◆◆◆いい歳をしてどうしてこんなことを、と、思わなくも…ない
「セブルス!」
ダイアゴン横丁の真ん中でスネイプは誰かに肩を叩かれた。振り返ってみると、だった。
「セブルスも買い物?ホント、久しぶりだね」
はにこにことスネイプに話しかけているが、その背後は不機嫌そうなシリウスと何かを期待しているように目を輝かせるジェームズと、どこか困ったような表情を浮かべるルーピンがいた。そして、の傍らにはいつの間にかが立っていた。シリウスからの派遣だった。
「ママ、行かないの?」
はこのままだとスネイプも一緒に行かないか、と誘いだしそうな自分の母親の腕を必死に引っ張った。
「ちょうどよかった!セブルスも一緒に行かない?」
がの思いも虚しく、そう言ったとたんジロリとの背中に刺さる視線があった。その視線は紛れもなく、シリウスのものだった。が振り向いてしかめっ面をして「私の責任じゃない」と言ってもシリウスはまだ怒っているようだった。隣にいたジェームズがポンポンとシリウスの肩を叩いて、落ち着かせようとしていた。きっとローブに伸びている手は杖を握っているのだろう。
「ね、どうかしら、セブルス」
これだからは恐ろしい。何も知らずににこにことスネイプを誘う。スネイプの表情は相変わらず読めなかった。
「ももっと大人数の方が楽しいわよね?」
は隣にいたに期待した目を向けた。しかし、その背中には突き刺さるような視線が向けられている。はを取るか、シリウスを取るか、大いに迷った。
「今日はね、の誕生日プレゼントを買ってあげる約束をしたのよ」
「ほう、こんな大人数でかね?」
スネイプは笑顔で話すに、いつもより数十倍優しい声で返答した。
「そうなのよ。ったらほしい物が無いって言い張るから困っちゃって。ハリーにはクィディッチの物をあげたら喜ぶんだけどね」
はのお喋りを止めてほしくて後ろを振り向いたが、既にシリウスの視線はスネイプにあった。
「それで何を買うのかね?」
スネイプもシリウスに答えるように、の頭の上でシリウスを捕えていた。はまったく気づく様子がない。
「パーティ用のドレスよ!まだ買ってあげてなかったの。せっかく買ったのに、身長が伸びて着れなくなったらいやでしょ?」
「もっともだ」スネイプが軽く頷いた。
「だからね、セブルスも一緒に行かない?」
だから何なのだと、愛らしいには誰も突っ込めなかった。スネイプは一瞬だけ柔らかくなった気がした。
「すまないが、」スネイプが首を振ると、は本当に悲しそうな顔をした。
「――いや、さえ良いのなら、一緒に行かせてもらおう」
スネイプが素早く言い替えると、は嬉しそうに笑った。その一方、の背中に刺さる視線は強さを増し、ルーピンが振り向いたに戻っておいでと合図を送った。
「スネイプが一緒なんておかしいわ!」
がルーピンに訴えると、ルーピンはシリウスを指さして言った。
「ここにもっとおかしいと思ってる人物がいるよ」
「町中でケンカなんかしたらママ、どうするかしら」ふと、がそう思って呟くと、ジェームズが言った。
「僕らももう大人なんだからそんなことはしないさ。ただ、スニベリーをちょっとからかうだけだよ」
はジェームズの意味ありげな笑みに返す言葉がなかったが、なんとなく嫌な予感がした。誰かに呼ばれている気がして顔をあげると、何歩か先にがスネイプと仲良く立って手招きしていた。
「何だかスネイプがの夫みたいに見えるね」
屈託のない笑顔でルーピンがシリウスに言った。シリウスの顔には明らかに怒りが見える。
「そんな逆撫でしていいの?」
がギョッとしてルーピンに問いかけた。しかし、ルーピンはにっこり笑って大丈夫だよ、と言うだけだった。
しばらく四人はスネイプとの二人に一定の距離を保っていたが、目当ての店に来ると、仕方なく六人固まった。はウキウキとした表情を浮かべ、店の中へ入って行った。
「ふうん」
女の子らしい可愛さより大人の女性という雰囲気が漂う店の中には少し好意を持った。
「、。これなんかどうだい?」はルーピンに引っ張られて可愛い髪飾りを見せられた。
「うん、可愛いと思う」
あまり興味はなかったが、その髪飾りはルーピンの手によって、の髪に可愛く収まった。意外にルーピンが手先が器用で驚いた。
「うん、可愛い」
ルーピンは満足気な微笑みを浮かべ、を呼んだ。
「どうかな?」
「とっても可愛いわ」が喜んだ。
「やっぱり元が可愛いと、何をさせても似合うな」
の後にくっついてきたシリウスがそう言うと、同じくくっついてきたジェームズも頷いた。
「セブルスはどう思う?」
がにこやかに聞いた。もっとも興味ある返答であったが、もっとも恐ろしい返答でもあった。
「良いと思う」
スネイプはただそっけなくそれだけしか言わなかったが、それでもにとって意外な発言だった。
「これに似合うドレスにしたいわね」がにこにことそう言った。
「に似合いそうなのは水色のドレスだと思うの。瞳が水色だし・・・・・でもピンクでも似合いそうね。髪止めと同じ色だから」
「は何でも似合うよ、」頭を悩ます彼女にルーピンが助け船を出した。
「そうね、それなら二着着れば良いものね」
何だか嬉しそうなにはかける言葉がなかった。案の定、シリウスたちにドレス姿を見せ、はピンクか水色か迷った末――。
「はどっちがいい?」
「どっちでもいい」
結局、決まらない。家で留守番しているリリーとハリーをこのときばかりは、とても羨ましく思った。
オチがこんなですみません;;優しいセブルスが好きです。
<update:2006.11.03>