ある日の午後、のもとに一通の手紙が届いた。
それはセドリック・ディゴリーからのもので、今週の土曜日にホグズミートに行かないか、とのお誘いの手紙だった。
はその手紙をたたんでポケットに入れると、そのままリビングに降りて行った。
こんな手紙をもらったのは初めてで、どうしたら良いか分からなかったし、第一、ハリーと別行動するのをシリウスたちが許してくれるか心配になった。
リビングではジェームズとシリウスがチェスをしていた。
「やぁ、」
ジェームズは盤から目を話さずにに声をかけた。
「ママはどこにいるの?」
はキョロキョロと見回した。
「庭に行くって言ってた。母さんと庭の掃除するって」
ハリーはジェームズとシリウスの試合の観戦から目をあげて、言った。
は「ありがとう」と言い、庭に向かった。
「ママ!リリー!」
が来たとき、二人は掃除ではなく、ゆったりとくつろいでいた。
「なに?」
が機嫌良く言った。
「あのね、パパたちにどうしても聞かれたくない話があるの・・・・・」
がモジモジとそう言うと、リリーは頼もしく笑った。
「いいわ、じゃあ男陣を追い出しましょう。掃除の手伝いもしなくて怒ってたところだし、夕食の材料も買わないといけないからね」
そういうと、リリーは何故か嬉しそうに室内に向かった。
がため息半分に言った。
「さぁ、私たちも中に入りましょう。彼らがいなくなったら話を聞くわ」
しかし、室内に入ったとき、すでに男陣の姿はなかった。
リリーがさっさと追い出したのだろう。
はとリリーに挟まれ、ソファーに座った。
「で、どうしたの?」
少し心配そうな二人に、はおずおずと口を開いた。
「え、なに、、デートなの?」
の話が終ると、が心配損だとでも言うようにクスクスと笑った。
「デートじゃないけど、ママ・・・・・」
良いように勘違いする母親には呆れた。
「でも、男の人と二人っきりなんでしょう?まさしくデートじゃない」
リリーが口をはさんだ。
「そんなこと一言も言われてないけど・・・・・」
は二人に言われて自信がなくなってきたのと、そうだったらいいな、という思いが交差して、声が小さくなった。
「とにかく、相手よ、相手。で、誰なの?」
もリリーもに迫った。
「セドリック・・・・・セドリック・ディゴリー」
が消え入りそうな声で言った。
「ディゴリーって、あの『魔法生物規制管理部』に勤めているエイモス・ディゴリーの息子?」
「多分そうじゃないかしら」
とリリーが顔を見合わせた。
「ねえ、行ってもいいでしょう?」
「そうねぇ・・・・・」
がそういった、ちょうどそのとき、ジェームズたちが帰ってきた。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
リリーが玄関に向かった。
「彼はどんな人なの?」
リリーが迎えに行ったのを確認すると、はまたに話しかけた。
「いい人よ。優しいもの。勉強もときどき教えてくれるし」
「グリフィンドール生なの?」
「ううん、ハッフルパフ生よ。それで、クィディッチチームに入ってるし、ハリーと同じシーカーのポジションなの」
がいきいきと話すのでは思わず笑ってしまった。
「いい人そうね」
「うん。だからね――」
「だめよ」
が先のことを読んで言った。
「シリウスには自分から言いなさい」
は捨て犬のような目で母親を見た。
「そんな目で見ても無駄よ。私は許してあげるけど、シリウスがダメと言ったら諦めなさい」
はきっぱりとそう言った。
「ジェームズが良いって言ったら?」
が母親の顔色をうかがった。
「あぁ、大丈夫よ。その心配はいらないわ。彼はそんなこと言わないから」
サラリとそう言っては指を口に当てた。
黙れ、ということらしい。
「ジェームズ、暇なら材料を取ってきてくれないかしら、食糧庫から」
がそう叫ぶと、ドアの裏からジェームズが現れた。
「我ながらバレないと思ったんだけどな」
ジェームズは反省する様子がない。
「あら。ジェームズ、悪いけどあなたの考えることはお見通しよ。今度やったらリリーに言うから」
「そんな怖い顔しないで。可愛い顔が台無しだよ」
ジェームズは肩をすくめてリビングを出て行った。
はその後ろ姿を見ながら小声で言った。
「私もリリーも出来るだけ応援はするわよ」
は少し気分が明るくなった。
夕食時、いつも通り席につき、いつも通り食事を開始した。
「ハリーのローブ、もうそろそろ新しく仕立て直した方が良いよ、くるぶしが丸見え」
ジェームズが言った。
「あら、本当?今日言ってくれれば良かったのに」
リリーが驚いた顔でまじまじとハリーを見た。
「忘れてたんだ」
ケロリとハリーはそう言って、シリウスを見た。
「そういえば、シリウスがずっと胸騒ぎがするって言ってたよ。買い物している間、ずっと」
は今がチャンスだと、口を開きかけたが、シリウスに先を越されてしまった。
「いや、何かの勘違いだったらしい」
「それが、そうでもないのよね」
しかし、がの方をチラリと見て笑った。
「に何かあったの?」
ジェームズが心配そうな声を出した。
「あったと言えばあったし、ないと言えばないわね」
リリーがクスクス笑いと共に言った。
「一体、何なんだよ」
シリウスがもどかしそうにととリリーを見た。
机の下で、はに足を軽く蹴飛ばされていた。
早く言えということらしい。
「あのね・・・・・」
はオズオズと口を開いた。
ハリーも真剣にを見ている。
「あのね、今日手紙がきたの」
は深呼吸した。
隣でがニヤニヤ笑っているのが見える。
「今週の土曜日に一緒にホグズミートに行きませんかって――・・・・・男の人から」
がそこまで言うと、ジェームズは口も目も全てが大きく開き、シリウスは少し怒った表情でを見て、ハリーはポカンとした表情でを眺めた。
数秒後に三人の叫び声が家中に木霊した。
後の結果は神のみ知る。
セドリックが平和な家族に乱入;;
<update:2006.06.29>