Letter 手紙
ロックハートの授業の後片付けが終わった四人はその足で談話室に帰ることにした。 ロンはハーマイオニーとロックハートについて口論していたし、ハリーはハリーでロックハートへの苦情についてをどういう文章で両親に伝えるか、迷っていた。 は別にロンとハーマイオニーの口論を聞いていたいとも思わなかったし、ハリーと一緒に両親に手紙を書く気にもなれなくて、一人、談話室を後にした。 しかし、特に行きたいという場所はなく、なんとなく図書館に足が進んだ。
「ブラック、ここにいましたか。あなたのご両親から手紙を預かりました」
マクゴナガル先生は急に曲がり角から現れた。
「さあ、手紙です。くれぐれも他言しないように」
マクゴナガル先生は心配そうな信用しかねるという顔でにその重要そうな手紙を渡すとスタスタとに背を向けて立ち去ってしまった。 はしばらく呆然とその後ろ姿を見つめていたが、突然ハッと我にかえり、無警戒にもその場所でいきなり手紙を開けようとした。
「ブラック家は自分より強者はいないとタカをくくるのが好きらしいな」
その刺々しい言い方はの動作を止めた。
「マクゴナガル先生に言われただろう。何故、このような場所で開けるのだ。一緒に来たまえ」
スネイプはにそう早口で巻くし立てると、マントをひるがえして歩き始めた。 はその姿に少し裏があるのかと疑ったが、仕方がないのでスネイプの後に続いた。 案内された場所はスネイプの私室だった。 ここには夏休み前、一度入ったことがあった。
「何故ふくろう便で届かなかったのか、などと疑問に思わなかったのか?」
スネイプはを部屋に入れ、ドアを閉めると、ネチネチとそう言った。
「マクゴナガル先生に間違えて送られたのだと思いました」
は本当にそう思ったので素直にそう答えた。
「戯言を・・・・・さっさと手紙を読まんかね」
スネイプは自分の所為でが読めないと、分かりきっているのに、そう言った。 は腹が立ったが、逆らわずに手紙を開いた。

親愛なる

まず言っておきます。 この手紙を読んだら、内容を他言せず、直ぐ様燃やしなさい。

そこまで読んではふと考えた。 スネイプの目の前で手紙を燃やしたらどんな顔をするだろう。

さて、本題に入りますが、くれぐれも警戒し続けてください。 身の回りに危険が迫っています。 もし、危険に遭遇したのなら、戦わずに逃げてください。 逃げる、ということも大変な勇気です。 恐怖から逃げている訳ではないのです。 また、、あなただから頼めることです。 どうかハリーの面倒を見てください。

は思わず「は?」と声を上げた。いつもと逆のパターンだ。いつもハリーがの面倒を見てあげてと言われているのに。 するとスネイプが、黙って読め、とばかりにを睨みつけていた。 は手紙に再び集中した。

あなたはきっとおかしなことだと思うでしょう。 ですが、今は何も聞かずに、考えずにわたしたちの言うことに耳を傾けて。 また、今年のクリスマス、あなただけは必ず家に帰って来てください。 教えなければならないことが一つあります。 あなたは普通の魔法使いよりずば抜けて優れています。 冗談ではないのです。 詳しいことはあまりお話出来ませんが、クリスマスに必ずお話します。 だから、お願いですから問題など、起こさないように。
そして最後にこの手紙があなたに届いたこと、ホグワーツの教員数名――ダンブルドア校長、マクゴナガル先生、スネイプ先生――以外には秘密です。
もちろんハリーにも言ってはいけません。 あなたを信用しています、期待を裏切らないで。

シリウス、ジェームズ、、リリー

は長い手紙をやっと読み終えたことで、達成感を覚えた。
「読み終えたのなら、その手紙を返したまえ」
スネイプが恩着せがましく言った。 はムッとなって言い返した。
「この手紙は先生からのではありませんので"返す"という表現は間違っていると思います」
そして、は綺麗に折り畳んだ手紙をスネイプの机に出し、失礼しました、と言って地下室を出た。 廊下は薄暗くてもスネイプの私室よりは幾分かマシだった。
「ありえない」
は何に対してか、そう呟いた。
「何がありえないんだい?」
すると、後ろからは誰かに声をかけられた。 声の主はセドリックだった。
「セドリック!」
の心が晴れわたった。
「やあ、久しぶりだね」
セドリックは気さくにそう言ってとの距離を縮めた。
「そうね。でも、時々、大広間であなたの姿を見付けるからそんな気はしないわ」
も笑顔でそう答えると、二人は頃合いを見計らったようにそろって歩き始めた。
「時間は平気?」
セドリックが聞いた。
「うん。何もないわ。寮に帰ってもすることないしね」
「そう、ならよかった」
セドリックの笑顔は本当に心からそう思っているような顔だった。
「そういえば、今朝の吠えメールは君の友人のだろう?聞いていた内容だとずいぶん大変そうだったけど、大丈夫なのかい?」
はなんと答えようか迷った。
「多分、大丈夫だと思うわ。でも一人の子は杖が折れちゃって大変なの。新しいのは買ってもらえないみたいだし・・・・・」
セドリックはそれを聞いていたとても驚いたようだった。
「それに、今、闇の魔術に対する防衛術はギルデロイ・ロックハート先生でしょう?今さっき、彼の授業の後片付けをさせられて、あんまり機嫌は良くないの。私も彼は好きじゃないし」
は苦笑しながらそう言った。 二人はまた少し沈黙してから、セドリックがもう帰ろう、とポツリと言った。 はもう少しセドリックと一緒にいたい気持ちと、今さっき渡された手紙について良く考えたいという思いが混じりあって少し悩んだが、結局は素直にセドリックに従った。
寮に帰ると、ロンとハーマイオニーはもう口喧嘩を止めたのか、お互いにいつものように普通に話していた。 また、ハリーも二人と一緒に笑いあっていて、は何故だか自分があの中に入ってはいけない、入れないような気がした。
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スネイプ先生毒舌です。笑