◆◆◆「『俺の子供を産んでくれ』はどう考えてもプロポーズじゃないですよ」
「こんばんは、ルーピン先生」
が学校を卒業すると、よくルーピンが家に遊びに来るようになった。その日はたまたまが独りで留守番だったので、ルーピンが泊まりにきた。
「やあ、。元気そうだね」
「先週、会ったばかりじゃないですか」
はクスクスと笑ってキッチンに向かった。ルーピンに紅茶を用意するためだ。
「先生は砂糖、二杯でしたよね?」
来る回数が頻度で、はルーピンの好みも覚えてしまっていた。
「うん。ありがとう」
はルーピンと向かい合ってソファーに座った。二人は暖かい紅茶を一口飲んだ。
「今日はシリウスとか、ジェームズがいないから静かだね」ルーピンの方が先に口を開いた。
「そうですね。いつも静かだといいんですけど」
は頬を膨らませてみた。ルーピンはそれを見てクスクスと笑うとに言った。
「でも、静か過ぎるのもは嫌いじゃないのかな?シリウスとジェームズはうるさいけど、面白いよ――おかしいって言うのかな」
「先生、今、さりげなく酷いこと言いましたよね」
がそう聞くと、ルーピンは聞こえなかったふりをした。そのとき、いきなり玄関のベルが鳴って、ドアが開く音が聞こえた。二人の間に緊張が走り、杖を構えた。
「、リーマス、僕だよ、ジェームズとシリウスだよ」
ジェームズが両手をあげて二人の前に現れた。
「なんで?今日は帰ってこないんじゃなかったの?」が驚いた声をあげた。
「仕事が早く終わったんだ」
シリウスがルーピンの隣に腰かけた。
「ふうん」はそう言ってキッチンに向かった。シリウスとジェームズの分の紅茶を持ってきたときにはすでに、二人ともくつろいでいた。
「ハリーはおいてきたの?」はジェームズの隣に座った。
「いや、ハリーはまだ仕事が終わってないよ。大丈夫だよ、ハリーにはナンパされるような時間はないから」のふくれっつらを見て、ジェームズが笑った。
「そんなこと心配してない」は強がってみせた。
「それは失礼しました」ジェームズがおどけてみせた。
「そういえば、ってシリウスがになんてプロポーズしたか知ってる?」
突然、リーマスが口を開いた。ちょうど紅茶を飲んでいたシリウスはむせた。
「知りませんけど」
「知らなくていい」
の声とシリウスの声が重なった。
「この先、とっても参考になるプロポーズだから聞いておいた方がいいよ」ジェームズがのってきた。
「なんの参考だよ」シリウスが突っ込んだ。
「や、いろいろとさ。だって知りたいだろう?」ジェームズがにっこり笑った。
「知りたい!」
「シリウスのプロポーズはね――」
リーマスはにこにこと話し始め、一方シリウスは頭をかかえた。の目はキラキラと輝き、ジェームズはシリウスのおちょくって楽しんだ。
「――というわけで、めでたく二人は結ばれました」
いつの間にか話し手がジェームズに移り、所々、明らかに話を膨らませたような部分があったが、なんとか話はまとまって終わった。
「シリウスも意外にロマンティストだったんだよ」リーマスが補足した。
「それにしたって――」が笑いをこらえながら言った。
「『俺の子供を産んでくれ』はどう考えてもプロポーズじゃないですよ」
ジェームズとリーマスは大爆笑した。シリウスはすでにむくれていた。
「娘にまで言われたよ、シリウス。可哀想に」ジェームズの口元は必死に笑いをこらえていた。
「なんとでも言えよ」シリウスはそっぽを向いた。
「ごめん、ごめん、シリウス。がこんなに冷静に突っ込んでくるとは思わなかったんだ」リーマスがシリウスの肩を叩いて元気を出させた。
「普通、ストレートに言った方が伝わるし、嬉しいのに」しかし、は容赦ない。
「でもさ、そう考えるとはすごいだろう?」ジェームズの目は笑いすぎでうるんでいた。
「そんなシリウスでも結婚したんだ。まあ、にとってはそんなシリウスだから結婚したんだろうけど」
「ママはプレイボーイなパパでもよかったの?」は理解できない、と頭をかかえた。
「、シリウスの名誉を挽回したくはないけど――」ジェームズがシリウスをチラリと見て、にっこり笑った。「シリウスの女好きは、を好きになってからパッタリなくなったよ」
は開いた口がふさがらず、リーマスがその様子を見てクスクスと笑った。
「そりゃ、シリウスはかっこいいし、ブラック家の長男だからモテることには変わらなかったけど、シリウスは以外に振り向くことはなかったんだよ」
リーマスはシリウスに同意を求めたが、シリウスはそっぽを向いたままだった。
「パパって意外に真面目・・・・・?」は疑いの眼差しでシリウスを見た。
「さあな」
シリウスはそっけなくそう答えた。
「いいな。ママ、そんなに愛されてたんだ」はソファーに沈んだ。
「あれ?も愛されていると思うけど?」
ジェームズがの顔を覗きこんだ。
「どうだか。ハリーは天然だもん」
「意味が分からないよ」リーマスが苦笑した。
「わかんなくていいの」が肘掛けに寄りかかった。
「まあ、どっちにしろ、シリウスについていけたのはくらいだったと思うよ」ジェームズが話を戻した。
「ね、シリウス」
ジェームズがシリウスに話をふると、シリウスはまたそっぽを向いた。
「パパってさ、ママの話をすると、照れ屋になるよね」がボソリと呟いた言葉ははっきりと他の三人にも聞こえた。しかし、その言葉にどう反応するかは人それぞれだった。
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<update:2006.11.03>