてくれないかなあ」
ハリーはの膨らんだお腹をそっと撫でた。
「もう少しかしらね」
も微笑みながら触れた。
「産まれたら、僕も育児休暇とるから。そしたら――」
ハリーはの腰に手を回した。そして彼女の耳元で囁き、またそれを聞いた彼女も嬉しそうに微笑んだ。
――そしたら、家族三人でゆっくりしよう。
激甘?笑
<update:2009.07.28>