ホグワーツを卒業してから早、三年。
ハリーもも立派な大人になっていた。
二人とも親と同じ闇祓いになった。
特にの方は外見も美しく育ち、狙っている男たちも少なくはない。
しかし、にはそんなことを考えるよりはまだ、両親たちと一緒にいた方が楽しそうだった――ただ、ハリーを除いては。
「ただいま!」
久しぶりの休暇にとリリーとは気分転換に買い物に行ってきた。
町の男どもはこの三人の魅力ある女性にただただ惹かれるばかりだった。
「お帰り。変な男に言いよられなかったか?」
ジェームズは未だにを溺愛する、という性格は変わっていないようだ。
「ん、大丈夫。片っ端から退治するから」
の口調からは冗談だと感じ取れなかった。
「そう、そうよ!シリウス、聞いてよ!この子ったら店の店員にまで杖を向けたのよ!信じられない!」
いきなりがヒステリックにシリウスに訴えた。
「先に手を出したのはあっちよ、ママ。セクハラしてきたもの」
シリウスに怒られるのが嫌なのか、は自分を弁護した。
シリウスはそれを聞くと少し眉を潜めた。
不快に思ったのかもしれない。
「でも、。君はホグワーツ在学中でも言いよる男には容赦なかったよ」
ハリーがそう言うとは少し頬をふくらませて、不服そうな顔をした。
「言いよってくる男より私が悪いの?」
「そんなことないよ。名付け親としてはそれが一番いいね」
リーマスはは責めるシリウスとハリーをしり目にに優しく微笑んだ。
「あ、僕もそれに賛成!」
ジェームズが大真面目に頷いた。
「それにしたって、。もうそろそろ彼氏くらい作りなさいよ。いつまでも若いままじゃないし、あなたなら片手で数えきれないほど寄ってくる男性はいるでしょう?」
のその言葉にシリウスとジェームズとリーマスは思わずに恋人が出来た場面を想像してしまった。
「ダメ!は渡さないから!」
途端にジェームズが思わず叫んだ。
「そうだ。いっそのこと、一生呪ってしまおうか」
リーマスの目は笑っていない。
「というか、別に結婚なんてしなくてもいいんじゃないか?」
シリウスはニヤリと笑ってを抱き締めた。
「ここには良い男が三人もいるんだしな」
シリウスの囁きにはビクッと反応した。
それが気に入ったのかシリウスはもっと深く笑って言った。
「一生ここにいろよ」
「バカ言わないで!」
調子に乗りすぎたシリウスは母親であるによって成敗された。
「にだってちゃんと好きな人くらい出来るわ。あなたたちがそんな態度だと余計にを悩ますってこと、分からないの?」
が怒った。
「ジェームズもジェームズよ!どうしてあなたがを引き留められるのよ!」
リリーも怒っていた。
シリウスもジェームズもリーマスも罰が悪そうな顔をした。
はまだここにいて大人たちの面白い話に付き合ってもよかったのだが、ハリーがここから離れたそうにしていたので、はそれに合わせることにした。
こっそりその場から立ち去ったハリーとのことは誰一人気付かなかった。
「一体、いつまで黙ってるの?僕たちのこと」
ハリーは自室にを招き入れると邪魔が入らないように呪文を唱えた。
「私だって出来れば黙ってたくないわよ。ただ――」
は首を激しく振ると悲しそうにハリーのベッドの上に座った。
「怖いんでしょう?」
ハリーがはっきりと口に出すと、はビクッと反応した。
「君の考えていることはわかってる」
ハリーはそう言うと静かにの隣に腰を下ろした。
「・・・・・」
ハリーが優しくを呼んだ。
「僕は君が好きだ。片時も離れず側にいたいんだ」
「私だってそうしたいわ!だけど、あなたがいなくなってしまいそうで、離れていってしまいそうで・・・・・」
の声が震えた。
「僕はこれからもずっと側にいるし、君を一人なんかにしない」
ハリーはを引き寄せた。
「君がどうしようもなく愛しくて好きでたまらないんだ」
の不安そうな目とハリーの真剣な目がぶつかりあって、は思わず視線をそらした。
「こっちを向いて」
ハリーはそんなの頬に手を伸ばした。
しかし、は思わず身をこわばらせ、立ち上がるとハリーに背を向けた。
「ハリー、私だってあなたが好きよ」
窓からオレンジ色の光が流れてきていた。
ハリーもそっと立ち上がるとの背後に立った。
「誰にも君を渡したくない」
はゆっくりとハリーと向き合った。
「マグルの映画とかだと、ここらへんに良いムードの音楽がかかるんだよね」
いきなりさっきとは打って変わってが苦笑した様子でハリーに言った。
「僕も君もマグル学は取ってないのにどうしてそんなことが言えるんだい?」
ハリーがの波に乗っかった。
「ハーマイオニーから聞いたの」
がにっこり笑った。
ハリーは密かに、は笑顔が似合う、と改めて思った。
「でも僕は音楽が無い方がいいね。君だけを聞いていたいから」
ハリーは不敵な笑顔を見せるとを抱き寄せた。
「やっぱりこっちの方がハリーには似合ってるよ」
「どういうこと?」
抱き締められながらが呟くその言葉にハリーは眉を潜めた。
「強引なところ。腹黒いところ」
クスクス笑うと怒ったような困ったような顔をしたハリーのシルエットが淡いオレンジ色の光の中に浮かび上がった。
「じゃあリクエストに答えてあげるよ」
ハリーの声がの頭の中に木霊した。
ハリーはゆっくりの背中に手を回して距離を縮めた。
ハリーとの顔がだんだん近付いてお互いの吐息が感じられるようになると、ゆっくりと音もなく部屋に甘い雰囲気が漂った。
は少し息苦しさを感じてハリーの袖を握り締めた。
するとハリーは少しだけ離し、またに触れた。
今度はを気遣うように、の頭の後ろに片手を沿えてバランスを保っていた。
たった数秒間ばかりだったがの意志を変えるには十分だった。
二人はまたベッドに座りながらお互いに寄りかかっていた。
「ハリー」
「なに?」
ハリーはの髪をもて遊びながら聞いた。
「ママたちに、話そうか」
「良いのか?」
思わずハリーは体を起こした。
はクスクス笑いながらベッドに仰向けに転がった。
「うん。ハリーが一緒にいてくれるなら大丈夫な気がする」
「それは甘えられてるのかな?」
「頼ってるの!」
律儀に訂正するに苦笑しながらも、ハリーはの体をベッドから引き起こして立たせた。
「マグルはね、こう言うとき、『善は急げ』っていうんだって」
ハリーはもう一度優しくを抱き締めると魔法を解いた。
ハリーの片手との片手は結ばれて、リビングまで降りていった。
数分後、五人の大人たちの驚喜の声が家中に響いたのは言うまでもない。
ハリー夢は初めて書きましたので、偽なのは許してください。
<update:2006.01.21>