Mudblood 穢れた血
それから二、三日はギルデロイ・ロックハートが廊下を歩いてくるのが見えるたびに、サッと隠れるというハリーの技に、たちはずいぶん時間を取られた。 また、コリン・クリービーの方は、どうやらハリーの時間割りを暗記しているらしく、一日に何度もハリーに呼び掛けては返事が返ってくるのが嬉しいようだった。
金曜日の午前、「呪文学」の授業中に、ロンの杖が暴走を始め、チビの老教授、フリットウィック先生の眉間にまともにあたり、そこが大きく腫れ上がって、ズキンズキン痛そうな緑色のコブを作った。 そんなこんなではすっかり両親からもらった手紙の件のことを忘れていた。
週末、がハーマイオニーと一緒に談話室に降りていくとハリーの姿はなく、ロンが静かに一人たたずんでいた。
「おはよう。ハリーは?」
が聞いた。
「クィディッチの練習だって」
ロンはにハリーの走り書きの紙を見せた。
「まあ、それなら仕方ないわね。先に朝食を食べに行きましょ。それでトーストを持っていけばいいわ」
ハーマイオニーがそう言うと、三人はそのまま大広間に向かった。 そしてトーストを手に持って競技場に急いだ。 三人がスタンドに座ると、ちょうどハリーが出てきた。
「まだ終わってないのかい?」
ロンが信じられないという顔をした。
「まだ始まってもいないんだよ。ウッドが新しい動きを教えてくれてたんだ」
ハリーは眠そうだった。 しかし、箒に乗るとハリーは素晴らしい飛びっぷりを見せてくれた。 たちが座っている向かい側ではコリンが一生懸命に写真を取っていた。 何故こんなところにコリンがいるのだろう、とが隣にいたハーマイオニーに話しかけようとすると、ハーマイオニーが逆に話しかけてきた。
「どうしたのかしら。スリザリンがいるわ」
ロンももハーマイオニーの指す方に釘付けになった。 そして、三人は見合わせたようにそろってグラウンドに向かった。
「どうしたんだい?どうして練習しないんだよ。それに、あいつ、こんなとこで何してるんだい?」
ロンはスリザリンのクィディッチ・ローブを着ているマルフォイの方を見て言った。
「ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ」
マルフォイは満足気に言った。
「僕の父上が、チーム全員に買ってあげた箒を、みんなで賞賛していたところだよ」
ロンは目の前に並んだ七本の最高級の箒を見て、口をあんぐり開けた。
「いいだろう?」
マルフォイがこともなにげに言った。
「だけど、グリフィンドール・チームも資金集めして新しい箒を買えばいい。クリーンスイープ5号を慈善事業の競売にかければ、博物館が買いを入れるだろうよ」
スリザリン・チームは大爆笑だ。
「箒の自慢してるけど、あなた、飛べるの?真っ直ぐ。もしかして、自分でわざわざブラッジャーに当たりに行ったりするんじゃない?」
が真顔でそう聞くと、やられっぱなしだったグリフィンドール・チームのメンバーに笑みが戻った。
「そうよ。少なくとも、グリフィンドールの選手は、誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。こっちは純粋に才能で選手になったのよ」
ハーマイオニーがきっぱりと言った。 マルフォイの自慢顔がとハーマイオニーの言葉でちらりとゆがんだ。
「誰もおまえの意見なんか求めていない。生まれそこないの『穢れた血』め」
マルフォイが吐き捨てるようにように言い返した。 とたんに轟々とこえが上がった。 フレッドとジョージはマルフォイに飛びかかろうとしたし、それを食い止めるため、フリントが急いでマルフォイの前に立ちはだかった。 アリシアは「よくもそんなことを!」と金切り声を上げた。 ロンはローブに手を突っ込み、ポケットから杖を取り出し、「マルフォイ、思い知れ!」と叫んで、かんかんになってフリントの脇の下からマルフォイの顔に向かって杖をつきつけた。 バーンという大きな音が競技場にこだまし、緑色の閃光が、ロンの杖先ではなく反対側から飛び出し、ロンの胃のあたりに当たった。 ロンはよろめいて芝生の上に尻もちをついた。
「ロン!ロン!大丈夫?」
ハーマイオニーが悲鳴をあげた。 ロンは口を開いたが、言葉が出てこない。 かわりにとてつもないゲップが一発と、ナメクジが数匹ボタボタと膝にこぼれ落ちた。 スリザリン・チームは笑い転げた。 フリントなど、新品の箒にすがって腹をよじって笑い、マルフォイは四つん這いになり、拳で地面を叩きながら笑っていた。 グリフィンドールの仲間も、ヌルヌル光る大ナメクジを次々と吐き出しているロンの回りには集まりはしたが、誰もロンには触れたくはないようだった。
「ハグリッドのところに連れていこう。一番近いし」
ハリーがとハーマイオニーに呼び掛けた。 はそれに頷いたものの、二人に先に行ってて、と言った。 ハリーとハーマイオニーはそんなを怪訝に思ったものの、迷っている時間はなく、ロンを助け起こし、グラウンドを抜けていった。 そして、はロンがいなくなってもまだ笑い転げているスリザリン・チームに笑いかけた。
ウィンガーディアム レビオーサ!
すると、競技場にスリザリン・チームの叫び声が響きわたった。 先ほどロンが落としていった大ナメクジがの呪文で浮かび上がり、大口を開けて笑っていたスリザリン・チームの口に次々と入っていった。 はフレッドによくやった、と肩を叩かれた。 自身もすっきりした。

は急いでハグリッドの小屋に向かった。 戸を叩くとハグリッドが招き入れてくれた。 ロンは洗面器にナメクジを吐き出していた。
「おまえさん、何をやってたんだ?」
ハグリッドは怪訝そうにに尋ねた。 どうやらロンを見捨てたように思っているらしい。
「ロンの敵討ちしてきたの。口の中にナメクジがいるのはどんな気分になるかをね」
その答えにハリーもハグリッドもロンもハーマイオニーも驚いた。
「おまえさんも本当におまえさんの父親からいろんなものを受け継いどるな」
「誉めてるの?」
がそう聞くと、ハグリッドは笑って頷いた。
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ロンのナメクジはどんな味でしょう。笑