「ポッター、ウィーズリーが君のサイン入り写真が欲しいってさ」
マルフォイがニヤニヤ笑いながら言った。
「彼の家一軒分よりもっと価値があるかめしれないな」
ロンはスペロテープだらけの杖をサッと取り出した。
すると、ハーマイオニーが「バンパイアとバッチリ船旅」をパチンと閉じて、「気を付けて!」とささやいた。
「いったい何事かな?いったいどうしたかな?」
ギルデロイ・ロックハートが大股でこちらに歩いてきた。
トルコ石色のローブをヒラリとなびかせている。
「サイン入り写真を配っているのは誰かな?」
ハリーが口を開けかけたが、ロックハートはそれを遮るようにハリーの肩にさっと腕を回し、陽気な大声を響かせた。
「聞くまでもなかった!ハリー、また逢ったね!おや、もそこにいたのかい!」
は羽交い締めにされたハリーと人垣の中にニヤニやしながらするりと入り込むマルフォイを見比べた。
「さあ、撮りたまえ。クリービー君」
ロックハートがコリンにニッコリ微笑んだ。
「二人一緒のツーショットだ。最高だと言えるね。しかも、君のために二人でサインしよう」
コリンは大慌てでもたもたとカメラを構え写真を撮った。
そのときちょうど午後の授業の始まりを告げるベルが鳴った。
はコリンが自分を見ている視線を感じたが、そのままロンとハーマイオニーと一緒に教室に向かった。
ハリーはロックハートに拉致されていた。
「マルフォイのやつ」
ロンが吐き捨てるように言った。
「でも、あんなところで呪いなんかかけたらマルフォイの思うつぼよ」
ハーマイオニーが言った。
「でも、スネイプはいなかったし、かけたって良かったかもしれないわ」
も今回ばかりはロンの肩を持った。
「そうよ!なんでしなかったのかしら。ホグワーツは噂が広まりやすいのに・・・・・」
「あなたがハリーよりマルフォイを好きってことを気にしているの?」
ハーマイオニーが激しく首を降るの動きを止めて言った。
「どうしよう、ハーマイオニー」
はこの先のことを思い悩んで言った。
「気にすることないさ、。マルフォイは大嘘つきだ。少なくともグリフィンドール生は信じないよ。とマルフォイじゃ釣り合わないもん」
ロンが明るく言った。
三人がドタバタとクラスメートと一緒に入ると、ハリーは一番後ろの席に座っていた。
「顔で目玉焼きが出来そうだったよ」
ロンが言った。
「クリービーとジニーがどうぞ出会いませんように、だね。じゃないと、二人でハリー・ポッター・ファンクラブを始めちゃうよ」
「やめてくれよ」
ハリーが遮るように言った。
「それに、。君、マルフォイは僕より嫌いなのは当たり前かもしれないけど、ロックハートが君のこと、すごく気にしてたよ」
「彼、頭がおかしいんじゃない?」
がボソリと呟いた。
「何で私のことなんか気にするの?彼はあなたにゾッコンじゃない」
「そういうことじゃなくて!」
ハリーが少しに声を荒だてると、は肩をすくめた。
「ロックハートは君が好きなんだよ」
ハリーは少し声を潜めて、きっぱりと言った。
「まさか。ただ、あの人は自分のファンを増やしたいだけでしょう。それに大丈夫よ。ロックハートは絶対、私より馬鹿だもん」
は悪戯っぽくそう笑った。
「彼は馬鹿なんかじゃないわ!今までずっと素晴らしいことばかりしてきたもの!それに、彼が好きか嫌いかは、私が口を出すべきじゃないかもしれないけど、ファンになった方が絶対にいいわ!」
に熱っぽくそう言うハーマイオニーにロンがボソリと「口をすでに出しているじゃないか」と、言った。
はロンとハーマイオニーの助言はとにかく、ハリーに何故、怒った口調でそんなことを言われなくてはならないのかと、不思議で仕方なかった。
クラス全員が着席すると、ロックハートは大きな咳払いをした。
みんなしんとなった。
ロックハートは生徒の方にやってきて、ネビル・ロングボトムの持っていた「トロールとのとろいの旅」を取り上げ、ウィンクをしている自分自身の写真のついた表紙を高々と上げた。
「私だ」
本人もウィンクしながら、ロックハートが言った。
「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして、『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞――もっとも、私はそんな話をするつもりではありませんよ。バンドンの泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」
ロックハートはみんなが笑うのを待ったが、ごく数人が曖昧に笑っただけだった。
「全員が私の本を全巻揃えたようだね。大変よろしい。今日は最初にちょっとミニテストをやろうと思います、心配ご無用――君たちがどのぐらい私の本を読んでいるか、どのぐらい覚えているかをチェックするだけですからね」
テストペーパーを配り終えると、ロックハートは教室の前の席に戻って合図した。
「三十分です。よーい、はじめ!」
はペーパーテストを見下ろし、質問を読んだ。
1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?
あいにく、はそんな知識はなかったので、ロックハート色、と書いた。
2 ギルデロイ・ロックハートのひそかな大望は何?
は頭を悩ましながら、世界中を自分のファンにする、と書いた。
3 現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が一番偉大だと思うか?
は心の中でくだらないと言いながら、ホグワーツの教師になったこと、と書いた。
彼の神経に脱帽していた。
こんな質問が延々三ページ、裏表に渡って続いた。
最後の質問はこうだ。
54 ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物は何?
今度こそ、はこれ以上にないほど呆れた。
そんなもの、知るはずもない。
スラスラとペンを走らせ、七月三十一日で贈り物はファンレター、と書いた。
残りの余った時間はすべて睡眠時間に当てることにしただった。
ロックハート先生の歴史を学びましょう!笑