暴走花嫁発狂花婿〜決戦は結婚式inチャペル〜
、本当に綺麗よ」
ハーマイオニーが花嫁の控室をノックして入ってきた。すでに、の準備は出来ており、薄くメイクをして、真っ白なウエディングドレスに包まれていた。
「ありがとう、ハーマイオニー」
は鏡に写ったハーマイオニーに微笑んだ。
「ママやリリーもこんな気持ちだったのかな」
「せっかく幸せな日なんだから、前向きな気持ちになって。
少し不安そうな顔になったにハーマイオニーは喝をいれた。
「わかってる」は笑ってみせた。
「やっと一緒になれるのよね。よかった」
ハーマイオニーはの隣に座った。
「ずっと約束してたの?」
ハーマイオニーは聞きたそうにを見た。はハーマイオニーの好奇心に負け、ハリーとの誓いを話した。
「ヴォルデモート卿がいなくなって、二人とも無事に生きていたら結婚しようって約束したの。あの辛い中、この約束が私の支えだった。でも、もちろん二人とも生きているなんて確証はないし、確率も低かった。だけど、ハリーが本気だった。私も本気だった。だから、今、こうして此処にいられる」
ハーマイオニーが感動したようにの話を聞いていた。はハーマイオニーの目に涙が浮かんでいるのを見て、一言言った。
「今日は幸せな日なんだから」
そのとき、控室のドアがノックされた。
「どうぞ」
入って来たのはシリウスとルーピンだった。
「うん。にもリリーにも負けないほど綺麗だよ、」ルーピンが言った。
「ありがとう。ハリーの方は?」
「準備は出来てる。花嫁が結婚式に遅れてどうするんだ?」
シリウスは言葉では笑いながらも、目は少し潤んでいるようだった。はクスリと笑うと、結婚すると宣言した日を思い出した。シリウスはハリーと結婚すると聞いて喜んだ反面、その後、何日か落ち込んでいた。
「じゃあ、私たちは先に開場に行くよ。ハーマイオニー、行こう」ルーピンは時計を見ると、控室から出て行った。控室が静かになると、シリウスが居心地悪そうに落ち着きがなくなった。の方が数倍、落ち着いていた。
「パパ」は静かに声をかけた。鏡に写るシリウスをジッと見つめた。
「ヴォルデモート卿の全盛期に産まれた私をパパは心配してくれていた。彼が失脚した後も、危険に巻き込まれたら助けに来てくれた。どれだけ心配かけたか分からないくらい、私はよく怒られた。それでも、パパは私を見捨てなかった。私はパパが好き。大好きよ」
シリウスは静かにの話を聞いていた。口を開いたとき、シリウスの目がうるんでいた。しかし、その口から言葉は出ることがなく、シリウスはのベールを手に取ると、の前に差し出した。
「行こう。式が始まる」
はシリウスからベールを受けとると、頭にかぶせ、ブーケを手にして、立ち上がった。
「ママとどっちが綺麗?」
は茶目っ気たっぷりにそう尋ねた。シリウスは真剣な顔で答えた。
と私の血をひくおまえの方が綺麗だ」
シリウスは愛しそうにの頬を撫でると、優しく微笑んだ。
「ヴォルデモート卿の全盛期に産まれて私はお前を心配した。失脚した後もお前は毎年危険に巻き込まれ、何度も大人しくするように注意した。しかし、最後には立派に育ち、あいつを倒した英雄となった。だが、私にとってはいつまでも危なっかしい子供だ」
シリウスは一息ついて、の目を見つめた。
「いつでも帰っておいで」
「――はい」
は大きく頷くと、シリウスに抱きついた。それは、新しいスタートの証でもあり、別れでもあった。
「行こう。客を待たせるわけにはいかない」
数十秒、二人は抱き合うと、また離れた。しかし、その別れに悲しみはなかった。
「うん」
は父親にエスコートされて式場に到着した。ドアの前では深呼吸した。とうとう新しい一歩を踏み出すのだ。しかし、シリウスにとってバージンロードは決別の道でもあった。シリウスは悲しみをこらえ、この日がにとって最高の日になるように精一杯力を尽そうと決心した。
オルガンが音楽を奏で、はシリウスにエスコートされながら神聖なる道を一歩一歩進んだ。招かれた客たちはの美しさに息を呑んだ。もちろん、ハリーもその一人だった。祭壇の前でと向き合い、ハリーはみとれた。
神の前で二人はいかなるときも助け合うことを誓った。指輪も交換し、二人はまた向き合った。残りは誓いの口付けだけだった。会場の雰囲気はガラリと変わり、何十という目が二人を見つめた。
二人の顔と顔が近付き、頬が仄かに赤く染まる。ハリーはの腰に手を回し、はハリーの首に手を回した。は目を閉じて、ハリーの唇が自分の唇にそっと触れるのを感じた。にとって何十秒と思えたその瞬間は実際、数秒だったかもしれない。誓いの口付けが終わった後のハリーは少し、照れ臭そうだった。
結婚した今、は幸せでいっぱいだった。待ちに待ったこの瞬間は、期待以上のものであり、喜びに満たされた瞬間だった。
教会の外、青く晴れわたった空の下、はブーケを感謝してもしきれない大切な人に投げた――スネイプだ。ブーケは見事にスネイプの手の中に収まった。

の隣でハリーがびっくりした声をあげた。
「いいの。私は彼に恩返しらしい恩返しは出来ないわ。だから、せめてこれだけでも――」
がそう言い終わるか終らないうちに、ハリーはのアゴをクイッと掴み、にキスをした。もちろん、バッチリと観客たちは見ていた。
「ハリー」今度、驚いたのはの方だ。恥ずかしさに頬を染め、ハリーを睨んだ。
「スネイプにブーケを投げた罰」
そしてハリーは一瞬のうちにを抱き上げた。俗に言うお姫様だっこだった。
「ハリー!」
はさっきより大きな声をあげたが、ハリーはケロリとしている。やはり、ハリーはジェームズの血筋だった。
は僕のものだ!」
ハリーがそう叫ぶと、観客は暖かい祝福と、軽いヤジと、笑いを交えた。シリウスもジェームズもルーピンも笑っていた。ブーケをもらった張本人のスネイプさえ、少し笑顔になっていた。
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Happy Wedding!
<update:2006.10.16>