◆◆◆貴方なんかに解らないでしょう、こんな報われない痛み
小さい頃からずっと一緒で、引き裂けないことを知っていたはずなのに――私は彼を好きになってしまった。
ずっと小さい頃から両想いなのに、付き合ってないのはハリーに告白する勇気がないだけ。はずっとハリーがしてくれるのを待ってるの。女の子はそういうもの。でも、もしかしたら、相手が自分のことを好きなのに気づいていないのかもしれない。
どっちにしろ、私にはチャンスはないから。
「ジニー、を見なかった?」
談話室でくつろいでいると、ハリーに肩をたたかれた。
「いえ、知らないわ」半ば、イライラしながら私は答えた。
「そう、ありがとう」
ハリーが残念そうな顔をしたのに少し悲しくなった。やはり、が好きなんだろうな。
「ハリー」
「なに?」
私はいつの間にか呼び止めていた。大した用事なんかない。
「ううん、ごめん。なんでもない」
ハリーは笑いながら談話室を出て行った。あの笑顔はいずれだけのものになる。そう思うと苦しくて、切なくなった。
「ハリー、図書館にいるって言ったじゃない」
そのあとすぐ、がハリーと一緒に談話室に入ってきた。はた目から見れば本当にうらやましい恋人同士に見える。理想のカップルだ。
「そうだっけ?」
「人の話、ちゃんと聞いててよ」
が苦笑している。ハリーが笑いながら謝った。
「宿題終わった?」
ハリーがの抱えている羊皮紙に目を移した。
「写そうとしたってダメよ」は素早く羊皮紙を後ろに隠した。
「君のは見ないよ。どうせ闇の魔術に対する防衛術でしょう?それなら自分でやった方が成績いいから」
「どういう意味よ」
が頬をふくらませる。
「そのままの意味」ハリーがクスクス笑った。
「最低」はプイッと横を向いた。
「今度、三本の箒で何かおごるって」ハリーはそれを見通していたのか、の耳元で囁いた。
はとても悩んだ顔でハリーを見た。誘惑に耐えている。
「ね、」
ハリーがもう一度そう囁けば、はもうハリーの手の中。ハリーに向かって少し怒ったような呆れたような顔で頷く。
ハリーとは学校内でも有名なほどいつも一緒にいる。ときには喧嘩をするところを見るが、あれは単にがハリーに怒っているだけだと思う。ハリーはいつもをからかって楽しんでいる。もちろん、はそんなこと夢にも思っていないだろう。ハリーがからかうのはだけなのに。
「おい、ハリー、告白しちゃえよ」
私が過去を振り返っていると、ハリーに我が兄が話しかけていた。いつの間にかはいない。
「好きなんだろ?」
「違う」
ロンは毎回こう聞く。そしてハリーの答えも毎回変わらない。
「素直に言えよ」ロンがニヤニヤした。
「違うったら」ハリーがムキになっているのは一目瞭然だった。
今日は他のグリフィンドール生は、はやしたてない。私はキョロキョロと周りを見回した。いつもなら、他のグリフィンドール生も口々にそう聞く。それで、どんどんハリーがムキになっていくのを見るのだ。
「真実薬が試せればなあ」ロンが残念そうに呟いた。
「残念でした。それにあなたにはアレを作るのは難しいと思うわよ。きっと毒薬になるわ」
ハーマイオニーが寝室から降りてきた。
「それはすみませんでしたね」ロンが怒った。人間、本当のことを言われると怒るっていうのはロンで立証出来る、と毎回思う。
「ハリー、で、が好きなの?」ハーマイオニーの目はロンと違って本気だった。
「違うって」ハリーの答えは変わらない。
「あっそ。正直に言えば協力するのに」ハーマイオニーは残念とばかりにため息をついた。ハリーの表情が少し期待し輝いたが、すぐに興味なさ気な表情に戻った。
そのときがまた談話室に戻ってきた。
「、どこに行ってたの?もうすぐ夕食なのに」ハーマイオニーがお母さんのように言った。
「え、マルフォイを追っかけ回して、フィルチとスネイプから逃げてた」
がそう言ったとたん、談話室にいたほぼ全員が笑った――私と少人数の女子を除いて。それだけは人気者だった。少なくとも私にはそう見えた。中にはそれを妬ましく思っている人もいたが、大半はの味方だった。みんな、ハリーとくっつくのを望んでいる。
「減点されなかった?」ロンがウキウキと聞いた。
「されたわ、十点。だけど明日の授業で取り返すもの、明日は真面目な子になるわ」
は握り拳を高く上げた。気合い十分だ。
「が真面目な子になったら世界は破滅だね」しかし、ハリーがまたもやチャチャを入れる。
「あなたこそ、少しは真面目に授業受けたら?」
が負けず劣らず言った。しかし、結果は火を見るより明らかだ。
「残念だけどよりは僕、賢い自信あるよ」
が悔しそうにハリーをにらんだ。ハリーが言ってるのは本当だった。
「ハリーの意地悪。女の子に優しくないとモテないよ!」が負け惜しみのように言った。
「モテなくて結構。残念だけど恋愛には大して興味ないからね」
がこれでもかというほどハリーをにらみつけた。しかし、ハリーには痛くも痒くもない。
そんな二人の様子を周りは楽しんで見ている。面白いし、二人がいつくっつくのか気になるからだ。
でも、私は彼らの仲間には入れない。口が割けてもハリーが好きだなんて言えない。ハリーを困らせるだけだし、が好きなのは私だって重々承知。でも時にはハリーが振り向いてくれないかと淡い期待を持つ。告白しようと何度も思ったが、ハリーとギクシャクした関係になるのは私も願い下げ。遠くでハリーの視界に入り、視界に入れるだけで我慢しよう。
でも、神様は意地悪だ。何故、私にこんな仕打をするのだろう。堅く決めた決心をどうして揺らがせるのか。
「と一緒にいると飽きないよ」
「ハリーがいじめるからでしょ」
今日もまたハリーはをからかって、はハリーにからかわれる。どうみたって恋人同士だろう。
可哀想なジニー・・・・・・。
<update:2006.09.20>