「ミスコン?」
の言葉にリビングは騒然となった。
訳は数分前、浮かない顔で帰ってきただった。
シリウスが心配そうに聞くと、は総勢六人――シリウス、、ジェームズ、ハリー、リリー、リーマス――が聞く中で呟いた。
「魔法省のミスコンに出てくれませんかって誘いを受けたの」
「断わったのか?」
シリウスがの顔を覗き込んだ。
「ううん、まだ返事は出してない。なんだか断るのが難しくて・・・・・」
「ねぇ、まさか大臣に言われたんじゃないでしょうね?」
リリーが問いつめるように聞いた。
「なんでわかるの?」
はキョトンとリリーを見つめかえした。
「魔法省のミスコンって大臣を中心とする、周囲が開催するのよ?まさか、知らなかったとはね」
リリーが頭を抱えこんだ。
「はミスコンに出たいのかい?」
ジェームズが聞いた。
「わかんない」
は数秒考えてから言った。
「なんだい、その『わかんない』って」
リーマスが苦笑をもらした。
「だって・・・・・」
はごにょごにょと何かを言ったが、理解出来なかった。
「はどう思うんだい?」
ジェームズが突然に問いかけた。
「私?」
はびっくりしてジェームズをまじまじと見た。
「そう、君だよ。この家には君しかいないよ」
ジェームズがクスクスと笑った。
「えー・・・・・私は別にどっちでも良いと思うけど・・・・・」
は困ってシリウスを見た。
「リリーも声がかかったんじゃないのか?」
シリウスが言った。
「えぇ、昨日のお昼、わざわざ呼び出されたわ。でも、断わった。私のガラじゃないしね」
リリーはそう言ってニッコリ笑った。
「母さん、出ればよかったのに」
ハリーがボソリと言った。
「どうしてだい?ハリー」
リーマスは不思議そうにハリーを見た。
「だって、母さんが出たら一位じゃないか、きっと。それに、父さんは綺麗な母さんが好きだから、もう少し大人しくなるかもしれない」
ハリーの理論は良くわからなかったが、リリーは考え深げな声を出した。
「私、リリーが出るなら一緒に出たい」
突然、がそう言った。
「じゃあ、一緒に出ましょうか」
リリーも何だかやる気になっているようだった。
シリウスもジェームズもリーマスもニッコリ笑ってそれを眺めている。
「じゃあ早速伝えてこようかしら」
リリーはニコニコと、と連れだって席を離れた。
「パパ、良いの?」
はきっと反対すると思っていたシリウスに確かめた。
「あぁ。ミスコンに出るのは本人の意志次第だ」
シリウスは優雅に長い指を組んだ。
「でも、ママを好きになっちゃう人がいるかも――」
は今更になって、ミスコンに反対したくなった。
「、はシリウス一筋だし、君のことだってこれからも愛するよ」
リーマスがの気持ちを悟って言った。
「でも、父さんも反対しないの?」
ハリーは心底不思議そうな顔をしている。
「リリーとは大丈夫だよ。これからもずっと君たちだけの母親だよ」
ジェームズが優しく言った。
「でも、どうしてママもリリーもミスコンに出る気になったの?」
が三人の大人の顔を見て言った。
「んー、それには深い訳があってね」
ジェームズが苦笑した。
「シリウスもジェームズも卒業したらすぐにとリリーと結婚してしまったんだ」
リーマスがジェームズの後を次いだ。
「そして、当時、ヴォルデモート卿の暗黒時代だった。しかし二人はすぐに君たちを産んだ。それで、その次の年、ヴォルデモート卿は姿を消した。――もちろん、それは君たちの活躍でもある――その次は子育てに負われた。そして、君たちがホグワーツに入学したら二人はすぐに仕事に復帰した」
はリーマスが何を言いたいのか分からずに、そのままリーマスを見つめた。
「二人とも良く理解出来てないみたい」
リーマスが苦笑してシリウスとジェームズを見た。
シリウスがをじっと見つめて言った。
「は好きな異性が近くにいたら何をしたい?」
「一緒にいたい」
は即答したが、どうやらシリウスたちが求めた答えとは違っていたようだった。
「そうじゃなくて、可愛く見せたいとか、自分を良く見せたいだろう?」
リーマスが言った。
はコクリと頷き、「だから?」と先を聞いた。
「もリリーもそれと同じさ。今までずっと綺麗になることが出来なかった。忙しくてね。それに学生時代なんかもっての他。でも、ミスコンに出たら、綺麗に見せてくれるだろう?女性が綺麗になりたい、と思う欲望は当たり前さ」
ジェームズが微笑みながらそう言った。
は納得したが、どうやらハリーは納得していないようだった。
「でも父さん。好きな異性って父さんとシリウスのことでしょう?今更綺麗に見せる必要があるの?」
「ハリー、僕は学生時代から良くリリーを見てきた。それなりに彼女のことは分かっているつもりだよ」
ジェームズがそう言って、ミスコンの話を切り上げた。
夕方、魔法省から二人が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
はタタッと玄関まで駆けて行った。
「珍しく出迎えてくれるのね」
が苦笑してに荷物を預けた。
「ミスコン、出れそう?」
が聞いた。
「いいえ、やっぱりやめたわ」
リリーが笑顔でそう言った。
「パパ!ママがミスコンに出るの、やめたって!」
はびっくりしてリビングに向かって叫んだ。
「、うるさいよ」
シリウスがたしなめるようにそう言って、とリリーに向き直った。
「出なくて良いのか?」
「えぇ。だって、わかったんだもん」
「何が?」とハリーがリリーに聞いた。
「やっぱり綺麗になれるのは、お化粧とかするよりもみんなと一緒にいた方が綺麗になれるってこと」
がそう言うと、シリウスが「自惚れて良いのか?」と聞いた。
しかし、はクスクスと笑うばかりだった。
「でも、確かにがと一緒にいると美しく感じるよ」
リーマスが妙にと、を強調した。
「あら、本当?ありがと、リーマス」
も調子に乗りながら言った。
「でも、仕方がないのよ。この子、私のことを笑わせてばかりなんですもの」
がそう言うと、シリウスもジェームズもハリーもリーマスも、そしてリリーも大笑いした。
膨れっ面なのはだけだった。
ママさんとリリーはどっちの方が美しいのでしょう?
<update:2006.07.01>