Lovers 恋人
はルーピンの部屋を出るとグリフィンドール塔に向かった。どうもルーピンの言い方が気にかかる。彼ははっきりと自分のことを気にかけている人が二人以上いる言い方をした。明らかに「人たち」と言った。少なくともルーピン自身はその中に含まれるだろう。しかし、他に誰があてはまるのだろうか。シリウスやジェームズがあてはまらないのは何となくわかる。シリウスなんか、今は指名手配中だ。ダンブルドア先生やマクゴナガル先生が心配しているのは生徒の一人としての自分だ。としての私ではない。スネイプなど自分ではなく、のことを心配しているのは明らかだった。
が少し憂鬱そうに廊下を歩いていると、勢いあまって誰かにぶつかってしまった。
、大丈夫?」
心配そうな優しい響きを含んだこの声。は顔をあげた。
「大丈夫。ごめんね、セドリック」
はセドリックが差し出してくれた手を掴み、立ち上がった。
「何か悩んでいるように見えたけど」
セドリックはの顔を覗き込んだ。
「あ、うん・・・・・」はセドリックから目をそらした。
「よかった聞くよ?」セドリックは柔らかい微笑みを浮かべ、を見た。
「セドリックは優しいね」がぽつんと呟いた。
「そうでもないよ」セドリックが言った。
「君以上に優しい人は出会ったことがない」
の頬がパッと赤くなった。
「辛いことがあったら、誰かに聞いてもらうのが一番だよ。はいつも聞いてばかりだ」
そんなことない、とは小さく呟いた。しかし、余りにも小さすぎて、セドリックには聞こえなかった。
「僕で出来ることならするから。いつでも言って」
セドリックはポンポンとの頭を撫でると、立ち去った。はしばらくその場所にいたが、はっとしてグリフィンドール塔に向かった。すると、今度は前からマルフォイが歩いてくる。はクルリと回れ右をして立ち去ろうとしたが、マルフォイに呼び止められた。無視するわけにもいかず、振り向くと、彼はなんだか嬉しそうに笑っている。
「何の用?」が素っ気なく聞いた。
「用がなければ君を呼び止めたらいけないのか?」マルフォイが言った。
「あなたの場合はね」
「そうカッカするなよ。別に君に危害を加えようとするわけじゃない」マルフォイはそう言って、の隣に並んだ。
「大変だな」マルフォイがいつになくを気遣うように声をかけた。
「別に。引き取り手は優しいし、私のことを悪く言う人はそんなにいないから」
は素っ気なくそう言って、そっぽを向いた。
「君だってこのまま指名手配中の父親を持ったまま過ごしたくはないだろう?僕の父上は君を娘として引き取ることもお考えだ。ろくでなしのポッターと一緒にいることはない」
「おあいにくさま。私は指名手配中の父親が大好きなの。あなたの父親の元にいく気もないし、ハリーと別れるつもりもないわ」がツンとして言い返すと、それでもマルフォイは表情を崩さなかった。
「・・・・・まあ、いい」マルフォイはそう呟くと、彼を無視して歩き出したに歩調を合わせながら歩いた。
「何?」は不愉快そうにマルフォイを見た。
「途中まで一緒に行く」マルフォイはニヤリと笑った。
「お好きにどうぞ」
はすでに抵抗する気も失せて、マルフォイを好き勝手にさせた。そのとき、運が良いのか悪いのか、バッタリとパンジーに鉢合わせした。
「ドラコ!こんなところにいた。探したのよ」
マルフォイが小さく舌打ちしたのが聞こえた。
「ブラックなんかと何してたの?」
「お前には関係ない」
マルフォイが素っ気なくそう言ったが、パンジーはめげる様子もなく、マルフォイの腕に、自分のを絡ませた。
「ドラコ、行きましょ!」
パンジーはまるで、自分がマルフォイの恋人であるかのように振る舞った。マルフォイはしばらく黙ってを見ていたが、その後クルリと背を向けて、パンジーの腕を解いて去っていった。パンジーはをにらみつけるのを忘れることなく、スタスタと歩いていくマルフォイの後を追った。
「マルフォイは彼女のこと、嫌いなのかしらね?」
は二人が去った跡を見つめながら、呟いた。

「お帰り、
やっとのことで、が談話室に到着すると、ハリーが迎えいれてくれた。
「遅かったね。ルーピンと何を話し込んでたんだい?」
「ルーピンとじゃないわ。途中でセドリックとかマルフォイに会ったの――ロンとハーマイオニーは?」
がキョロキョロとあたりを見回すとハリーが二人の方を指差した。
「あっち。ちなみに優勢なのはもちろんロンさ」
がチェスの試合をしている二人に近づいても、二人は何の反応も示さなかった。
「それで、彼らと何を話してたの?」ハリー自身は出来るだけ穏やかに言っているようだったが、やはりそこからはハリーのちょっとした気持ちがうかがえた。
「別に何も・・・・・あぁ、マルフォイがろくでなしポッターですって」
茶化したように言うにハリーはため息をついた。まったくこちらの気持ちを理解してはいなかった。
「男の子ってさ、不思議な生き物よね」が呟いた言葉にハリーは首をかしげた。
「パンジーがね、マルフォイの腕に自分の腕を絡ませたの。そしたら彼、振りほどいちゃった」が肩をすくめた。仲が良さそうに見えるが実はそうでもなさそうで意外だった。
「ふーん。でも、言わせてもらえば女の子だって不思議な生き物だよ。特には人間かどうか、疑うよ」
ハリーが真面目くさった顔でそう言うと、こっそり二人の会話を聞いていたのか、ロンとハーマイオニーが吹き出した。
「失礼ね!正真正銘の女の子です!」
がむくれると、ハリーが吹き出した。ちょっとからかっただけなのに、こんなにも素直に返されて。ハリーはそっぽを向いたを見た。その横顔はまだ見たことのないの横顔に思えた。
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ちょっとした日常会話。笑