愛してるんだよ、つたわるかい
明日、三月十日が記念すべき良き日になりますように、とは呟いた。マグルが星に願いをかけるのを知っていたは少し真似したくなった。確かに、星に願いをかけると願いが叶うような気がしてくる。
、もう寝なさい」
窓の外を見上げていたの頭をポンポンと軽くたたきながら、シリウスが言った。
「ハリーは?」
「まだ起きてる」ジェームズがの隣に来た。「星が綺麗だね」
「明日は満月じゃないわ」が空を見上げた。
「知ってる」ジェームズがクスリと笑った。
「リーマス、明日何時に来るって?」はシリウスを見上げた。
「十時ごろだ。それまでに家中を飾り付けないと」
「でも、大体の準備は終わってるわよ。今日、とリリーと三人で頑張ったんだから」
が窓際に固まっている三人に近づいて来た。
「この家の男性は役に立たない人ばかりだわ、ねえ、?」
の言葉にコクリと頷いた。確かに思い返せば、今日の準備は大変だった。仕事とは言え、三人もの男手がなくなるのは辛い。
「あぁ、。言ってくれれば飛んで帰ってきたのに」
ジェームズが冗談ともつかぬ口調でそういうと、その言葉を聞きつけたリリーがハリーと並んでソファーに座りながら声を発した。
「そんなに余裕があるのなら、もっと稼いできてほしいくらいね。ねえ、ハリー?」
リリーが嫌味ったらしくそう言うそばで、ハリーが苦笑していた。
「リーマス、明日は喜んでくれるかなぁ」
がポッター家の相変わらずの会話をバックに聞きながら、シリウスとに問いかけた。
「あいつなら喜んでくれるさ」シリウスが言った。
「えぇ、のことはリーマスも大好きよ」も付け足した。
「リーマスってさぁ――」
がチラリとシリウスを見る。ちょっとした考えが、の頭をよぎった。本当にそうだよね、と一人頷く。
「リーマスって、本当に良い人だよね――パパと違って」
こいつ!
聞き捨てならない、とばかりにシリウスはを抱き寄せて、片手で頭をグリグリと撫で回す。髪の毛がぐちゃぐちゃになったが、は気にならなかった。久しぶりのシリウスとのスキンシップで、本音を言うと、ちょっと嬉しかったのだ。
「お前、可愛くねぇぞ」
シリウスが笑いながらそういうと、も笑いながらこう言い返す。
「パパに可愛いって思われなくって結構です」
すると、シリウスは一層激しくの髪をグチャグチャにした。一層が楽しそうに笑う。
「僕も混ぜてー!」
ジェームズも楽しげなの声につられて、彼女に抱きついた。
「お前と抱き合う趣味はねぇ!」
シリウスが抱きついてきたジェームズに言った。彼はから離れまいと、シリウスの腰にまで手を回した。
「僕はと抱き合ってるんだよ。僕にも君と抱き合う趣味はないって」ジェームズがそういうと、のおでこにキスを落とした。
「ジェームズ、くすぐったい」
ちょうどジェームズの飛び跳ねた髪の毛が顔に当たるのか、はクスクスと笑った。シリウスやジェームズからキスされるのには慣れていた。といっても、やリリーにするものとは別の種類だということは、よく理解していた。
「僕は寝ようっと」
突然、呆れたような、楽しそうなハリーの声が、向こうから聞こえ、とリリーがそれぞれに「おやすみ」というのが聞こえた。
「待って、ハリー。私も行く!」
はジェームズを押しのけ、シリウスの腕から飛び出ると、急いで、とリリーに「おやすみ」と言った。
「ハリー、、おやすみ」部屋を出るとき、シリウスとジェームズが声をかけた。ハリーとはにっこり笑うと、二人に「おやすみ」と返した。

次の日、が起きた時間はいつもより三十分ほど早く、すでに起きていたとジェームズは珍しいね、と笑っていた。十時になって、正確にリーマスが家のベルを鳴らした。シリウスは急いで玄関に向かった。ハリーももいち早くリーマスに会いたいがため、シリウスに付いていった。
