嫌い
嫌いなものは嫌い。好きなものは好き。楽しいことは好きでも、怖いことは嫌い。そんな典型的な性格で、の場合、もう少し癖が強かった。
「魔法史は嫌いよ」
は突然、ルーピンにそう言った。ただ今、ルーピンの私室ではお茶を飲んでいた。ハリーとロンは宿題に追われそれどころではなく、ハーマイオニーは有り難く、片や迷惑にも彼らの宿題をチェックしている。は一人、談話室を抜け出してここまで来ていたのだった。
「どうしたんだい、突然」ルーピンが当たり前とも思えるような質問をに返した。
「リーマスの顔見て思い出したの。リーマスは魔法薬が嫌いだったなって」
「魔法薬を嫌いなわけではない。ただ、苦手なだけだよ、
ルーピンはやんわりと否定した。は肩をすくめる。
「それにしても、どうして魔法薬と魔法史が繋がるんだい?」
「さぁ?」
はクスクス笑って、紅茶を一口飲んだ。
「リーマスは私にどんな子になってほしかった?」至極、真面目な顔で突然が聞いた。
「うーん・・・・・」ルーピンはしばらく唸った後、茶目っ気たっぷりに言った。
「シリウスみたいに悪巧みばかりしない子だね」
「パパとジェームズはイタズラばかりしていたんでしょう?それなのに頭も良いし。だけど、少し自惚れたところがありました、ってね」は自分の父親を誉めると思いきや、ズバリと痛いところをついた。
「まぁ、否定はしないけど」ルーピンもクスリと笑った。
「それにスネイプには容赦なかったもんね、今でもそうだけど」
騎士団で出入りしているスネイプに食ってかかるシリウスの姿は夏休み中、いやというほど見ていた。
「彼にはそうだけど、シリウスは自分の内に入った人にはとても優しいんだ、
「どういうこと?」は首を傾げた。
「身内とか、親しい友人にはとても優しいだろう?」ルーピンは自分のカップに入った紅茶を飲みながら、に少し考える時間を与えた。
「パパの親しい友人はジェームズとリーマスとリリーくらいしか見たことないわ」
「かつてはその中にもう一人いた。今、彼はヴォルデモート側の人間だ」ルーピンは目を細めた。
「――シリウスは騎士団の人間でさえ、踏み込ませない領域があるのは知ってるだろう?」
「なんとなくなら」は少し考えた。
「リーマスはパパの領域に踏み込んだことがあるの?」
「ある、と胸を張って答えられる自信はないけどね」ルーピンとはお互いを見て笑った。
「シリウスは、良い人だよ。私を仲間としてちゃんと見てくれた」
はその言葉の意味がわからなくて首を傾げていると、ルーピンが笑いながら、どこか恥ずかしそうにに教えた。
「一年生のとき、私はダンブルドアの言い付け――良い子にしているという約束をどうやら意味を取り違えていたらしく、自分の意見も言えないほど恐々と生活していた。当時の私は人狼ということで、目立ってはいけないと思い込んでいた――」
「リーマスが人狼であろうが、人魚であろうが、吸血鬼であろうが、私は気にしないわ。こんなに良い人見たことないもの」
がルーピンのいつもの自信消失癖に思わず口をはさんだ。
「――まったく、君たち親子は似ているんだか、いないんだかわからないね」ルーピンがクスクスと笑った。
「まさしく、今の君と同じようにシリウスも私にそう言った。私はシリウスの気持ちも考えず、口で言うのは簡単だ、と返した。そのときだよ、シリウスと私は初めてけんかをした――後にジェームズから聞いた話だと、シリウスはこのままでは私がダメになると考えた上での行為だったらしい」
意外にも自分の父親にこんな面があったことを、は知らなかった。
「仲直りした?」が聞いた。
「もちろん。無二の親友だ」
「無二の悪友とも言う」がルーピンに突っ込むと、ルーピンは苦笑した。
「たしかに、パパはジェームズとかリーマス絡みだと、とても周りが見えているようには思えないわね。スネイプと大違い」が納得した表情で頷いた。
「君もどこか、それに似たところがあるのはわかってるかい?」ルーピンはズバリとに突っ込んだ。
「ハリーやロン、ハーマイオニーのことになると、周りをきちんと見ているようには思えない。マルフォイ君とは大違いだ」ルーピンはの台詞を真似て言った。
「だって、私のパパはシリウス・ブラックなんだもん」はふくれた。彼と、かなりの割合でが似ているのは周囲も重々承知だった。
「でも、私はパパと違って、スネイプがそこまで悪い人だとは思わないわ」
どうしてだい?と、ルーピンは不思議な表情を向けた。
「ママはスネイプを信用しているし、スネイプは、人狼を嫌ってリーマスも嫌いなのにも関わらず、リーマスに魔法薬を煎じてくれた。それに、一年生のとき、さりげなくハリーを守っていたわ。そこまで悪い人だとは思えないじゃない?」
ルーピンはクスリと笑った。
「まったく、君らしい考え方だ」
「今の話、パパには内緒ね?」は唇に人差し指を当てて、少しバツが悪そうにルーピンを見た。
「シリウスがそれを聞いたら、きっと唖然とするね」ルーピンが笑った。
「ママが悲しまないなら大丈夫」はルーピンにVサインしてみせた。
「本当にが好きだね、は」ルーピンはなんだか楽しんでいる口調で言った。
「好きよ」は間髪入れずにルーピンに返した。ルーピンは柔らかい微笑みを浮かべている。
「シリウスとジェームズだったらどっちが好きだい?」
「リーマスが好き」
はにこにこと屈託のない笑顔でルーピンを見つめた。ルーピンだって、悪い気はしないが、答えにはなってない。
「私はシリウスかジェームズか、と聞いたんだけどな、」ルーピンが苦笑しながら言った。
「選択肢にはいつもリーマスの名前が入らないんだもん。二者択一なんてケチだと思うでしょう?選択肢はたくさんなくちゃ」
ね、とルーピンに同意を求めるはしてやったり、という表情だった。
リーマスが一番好きよ
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シリウスドリのつもりが、いつの間にかリーマスドリへ・・・;;
<update:2007.01.17>