大きな森の真ん中に綺麗な湖があって、湖の水は澄んいて、魚たちが幸せそうに泳いた。その湖の回りには白い小さな花がたくさん咲いていた。その花は「眠り草」と言った。
はパッチリと目を覚ました。もう朝の八時だった。は急いで着替えてリビングに行くと、リビングにはシリウスもジェームズももリリーもいた。そして、後ろからハリーも現れた。
「おはよう」
「おはよう」
口々にそう言った。
の今日の予定は何もなかった。
「今日、ハリー暇?久しぶりに遊ばない?」
朝ごはんを食べながら、が聞いた。
「ハリーは仕事、ないはずよ。仕事が一段落したって言ってたもの」リリーがハリーを見た。
「そう?でも、どこにも行きたくないな。今日は久しぶりに家でゆっくりしてたいから」
ハリーがそう言うと、ジェームズがくってかかった。
「女の子の頼みは聞かないと、ハリー」
ハリーは肩をすくめた。
「父さん、早く仕事行かないと遅刻じゃないの?」ハリーが時計を指すと、時計はちょうど八時半をうったところだった。
「シリウスも遅刻だよ!」ジェームズは「ごちそうさま」と叫ぶと、シリウスと連れだって部屋に準備をしに行った。
「まったく。じゃあ、、後片付けはよろしくね」もリリーもそう言って準備に戻った。
「ねえ、ハリー。どうしてもダメ?」
がジッと見つめると、ハリーはとうとう折れた。
「わかったよ。でも、どこに行くの?人が賑わうところなら僕――」
「そんなところじゃないわ。もっと神秘的なところ。きっとハリーも気に入るわ」
は自信たっぷりにそう言うと、食べ終った食器を台所に運び、勝手に皿洗いするように魔法をかけた。
「ハリー、ちょっと待ってね。どうせならお弁当持って行きたいから。その間、出かける準備しててね」
はリビングに向かってそう叫びと、ハリーが「わかった」と言うのが聞こえた。
「」
「あ、ママ」
は急に台所に現れた人影に驚いたが、とわかった瞬間に顔が綻んだ。
「ハリーから聞いたわよ。『人が賑わない、神秘的なところ』に行くんでしょう?――私が昔、教えてあげた場所ね?」の顔は興味津々といった顔だ。
「悪い?」
の顔は少し赤い。
「悪くない」がクスクスと笑った。
「今の時期なら綺麗に咲いているわよ。くれぐれもハリーを誘惑しないように」
「誰がするか!」
が大声を出すと、は笑いながら「いってきます」と言った。
「ママのバカ」
の顔はまだ赤い。
「、準備出来た?」
今度はハリーが台所に現れた。はとっさに赤い顔を隠すため、ハリーから顔を背けた。
しかし、ハリーの観察力は侮れなかった。
「顔が赤いよ。と一体何を話していたんだい?」
叫んだの丸聞え、とハリーは洗い終った食器をいつもの場所に戻し始めた。
「なんでもないもん」
はブツブツと言うと、パンを広げた。
「サンドウィッチの中身は何がいい?」
「任せる。のおすすめで」
ハリーは大して興味がないのか、皿を片付け終ると、の隣に立った。
「準備終わったよ。何か手伝う?」
「ううん、大丈夫。ゆっくりしてて」
はにっこりと笑い、ハリーを台所から追い出した。
十分もした頃、誰もいない家を二人は出発した。
「で」ハリーはの隣を歩きながら言った。
「一体どこに行くのか教えてよ」
「内緒」
は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「でも、は方向音痴だろう?ちゃんと着けるの?」
ハリーのその言葉には頬を膨らませた。
「着けますよ!ハリーに心配されなくったって」
失礼な人、とはぶつくさ言いながらズンズン前へ進んだ。
「冗談だってば」
ハリーも小走りでの後を追った。
大きな森の真ん中に綺麗な湖があって、湖の水は澄んいて、魚たちが幸せそうに泳いた。その湖の回りには白い小さな花がたくさん咲いていた。その花は「眠り草」と言った。
二人が着いたところは確かにの言うとおり、神秘的なところだった。
緑の生い茂った森の中に澄んだ大きな湖。その回りには白い花畑。まるでメルヘンだった。
「へえ」
ハリーは感心したように辺りを見回した。
「きれいなところだね」
「でしょ?」は得意気になった。
「小さい頃、ママが教えてくれたの」
「はこういうの好きそう」
ハリーは自然に笑顔になった。
「私だって好きだもん」はぼそりと言った。
「知ってる」
ハリーはを見てにっこりと笑った。
ハリーとは湖を目の前に座り、お弁当を広げた。
「中身、卵にしたんだ」ハリーはサンドウィッチを一口カジって言った。
「他のもちゃんとあるわ。卵、嫌いだったっけ?」
「嫌いじゃない。だけどサンドウィッチの定番だから。なら得体の知れないものを詰め込むかなって思っただけ」
はハリーを睨んだ。
「何よ、それ」
「そのままの意味」
ハリーはクスクス笑った。
お昼を食べ終わって、ハリーはその場に寝転がった。
「ねえ、ハリー」
はそんなハリーの顔を覗きこんだ。
「ハリーの回りに広がってる白い花、眠り草って言うんだよ。なんでそんな名前だか知ってる?」
「睡眠薬の成分にでもなるんじゃない?」
ハリーはパッと思い付いたことを口にした。
「夢がないのね」が呆れて言った。
「もっと神秘的なお話があるのよ、昔から伝わる話がね――でも話してあげない。女の子だけの秘密の話だってママが言ってたから」
「そこまで言ってお預けか」ハリーは溜め息をついた。
「でもね、これだけは教えてあげる。眠り草に囲まれて眠ると、幸せになるんだって」
はハリーの反応をよく見ようと顔を覗きこんだ。しかし、ハリーの顔にはあまり変化がない。
「僕はここで眠る必要はないよ。隣にがいることで幸せだから」
サラリとそう言ってハリーは目をつぶった。の顔はまた赤い。
「それでも寝るんじゃない」
「寝ないよ。瞑想にふけるだけ」
はクスリと笑って、ハリーの隣に横になった。
まだまだ日は高い。
ハリーと甘甘デート?笑
<update:2006.08.23>