「誕生日おめでとう、リーマス!」
誰よりも早く、家に上がってきたリーマスにが言った。
「普通は、いらっしゃいだろ、」シリウスが苦笑した。
「一番最初におめでとうって言いたかったの!」
パパには負けないんだから、とが呟いた。

「なあに?」リーマスに名前を呼ばれて、は嬉しそうに顔を上げた。リーマスもクスクスと笑いながらを見ている。
「ありがとう」
パッとの表情が輝いた。ハリーもシリウスもリーマスに「誕生日おめでとう」と告げると、リーマスは一人ひとりに「ありがとう」と答えた。
リビングに行くと、ジェームズももリリーもリーマスに祝いの言葉をかけた。すると、リーマスは必ず、一人ひとりの目を見て感謝の言葉をかけた。
テーブルの上にはとリリーが腕によりをかけて作った芸術的な料理が並び、部屋はが昨日頑張って飾りつけた花や飾りで明るく見えた。
「私なんかのために・・・・・いいのかい?」
リーマスはそうとう驚いたようで、目を丸くしていた。誕生日を迎える彼より、誕生日を祝う彼らの方が楽しんでいるなんて口が裂けても言えない。今日の主役はリーマスなのだ。
「リーマスだから」がにこにこと言った。
「さぁ、料理が冷めないうちに食べて頂戴。ちゃんとケーキもあるのよ」リリーがそう言うと、みんな席についた。毎日使うこのテーブルの席は、いつの間にか自分の席が決まっていた。しかし、は素早くハリーと自分との間にリーマスを座らせると、満足したように笑った。
ってホント、リーマス好きだよね・・・・・」ジェームズがぼやいたその言葉は隣に座ったシリウスにしか聞こえなかった。
そんなこんなで楽しく雑談をしながら食事をするうちに、リーマスもいつの間にか六人の中に溶け込むことができた。
突然、が立ち上がり、リーマスに「待ってて」と一言言うとハリーと一緒に部屋を出て行った。数分後、ちょっと大きめな包みを大事そうに抱えながら、ハリーと一緒に戻ってきたの顔は不安が入り混じっていた。
「あのね、ハリーと一緒にリーマスの誕生日に何を贈ろうか考えてたの」がリーマスを見た。
「喜んでもらえると嬉しいけど・・・・・」ハリーもちょっと不安そうだ。
の手から、リーマスの手に包みが渡された。リーマスは嬉しそうに微笑むと、「開けてもいいかい?」と二人に聞いた。二人はコクンと頷いた。
リーマスの綺麗な指が包みを丁寧にはがしていく。中から出てきたのは革のバッグだ。
「ありがとう、ハリー、。嬉しいよ」リーマスがこれ以上ないという喜ばしい顔をして、二人を見た。
「バッグから何か出てるみたいだけど?」
ジェームズがリーマスのプレゼントを覗きながら言った。とハリーがチラリと目配せしたのをリーマスは見逃さなかった。シリウスとジェームズの子供のことだ、何か突拍子もないことが待ち受けているに違いない、とリーマスは考えた。
恐る恐るバッグを開けてみると、中からチョコレートがあふれ出てきた。いろんな種類のチョコレートだ。リーマスが食べたことないようなものもある。驚いて、あんぐりと口を開けているリーマスや、シリウス、ジェームズを見て、ハリーとはしてやったりという顔をした。いたずらは成功した。
「あぁ、ハリー、。今日は本当に忘れられそうもない日になったよ」リーマスが笑いながら言った。悪戯仕掛け人のプライドに火をつけたらしい。シリウスもジェームズもニヤリと不敵な笑みを浮かべながらハリーとを見た。
「でも、楽しかったでしょう?」が屈託のない笑顔でそう言うと、リーマスがさもおかしそうに笑った。
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あぁ、リーマスHappyBirthday!大好きですv
<update:2007.03.08>