「シリウス、明日でハリーが五歳の誕生日迎えるんだよ?知ってた?」
ニヤニヤと嬉しそうに、半ば怪しく笑うジェームズはシリウスの肩を叩いた。
「もちろん」
シリウスはサラリとそう言った。
「リーマスも呼ぶだろう?」
「あぁ、もちろん。リーマスだってぼくらの家族同然だ。それに、が喜ぶよ」
ジェームズがクスクス笑った。
すると部屋の外からの泣き声が聞こえた。
どうやらハリーとケンカしたらしい。
ジェームズとシリウスは慌てて外に飛び出した。
「一体、どうしたんだい?」
ジェームズは泣いているを抱き上げた。
しかし、は泣くばかりで何も答えない。
シリウスはハリーの頭を撫でて言った。
「ハリー。君は明日から五歳になる、より一つ年上だ。だから、兄らしく――と言っても血は繋がってないが――の面倒を見てあげなさい」
すると、ハリーはコクリと頷いた。
「僕、頑張るよ」
ジェームズはハリーに微笑むと、泣いているをあやしながら、ハリーとシリウスと一緒にリビングに降りて行った。
とハリーのケンカにはどちらが悪いかなど決める必要もなかったし、原因を聞かなくとも、次の日には仲直りしていた。
「あら、または泣いているの?」
は呆れながらも泣いているをジェームズから受けとると、数秒で泣き止ましてしまった。
「流石、」
ジェームズが茶化すように言った。
「でも、女の子は父親を好きになるって聞いたんだけどな。男の子は母親を好きになるのはハリー見ていれば一目瞭然だけど――」
ジェームズがブツブツと独り言を言う隣でリリーがシリウスに言った。
「リーマスを明日のハリーの誕生日に招いたの。今、返事がきて明日、来るそうよ」
「が喜ぶよ」
シリウスが天を仰ぐように言った。
ジェームズの独り言がたとえ事実だとしても、がなついているのはシリウスよりリーマスだった。
「でも、がスネイプを招こうとしていたの。一応、止めておいたけれど、それでよかったでしょう?」
リリーはチラリととじゃれあっているを見るとため息をついた。
「がスネイプと結婚しなくて本当によかったわ」
シリウスはリリーの言葉に曖昧に笑うとのところに逃げていった。
シリウスだってが自分のものになってよかったと心底、思っていた。
次の日、ハリーはプレゼントに囲まれていた。
知り合いからたくさんのプレゼントが贈られたのだ。
「よかったな、ハリー」
ジェームズが言った。
「おめでとう」
シリウスはハリーの頭を撫でた。
ハリーは自慢げにジェームズとシリウスにもらったプレゼントを見せていった。
「入っていいかな」
するとそのとき、をだっこしたリーマスが部屋の前に立っていた。
「もちろん」
ジェームズはリーマスを招き入れた。
「ハリー、誕生日おめでとう」
リーマスはを抱えたまましゃがむと、巨大な高級板チョコを差し出した。
「ありがとう、リーマス」
ハリーはリーマスの手からもらい受けた。
するとその様子をじっと見ていたが言った。
「私のはないの?」
は大きな目でリーマスをにらんだ。
「が五歳になったらリーマスからもらえるよ」
ジェームズが苦笑して言った。
「今欲しい」
はとてつもなく不満そうだ。
「でも今は蛙チョコくらいしか持っていないんだ」
リーマスがすまなそうに言った。
「、リーマスを困らすな」
シリウスがをたしなめた。
はプイッと横を向き、リーマスの手から離れると、駆け足で部屋を出ていった。
「気にするな、リーマス。は最近ワガママだから。そろそろ我慢を学ばせないといけないんだ」
シリウスが肩をすくませ、言った。
「女の子は独占感が強いから」
ジェームズが茶化した。
「は似だから大人になったら男には困らなそうだね。選びほうだいだよ」
「はちゃんとしっかりした男を選ぶさ」
シリウスはジェームズを軽くにらんで、さっき、部屋を飛び出したを探しに行った。
「男が出来て一番悲しむのは自分だろうに」
ジェームズはシリウスの背中にそう呟いてクスクス笑った。
「リーマスもに男が出来たら悲しむのかい?」
ジェームズがふと、リーマスに問いかけた。
「さぁ、わからない。でも、出来るだけ祝福してあげたいとは思うよ。それに、のことについて、僕がつべこべ言えるとは思えないし」
リーマスがチラリとドアを見た。
「それは半獣を気にしているのかい?それとも半獣だからの名付け親にはふさわしくない、と?」
ジェームズはため息をつきながら言った。
「リーマス、学生時代に何度も言っただろう?僕たちは君を親友だと思ってる。今だって君は家族同然だ。だから君が話そうと思う日まで子どもたちには人狼とは言わないと約束した――どっちにしろ、まだ理解は出来ないが――それに、シリウスもも君が信頼出来るからの名付け親を頼んだ。それを君は承諾した。名付け親は名ばかりのものじゃないと僕は思うよ、リーマス」
ジェームズは気楽にポンとリーマスの肩を叩き、ハリーとリーマスと一緒にリビングに降りてきた。
すると、ソファーに座るの膝の上にはがご機嫌な様子で座っていた。
隣にはシリウスが座っている。
リリーは逆隣だ。
「あら、ハリーのプレゼント開けはもう終わったの?」
リリーが聞いた。
「いや。お腹が空いたから昼食を食べにきただけだよ」
ジェームズはソファーの膝掛け部分に座った。
「ハリー、おいで」
リリーはハリーを膝の上に乗せた。
「食べたかったら普通は準備すると思うけど?」
ジェームズはリリーの笑みに寒気を覚えた。
「シリウス、君と僕は一心同体だ!だから君も準備する義務があるんだ!」
そしてシリウスはジェームズのおかしな理論により、拉致された。
「さてと、私も準備してくるわ」
リリーはジェームズとシリウスのアタフタとした様子を見て言った。
「、ハリーのこともお願いね。準備が出来たら呼ぶわ」
リリーはもう一番二人の姿を見てため息をついた。
あの二人の相手は子供の相手より大変だ。
「あのね、リーマス。大人になったら、私がリーマスのお嫁さんになるよ」
リーマスはいきなりのことにマジマジとを見た。
「あんまり気にしないで」
がの頭を撫でた。
「リーマスのことが好きなのよ、は」
「でも、僕ものことは好きだよ」
リーマスは自分でもいつの間にかそう言っていた。
は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になって言った。
「がもし理解できたら嬉しがるわ。やっぱりリーマスがの名付け親でよかったわ」
はハリーからリーマスがハリーにあげた板チョコを分けてもらって食べていた。
自分的には凹むリーマス可愛い。
<update:2006.06.23>