「ママ、見て!見て!雪だよ!」
ある日の朝、が目覚めると一面雪景色だった。
は急いで着替え、庭に出ていった。
すると、の薄着を心配したのかが上着を持って庭に出てきた。
「わかったから。そんな薄着じゃ風邪をひくでしょう?」
そう言って屈んでに上着を着せた。
相変わらずは興奮気味だ。
一人で騒いでいた。
するとの騒ぎを聞き付けたのかシリウスとリリーが庭に現れた。
「嬉しそうね、は」
リリーがクスクスと笑いながらシリウスに言った。
シリウスは呆れてを見ていた。
「嬉しいっていうより、興奮状態だろ、あれは」
「あら、シリウス。案外じじくさいこと言うのね」
が言った。
「楽しんでいるだけ良いじゃない」
「雪なんか毎年降ってるだろうが」
小馬鹿にしたようなの態度にシリウスは噛みついた。
「シリウスには分からないよねー」
が同意を求めるようにを見た。
もそう思ったのか、それともただ面白そうだからか、にっこりと頷いた。
「ほーら」
が勝ち誇ったようにシリウスを見た。
シリウスはちょっと不機嫌そうな顔をしたが、の喜びように妥協することに決めたのかヤレヤレと肩をすくめた。
するとその時聞き慣れた声が庭に響いた。
「リリー!」
ジェームズは勢い良くリリーに抱きついた。
「ちょっとジェームズ?どういうつもり?」
その瞬間、ジェームズの喉にはリリーの杖が向けられていた。
ジェームズは降参とばかりに両手を挙げた。
「冗談だよ、冗談。ハリーも起きたから下に降りていったんだけど誰も居なくて庭に行ってみたら君が立っているからさ。いやぁ、君が出している雰囲気にヤられてしまったんだよ、リリー」
「あら、なんならジェームズ、そのままヤられる?」
リリーは不敵に笑った。
「ハリー、おいで」
はこのあと、二人の痴話喧嘩がまだまだ続きそうだな、と予想して、庭に出ようか、出まいか悩んでいるハリーの名前を呼んで雪の上にしゃがんだ。
ハリーと視線を合わせるためだ。
「ハリーは雪は好き?」
はハリーを抱き上げた。
「普通かな」
ハリーもに抱き上げられて嬉しいのか顔はにこにこ笑って、ご機嫌そうだ。
すると、もちろん子供の頃は独占欲が強いので、はハリーに負けじとシリウスにじゃれついた。
「おいおい、。ハリーに嫉妬するなよ」
シリウスはの気持ちなんてお見通し、とばかりに笑っての頭を撫でた。
「嫉妬ってなぁに?」
「苦い思いだよ」
シリウスは誤魔化した。
「魔法薬よりも苦いの?」
しかし、そんな適当なことを言われたって好奇心旺盛なの好奇心を抑えられるはずはなかった。
「そうかもな」
シリウスはの純粋な心に脱帽した。
そして、少し疲れたように庭に置いてある椅子に座ろうとした。
しかし、はそれを許さない、とばかりにシリウスに向かって小さな小さな雪玉を投げた。
「パパの負け!」
は為てやった、と得意満面だ。
シリウスはそれを見て悪戯心が芽生えたのか、と同じくらいの雪玉を軽くに向かって投げた。
「痛い!」
は叫んだ。
するとその声を聞き付けたのかジェームズが片手ほどの大きさにした雪玉をシリウスに投げつけた。
「ジェームズ!」
シリウスはそのジェームズの行動は予想外だったのでそのまままともに雪玉に当たってしまった。
「シリウスの負け!」
ジェームズは悪戯っぽく笑いながらシリウスにそう言った。
「お前がそう言っても似合わないだろ!」
シリウスはジェームズに向かって雪玉を投げつけた。
しかし、ジェームズはヒラリとかわすとシリウスを少し見下したように見た。
するとそのとき、思わぬところから雪玉がジェームズに向かって飛んできた。
ハリーからの贈り物だ。
「ハリー!狙うんだったらシリウスだよ」
ジェームズはそう叫んだ。
「だって母さんは父さんに投げろって言ったよ」
ハリーはポカンとしてジェームズを見つめた。
その隣でリリーとがニヤニヤしている。
「残念だな、ジェームズ」
シリウスは味方のいないジェームズを笑った。
「残念なのは君の方だなあ、シリウス。僕にはという可愛い娘がいるからね」
ジェームズはそう言うとを抱き上げた。
はかまってもらえる、と感じたのか嬉しそうに笑った。
「はシリウスより僕の方が好きだもんねー」
ジェームズはに笑いかけた。
「ねー」
も嬉しそうにジェームズの顔に触れるとご機嫌で笑った。
もちろん、シリウスは自分の娘を取られて満足なわけではない。
シリウスはハリーを自分の元に呼んで抱き上げた。
「ハリーはジェームズと俺とだったら俺の方が好きだってさ」
ハリーは一言もそんなことを言っていないのにシリウスは勝手につらつらと言葉を並べた。
二人の父親は自分の子供と相手の子供を見比べた。
また言い争いが続くと思ったその矢先、ハリーとは母親の手によって救い出された。
「せっかく楽しく遊んでたのに子供たちの邪魔はしないで!」
女は強し、と言うようにジェームズとシリウスはしおらしくなってしまった。
いつの間にか太陽は頭の上くらいまで上っていて、それが不運のきっかけになったのかもしれない。
両親たちが室内に引っ込んだ後もハリーとは遊んでいた。
すると突然、ズルズルっと音がしたと思うと、の頭の上からドバドバッと雪が落ちてきた。
幸いなことに怪我はなさそうだが、すっかり視界をさえぎられてしまったはパニックになり、雪の中で泣き始めた。
数分後、自分のすすりなく声しか聞こえなかった雪の中にシリウスたちの声が聞こえてきた。
「!」
はその声を聞いて安心したのか、また泣き出した。
その泣き声を頼りにシリウスはを見付だした。
の体はすっかり冷えていた。
「怖かったな」
雪の中からを持ち上げて抱き締めた体は冷たい。
シリウスはとリリーにに暖かい物でも食べさせろ、と言うとの頭に付いていた雪を落とした。
「ハリー、教えてくれてありがとう」
ジェームズはシリウスの優しい父親の雰囲気に微笑みながらハリーを抱き寄せた。
ハリーがいなかったらはまだ雪の中だろう。
室内に入ってがシリウスと暖炉の前で暖まっているとがスープを運んできてくれた。
「泣きやんだようね」
がスープをに与えながら言った。
「まあな。いつまでも泣かれていたらこっちが困るさ」
「そのわりにはちゃんとをあやしてくれたじゃない」
は照れ隠しをするシリウスを笑った。
「ママ、もっと!」
「はいはい」
はちょこんとシリウスの膝の上に乗りながらの袖を引っ張った。
彼女の顔は暖かい家族に囲まれて嬉しそうに笑っていた。
しかし、寒さのせいで鼻だけはまだ赤い。
お題初作品です。少し甘すぎた気もします・・・笑
<update:2006.01.18>