「あ、ルーピン先生。ママが今度、家に来るようにって言ってました」
は屈託のない笑顔をルーピンに向けた。
「じゃあ今年の夏に行こうかな」
ルーピンもニコニコと言った。
「ママたちが喜びますよ」
「みんなは元気なのかい?」
「もちろんです」
ルーピンはいつの間にかの笑顔に引き込まれていった。
「ルーピン先生、どうしたんですか?」
ルーピンは自分でも気づかないうちにボーッとしていたらしく、の顔が目の前に現れて驚いた。
「なにか・・・・・?」はルーピンの見つめている先に目を移した。
「いや、なんでもない」
「どうしたんですか?もう年ですか?」
はクスクスと笑った。
「そうかもね」ルーピンは苦笑しながらそう言った。
はルーピンがまさか、そう答えるとは思ってなかったので目を丸くした。
「、そういえばから聞いたんだが、将来、闇祓いになりたいんだって?」
「うん」
はふと顔を曇らせた。
「は猛反対してただろう?」ルーピンはクスクス笑った。
何故ルーピンが知っているのか不思議だった。
「昔ね、君が小さい頃にが言ってたんだ。自分の子供には命を賭けるこんな危ない仕事はさせたくないってね」
ルーピンは懐かしむ様に目を細めた。
「自分はそれでもやってるくせに」は理不尽に思った。
「は相手のことを深く考えられる人だからね――ときにはに救われる」
はなぜか心の中にもやもやしたものが広がるのを感じた。
「闇祓いは危険な仕事だからね」ルーピンがポツリと言った。
「先生もやりたかったんですか?」は聞いてはいけないかな、と思いながらもつい、聞いていた。
「私かい?いや・・・・・この仕事で満足している。それに、月に一度必ず休むことになるしね――周りに迷惑がかかってしまう」
「でも、リーマスは先生が天職だと思うわ」
ルーピンは突然が「リーマス」と言ったので驚いた顔をに向けた。
「分かりやすいし、頼りになるし、本当に良い先生だと思うの」
ルーピンはにっこり笑って、「ありがとう」と言った。
「さあ、じゃあ頼んで良いかな、」
「何を?」が聞いた。
「たちに今年の夏に遊びに行くと伝えてもらえないかい?」
「泊まらないの?」
ルーピンは苦笑しながら言った。
「たちに迷惑がかかってしまう」
「大丈夫よ。ママとリリーは休暇中、ずっといてもらって構わないって言ってたもの。それに、パパとジェームズは家に人が増えたら喜ぶわ――もちろん、スネイプは例外ね。ハリーだってルーピン先生なら大歓迎よ」
断わる理由が見つからなく、ルーピンはの説得に苦笑しながら泊まることを承諾した。
そして、夏休み。はハリーと一緒に宿題を片づけていた。
「あとは魔法薬と魔法史と闇の魔術に対する防衛術だけね」はたった今終わった変身術の宿題を見直しながら言った。
「僕は呪文学がまだ残ってるよ」
ハリーは憂鬱ぎみに教科書をパラパラめくった。
「ハリー、!リーマスが来たわよ!」
そのとき、部屋のもっと先から魔法で声を拡大したリリーの声が聞こえた。
「ルーピン先生が?意外に早いね、来るの」
「泊まるんだろ?ルーピン先生」
とハリーは話しながらリビングに行くと、ちょうど、がルーピンと抱き合っているところだった。はまた心に広がるもやもやを感じた。
「やあ、ハリーもも元気そうだね」
「先生も夏休み前とあまり変わらないわ」
は心に広がるもやもやした気持ちを精一杯、周りに感付かれないようにした。特に、ジェームズあたりは勘が鋭いので、気をつけなければならないと思った。もやもやがどんな正体にしろ、にとってあまり良いものでないことは確かだった。
「二人とも、学校じゃどんなだい?」ジェームズが興味津々にルーピンに聞いた。
「良い子だよ、二人とも。ハリーは私の見た限り、『闇の魔術に対する防衛術』のクラスで学年一番だよ。それにはマクゴナガル先生が誉めているのを聞いたよ。全ての実技において、は優れてるって」
ジェームズもシリウスも自分の子供に意外そうな顔を向けた。
「でも、ハリーは魔法薬がまずいってスネイプから聞いた。それには魔法史が危険だって――面白いほど実技との差があるから、良く話題に出るよ」
明らかに、シリウスとジェームズの間にニヤニヤとした笑いが起こり、とリリーの周りのオーラが変わった。
「あ、そうそう。ハリーももスリザリンとほぼ毎日、戦って減点されてるよね」
ここまでルーピンが言うと、とうとうシリウスとジェームズが吹き出した。それに、とリリーの周りのオーラがドス黒くなったのを感じる。
「それはどっちが勝ってるんだい?」ジェームズが笑いながら聞いた。
「グリフィンドールに決まってるでしょ。なんでスリザリンなんかに負けるのよ。マルフォイに負けたら一生の恥」
がぶつぶつとそう言うと、シリウスもジェームズも止められないほど笑いだした。
「素敵だよ、」ジェームズが息もたえだえに言った。
「どこがよ」がジェームズをにらみつけた。
「どうしてそう、あなたたちはすぐ争うのよ」
「でも、。マルフォイはハーマイオニーのことを差別するし、を脅すんだよ?あいつが悪いんだ」ハリーが弁解した。
「それでもよ。問題起こしちゃだめ」
とリリーは声を揃えてそう言った。
「ルーピンのことも軽蔑するわ」がそう言うと、ルーピンがフッと笑った。
「そのことなら私は気にしてないよ、。昔も今も狼人間だから・・・・・その扱いには慣れてる。一人になるのは慣れてる」
「リーマスは一人じゃないわ!今も昔もそうじゃない」
突然、が怒ったようにそう言った。
「私はリーマスの味方だわ。あなたはいつも私を助けてくれた」
がそう言ったとたん、はルーピンの言葉を思い出したと同時に、またもやもやしたものが心の中に広がった――ときにはに救われる。
「ありがとう、」
ルーピンがに優しく微笑みかけたとき、はやっともやもやの正体がわかった。
「嫉妬・・・・・」
「何か言った?」
が何かを呟いたのが聞こえたハリーはに視線を移した。
「――何も。宿題を終らせてくる」
はそう言って、誰の顔も見ずにリビングから出ていった。
「ママは結婚してるわ。なのにどうして・・・・・」
はそう吐き捨てると、何も考えずにベッドに寝転んだ。
「よりによってママに・・・・・」
自分の母親に嫉妬して困っています;;
<update:2006.09.09>