夏の微熱
「明日、家にセブルスが来るかね」
夕食のとき、はなんとか自然に聞こえるようにと言ったつもりだったが、他の人々は騙されなかった。
「なんのためにだ?」
シリウスが鋭く聞いた。
「リーマスに脱狼薬を渡すためよ」
「いつもなら、リーマスが向こうに出向いているのに?」
ジェームズが眉をひそめた。
「まさか、。あなた家に招待してないでしょうね?」
リリーの言葉にうっとつまらせた
「だって、仕方ないじゃない。複雑そうな魔法薬の解毒剤頼まれちゃったし・・・・・みんな忙しいじゃない」
が頬をふくらませた。
「あいつが引き受けたのか?」
シリウスが驚きを隠せず、大きな声で言った。
「みたいだよ」
リーマスがクスクスと笑った。
「ま、仲良くやってよ。明日、私はいないんだから。ハリーもロンの家だし、大人気ないことしても良いけど、帰って来たら家が破壊されてた、なんてことないようにね」
リリーがジェームズとシリウスをにらみつけた。
そして、その視線を隣に移した。
。具合でも悪い?」
のお皿はあまり手をつけたようには思えないまま、食事が残っていた。
「ううん、大丈夫。あんまりお腹が減ってないだけだと思う」
そうが言うそばから、シリウスは手を伸ばし、のおでこに触れた。
「少し熱いかもな。今日はもう寝なさい」
はその言葉に素直に頷くと、少しおぼつかない足取りで席を立った。
「大丈夫かしら」
「明日、一日様子を見て、酷くなるようなら医者に連れて行こう」
そう両親が話すのをボーッと聞きながら、は上に上がって行った。

次の日、はまだ自分の体が本調子でないと感じながらも、朝は出来るだけいつも通りに振る舞った。
そして、十時ごろ、待ちに待った人が玄関先に現れた。
「セブルス、いらっしゃい!」
のにこにこ顔とは反対にシリウスとジェームズは不敵な笑いを浮かべて出迎えた。
リーマスはあまり興味なさそうだった。
「ルーピン、夕食前に作る。すぐに飲みたまえ」
はいはい、とリーマスは苦笑して返事をした。
そして、すぐスネイプはと一緒にある一部屋にこもってしまった。
お昼前には出てくると言われたので、飢え死にの心配はなさそうだった。
「それにしたって、スネイプのやつ・・・・・」
シリウスが憎々しげに言った。
「よくスネイプのやつから奪えたね、シリウス。てっきりはスネイプの方が好きなのかと、僕はそう思ってたよ」
ジェームズが茶化すように言った。
「スネイプより俺の方が数万倍良い男さ」
「ごめん、どこが?
自信満々で言い切るシリウスにリーマスが突っ込んだ。
「自惚れてるところよ」
がそう言うと、ジェームズとリーマスは大笑いした。
「娘にそう思われてたら終りだね、シリウス」
ジェームズが息も絶え絶えに言った。
すると、シリウスがニヤリと笑って言った。
「俺とお前が一心同体ならば、お前も自惚れてるってことだ」
「あ、そうだね」
シリウスの言葉にリーマスは納得した。
「そうなの?」
がリーマスに聞いた。
「うん」
リーマスはジェームズの反応を楽しむように言った。
「リリーが可哀想」
がそう言うとシリウスとリーマスが大笑いした。
「リリーが可哀想だって!おい、ジェームズ、聞いたか?」
ハハハッと笑うシリウスにジェームズはふくれっ面をした。
「リリーは僕と結婚できて幸せのはずさ」
すると今度は、シリウスとリーマスとまでもが大笑いした。
「もう、どこが笑いのツボなんだよ?――解毒剤、作り終ったみたいだ」
そういうジェームズの目線の先には仲良くスネイプと話すの姿があった。

シリウスはスネイプとの間に割り込むらしく、急いでそちらに向かった。
「あ、面白そう」
ジェームズもニコニコとシリウスに従った。
残ったリーマスは二人の姿にため息をつくと、に向き直った。
「あんな大人にならないでね」
なれないよ、なかなか」
はクスクスと笑った。

すると、いきなりリーマスがのおでこに手をくっつけた。
「少し、顔色悪い気がしてね」
「大丈夫よ」
「でも、少し熱い」
リーマスは手を離した後、心配そうに言った。
「少し寝た方が、良いんじゃないのかい?」
「大丈夫だってば。顔色ならリーマスの方が悪いわ」
が尚も心配そうなリーマスに少し怒った口調で言った。
「そう、それなら良いけど」
「お昼ご飯よ」
ちょうどタイミング良く、が二人を呼んだので、その話は打ち切りになった。

昼食も食べ終り、スネイプはリーマスのために魔法薬を作るので、また部屋にこもった。
そして、シリウスとジェームズは急用が入ったので仕事に向かって家にはいない。
も解毒剤を提出するために、今さっき家を出て行った。
「ねぇ、セブルス、僕たちも中に入れてよ」
リーマスはスネイプがこもった部屋をノックした。
すると、不機嫌そうなスネイプの顔が現れた。
「何のようだ」
「何か手伝えることはないかなって」
リーマスが朗らかに言った。
「ない」
スネイプはそっけなくそう言うと、ドアを閉めようとしたが、リーマスの足がドアに挟まって閉まらない。
「なんのつもりだ」
「入れてよ」
スネイプもリーマスの笑みには勝てなかったらしく、諦めて二人を中に入れた。
そのとき、はスネイプが自分の顔を少し長く見つめていたと感じた。
「ルーピン、お前の目的はこれか」
スネイプが呟いた。
「うん、正解。頼んだよ」
はチンプンカンプンで大人たちの会話を聞いていた。
そして、スネイプはもう一つ大鍋を準備すると、火を焚いた。
そのまま数十分、居心地の悪い気持ちでスネイプの行動を見つめていたは少し疲れてきた。
「少し横になるかい?」
リーマスがの異変を察して言った。
「大丈夫」
「ブラック」
がリーマスにそう答えたのと、スネイプがの前にゴブレットを差し出したのは同時だった。
「飲め。夏バテならこれだけで治る」
スネイプは有無を言わさず、にゴブレットを握らせた。
「脱狼薬を煎じていたんじゃないんですか?」
「顔色が悪いまま、ここに居られても迷惑だ」
は何故、スネイプか自分のために魔法薬を作ってくれるのか、不思議だったが、そのまま素直にゴブレットに口をつけた。
「全て飲みたまえ。すぐに効くだろう」
スネイプはそう言って、「脱狼薬」の煎じに戻った。
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セブルス寄り、頑張ったつもりです;;笑
<update:2006.07.22>