四人はひんやりした玄関ホールに足を踏み入れた。
その途端、声が響いた。
「ポッター、ウィーズリー、ブラック、そこにいましたか」
マクゴナガル先生が厳しい表情でこちらに歩いてきた。
「ポッター、ウィーズリー、処罰は今夜になります」
「先生、僕たち何をするんでしょうか?」
ロンがなんとかゲップを押し殺しながら聞いた。
「あなたは、ヒィルチさんと一緒にトロフィー・ルームで銀磨きです。ウィーズリー、魔法はダメですよ。自分の力で磨くのです」
ロンは絶句した。
管理人のアーガス・フィルチは学校中の生徒からひどく嫌われている。
「ポッター。あなたはロックハート先生がファンレターに返事を書くのを手伝いなさい」
「えーっ、そんな・・・・・僕もトロフィー・ルームの方ではいけませんか?」
「もちろんいけません」
マクゴナガル先生は眉を吊り上げた。
「ロックハート先生はあなたを特にご指名です。二人とも八時きっちりに。また、ブラック、あなたに言付けがあります」
マクゴナガル先生の鼻の穴がふくらんだ。
「スネイプ先生からあなたがスリザリン生徒に手を加えた、という報告が入っています。次、もしこのようなことがあれば、あなたも処罰は免れませんよ」
ハリーとロンはがっくりと肩を落とし、うつ向きながら大広間に入っていった。
はむくれている。
土曜日の午後はまるで溶けて消え去ったように過ぎ、あっというまに八時はあと五分後に迫っていた。
「いってらっしゃい」
ハリーとロンはとハーマイオニーに見送られ談話室を後にした。
一人、また一人と談話室に人影はなくなり、ハーマイオニーも寝室に上がり、いつの間にか、一人になっていた。
「」
その談話室のどこかから、自分の名前が呼ばれているのを感じた。
しかし、は眠かった。
「!」
さっきよりも大きな声で呼ばれ、はうっとうし気に談話室を見回した。
「、暖炉だ」
「パパ!」
暖炉からシリウスの生首が浮かんでいた。
「ハリーは?いるか?」
シリウスはキョロキョロと周りを見回した。
「いないわ。処罰中。空飛ぶ車で来た件でね」
「そうか・・・・・それで何か変わったことは?」
シリウスが心配そうにを見た。
「なにもないわ。まだ学校が始まったばかりだし。一体どうしたの?」
「・・・・・手紙、読んだのか?」
「手紙・・・・・?」
は記憶の糸をたどった。
「あぁ、マクゴナガル先生から渡されたやつ?」
シリウスが頷いた。
「読んだわ。だけど、ズッと今まで忘れてた」
「誰にも話してないだろうな」
「娘を信用しなさいよ」
がムスッとして言い返した。
「・・・・・なにか、嫌なことでも?」
シリウスが微妙なの異変に気が付いた。
「・・・・・なんで分かったの?」
がキョトンとしてシリウスを見た。
「昔から変わってないよ、おまえは」
シリウスが笑った。
「誉めてるの?」
シリウスは口許をゆるめ、優しく愛おしそうな目でを見た。
「で、どうしたの?何かあったの?」
はシリウスを見つめ返した。
「いや・・・・・少し胸騒ぎがしただけだ。何もないならそれでいいさ。無事な姿が見られただけでも十分だ」
「じゃあ、もう少しだけいてくれる?ハリーかロンが帰ってくるまで」
シリウスは少し待て、といって暖炉から消えた。
すると、数十秒後、今度はジェームズの顔が現れた。
「やぁ、。元気そうだね」
「ジェームズもね」
はクスクス笑った。
「そういえば、リリーがハリーに吼えメールを送ろうとしてたからとめたんだけど――空飛ぶ車の件でね――どう、ハリーは反省してそうかい?」
「ん・・・・・反省してるんじゃないかしら、多分」
の適当な答え方に、ジェームズは思わず笑った。
「シリウスも言ってたけど、何か嫌なことがあったみたいだね。話したら楽になるよ」
は何て言って良いのか分からずに首を振った。
「わかんない。話すことがわからないの。なにがイヤなのかさえ、わからない。別にみんなとケンカしたわけじゃないし、勉強がわかんないとか、そんなんじゃなくて・・・・・」
「そっか。そんなときもあるよ、きっと。どうする?もリリーもいるけど、少し話すかい?」
ジェームズがを気遣うように言った。
「ううん、いいや。ママたちも仕事で疲れてるだろうし・・・・・それに――」
そのとき、談話室のドアが開いて、誰かが入ってくる気配がした。
「早く、急いで!行って!」
は暖炉の前に立ち上がり、ジェームズの生首が見えないようにした。
「?」
ハリーだった。
「そんなとこでなにしてるんだい?」
「ハリー・・・・・驚かさないでよ」
は心底びっくりしたように胸をなでおろした。
「処罰は?終ったの?」
「終ったよ。でも、少し問題が・・・・・僕、ロックハートの部屋で何かの声を聞いたんだ」
は頭の上にクエッションマークを浮かべていた。
「殺してやる、とか言ってた。でもロックハートには聞こえないんだ」
はハリーの幻聴だ、と言いたかったが、あまりにも大真面目な顔つきなので、なにも言えなかった。
「ロックハートが嘘をついていたとしても、彼にはなんの利益もないんだからありえないわね・・・・・姿の見えない人間だったとしても部屋に入らない限り聞こえないし・・・・・パパたちに相談してみたら?」
がそういうと、ハリーは首を振った。
「余計な心配を母さんたちにかけたくないよ」
「そう・・・・・それじゃあ・・・・・おやすみなさい、ハリー」
「おやすみ、」
久々にパパたちとご対面です。