Thirty-eight Memorise
休養から帰ってきて一週間もすると、も大分調子を取り戻すことができた。それに、周りもの休養について、もう興味はないようで、クリスマスイヴから、クリスマスにかけて行われるパーティの話題で持ち切りだった。
そんな中、ジェームズの言った通り、クリスマス前のホグズミード行きが発表された。
「久しぶりのホグズミード行きだ」
ロンが嬉しがった。
「ジェームズの言った通りなのね」
がそう言うと、ハリーも意味深長に頷いた。
「でも、何時に『三本の箒』に行けばいいのかしら」
一方、ハーマイオニーは一人、先の事を考えていた。
「大丈夫だろ?どうせルーピンとかも一緒になるだろうし」
ロンが気楽に言うと、ハーマイオニーは少し言い訳がましくなって、ロンに言い返した。
「でも、ルーピン先生と一緒に行く約束なんてしてないわ。違う?」
「そうだけどさ。多分、ルーピンはに話し掛ける機会がないだけだろ?だってほら、虐められた原因だってルーピンと仲が良いからだったし」
ロンがそう言い返すと、ハーマイオニーは反撃出来ずに黙ってしまった。
「とにかく、父さんたちとずっと一緒にいるわけじゃないんだから、そんな心配より、買い物のリストを作って手分けしないと。にホグズミードを案内する時間がなくなるよ」
ハリーは頃合いを見計らい、二人にそう言った。険悪な雰囲気を変えたかったのもあるが、一番はやはり、にホグズミードを案内してあげたかったからだった。
「そうね。それが一番だわ」
すばやくハーマイオニーがそれに賛成し、寝室に駆け戻り、羊皮紙を取ってきた。羽ペンも持っている。そして、ハーマイオニーはすらすらとペンを動かし、買い物リストを作り上げた。
「こんな感じかしら」
ハーマイオニーが見せた紙は完璧だった。
「ハーマイオニーってやっぱり頭が良いのね」
はハーマイオニーが作ったリストに酷く感動した。
「そんなことないわよ」
ハーマイオニーはニッコリと笑った。

そんなこんなで、すぐに週末になった。はマフラーと手袋をし、寒くないような格好になって、ホグズミードに向かった。久しぶりに雪は止んでいて、太陽の光がキラキラと雪に反射していた。
「始めはハニーデュークス店に行きましょ。午後になると、混むでしょうし」
ハーマイオニーが先頭に立ち、三人をハニーデュークまで誘導した。
四人が店の中に入ると既に人がたくさんいた。はハリーたちと離れないよう、気をつけながら店の中を見て回った。そんな中、がちらっと窓に目を向けると鳶色の髪が目に入った。はその色にすぐ反応すると、ハリーたちに知らせ、いち早く店の外に出た。
「きゃー!ルーピン先生!」
がルーピンの前に姿を現すと、既にルーピンの周りには女の子の団体が、彼を囲んでいた。黄色い声に優しい笑顔で答えるルーピンを見ながら、は隣にハリーが立つのを感じた。
「彼女たちよ、確か」
ハーマイオニーの呟きが聞こえて、は振り返った。
「ほら、あなたが暴行を受けた日に医務室に運ばれた女子生徒たちの団体がいたじゃない?彼女たちだわ」
ハーマイオニーはルーピンから目を離すことなくそう言った。
「私、そんな話は初耳よ」
は戸惑いを隠せず、ハーマイオニーに困惑した顔を見せた。するとハーマイオニーはじっとを見てから不思議そうに聞いた。
「帰宅したときにシリウスたちから聞かなかったの?噂ではあなたが――」
「ハーマイオニー」
彼女の話をさえぎるようにしての背後から鋭い声が聞こえた。シリウスが厳しい顔付きで立っていた。
「パパ」
は自分の口が勝手にそう動くのを感じた。ハーマイオニーはシリウスの表情から何かを読み取ったらしく、口を閉ざした。
「一緒においで、四人とも。ジェームズは別の場所で待ってる」
はちらっとルーピンにたかる女子生徒の団体に目を向けるとシリウスに従った。ルーピンはたち五人に気付かないようで、笑顔で女子生徒たちに答えていた。
シリウスの後に続いて歩くと、はホグズミードから離れて行くのを感じた。しかし、それでもハリーたちは行く先がわかったのか、不安げな様子はなく、は自分一人が落ち着きのない子供のように思えて仕方なかった。
着いた先はボロ家だった。
「やあ、。元気にしてたかい?」
家の中に入り、ジェームズの暖かい笑顔を見ると、は自分の抱えていた不安がすっと無くなるのがわかった。
「リーマスは後から来ると思う。女子の団体に囲まれてたからな」
「リーマスは歳を取ってから花開くタイプだったらしいね」
シリウスの報告に茶々を入れながら、ジェームズは全員分のイスを出した。
「で、父さん。何で僕たちを呼んだの?」
ハリーはジェームズがイスに座るとすぐにそう聞いた。ハリーの単刀直入な言い方が気に入ったのか、ジェームズはにっこりと笑って、リーマスが帰って来てからだ、と言った。
ハリーはそれで納得したようだったが、はふとさっきのハーマイオニーの言葉が頭を過ぎり、シリウスから目を反らさずに口を開いた。
「私に暴行を加えたルーピン先生とハリーの取り巻きの女子生徒はどうなったんですか?」
シリウスがジェームズに意見を求めるようにちらっと視線を送ったのをは見逃さなかった。
「それなりの罰は受けたらしい」
シリウスはそれだけ言った。はそんな彼を見て、それ以上口を出せなかった。
それからルーピンがボロ家に来るまでハリーとロンとハーマイオニーは「ヴォルデモート」についての情報と「不死鳥の騎士団」についての情報をジェームズとシリウスから出来るだけ聞き出していた。しかし、はその話についていくための知識はまだ乏しく、その上、そんな話より、シリウスの挙動の方が気になっていた。
「――じゃあまだ睨み合っているだけなんだ」
「ハリー。睨み合うっていうより虎視眈々とチャンスを狙っているんだよ」
ジェームズの苦笑した声が聞こえ、は我に返った。

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