熱情
「さあて、ここに大暴露・羞恥心を捨てろゲームの開催を宣言します!」
フレッドがマイクを持つ恰好をしながら立ち上がった。
「どういう経緯でそういうあほらしい案が出てきたのか、聞きたいものだわ」
ハーマイオニーがフンと鼻をならした。
シリウスの家の客間にはシリウス、ジェームズ、リーマスやハリー、ロン、、ハーマイオニーを始め、フレッドとジョージもいて大賑わいだった。
「まあ、ハーマイオニー、いいじゃない。楽しそうだし」
ね、とが取り直すようにハーマイオニーに笑いかけ、ハーマイオニーは静かになった。
「ルールは簡単!ただ単に自分の大切な人を一人だけ上げて、一分間その人の良いところや、好きなとこを上げ続けるのさ」
フレッドは何故かに向かってニヤリッと何かをたくらむような笑みを向けた。
「もちろん、吃ったり、詰まったり、上げるところが無くなったらゲームオーバー。罰ゲームが待ってるっていう寸法さ」
「いいね、楽しそうだ」真っ先にジェームズが賛成した。
「シリウスも喜んで、参加するってさ」
「おまえっ――!」
シリウスはまさかジェームズに振られるとは思っていなかったのか、ジェームズをにらみつけた。
「よし、なら全員参加だね」ジョージが楽しそうに言った。
が隣にいたハーマイオニーに目をやると、ハーマイオニーは肩をすくめ、「ま、いいんじゃない?」と言った。なんだかんだ言ってやる気なようだ。
「それでは、家主のシリウスからどうぞ」
ジョージがシリウスに押し付けると、おかしそうにリーマスが笑った。シリウスはブスッとしていたが、ジェームズに「おとなげない」と言われ、渋々、承諾した。
「なら、まずは大切な人が誰かってことからだね」
リーマスがにっこりと笑った。
「ま、シリウスなら簡単にわかりそうだけどね」
ジェームズがつぶやくと、ハリーが不思議そうにジェームズに尋ねた。
「誰?」
「誰だと思う?」
ハリーはしばらく考えて、をちらりと見てジェームズを見上げた。
「なんとなくわかった」
「だろ?」
ジェームズが息子とくすくす笑っていると、シリウスのげんこつが飛んできた。
「痛いって、シリウス」
ジェームズが頭を押さえた。シリウスの顔は怒っているのか、恥ずかしいのか、ほんのり赤い。
「うるさい!」シリウスがジェームズをにらんだ。
「だって本当のことだろう?シリウスがのこと好きだってことはみんな知ってるから恥ずかしがらなくて平気だよ」
思わず吹き出したのは、ハリーだけではない。以外の全員が吹き出した。は複雑な顔つきだ。
「さあて、図星のようなら言ってもらおうかな。のどこらへんが好きなのかな?」
ジェームズが笑顔でシリウスに迫ると、シリウスは一瞬逃げ出そうとしたが、諦めた表情でジェームズを見た。
「一分間言い続けりゃ、いいんだろ?」
「なんだか余裕そうな発言だねえ、シリウス」ジェームズが笑った。
「じゃあ今から一分間だよ、シリウス。用意、スタート!」
リーマスはフレッドの合図と共に杖を振った。すると、宙に緑色の数字が浮かび上がった。どうやらカウントらしい。刻々と数字が小さくなっている。
「まずは顔だろうな。に似ている目元、口元、鼻筋、それにわたしに似ている黒髪や目の色、輪郭。すべて自慢だし、好きなところだな――」
シリウスは恥を捨てたのか、楽しそうだ。
「――次に、性格だが、穏やかで優しく、ときには厳しく、そんなメリハリのついた性格もいいなあ。ちゃんと自分というものを持っているところも良い――」
はシリウスの口を塞ぎたいという衝動に捕われた。死ぬほど恥ずかしい。
「――それに優れた魔法使いとしての資質。魔法はすぐに覚えるし、魔法薬の技術も大人、顔負けだ。知識も十分にあるしな――」
ハリーは内心、苦笑していた。ここまでシリウスが親馬鹿とは。を溺愛しているのは知っていたが、改まって言葉にされると、聞いているこちらまでもなんだか気恥ずかしい。
「あー、シリウス、ノリノリのところ悪いけど、もういいよ。一分間は終わったから」
ジェームズが苦笑いしながらシリウスの言葉に割り込んだ。
「いや、まだ言い足りない」
シリウスはジェームズにそう言い返し、またマシンガントークを続けた。
「――とにかく欠点が、ウィークポイントが、見つからないな。可愛いし、性格も良い上に、成績優秀で――」
「シリウス、もういいって」
ジェームズはシリウスの口を自分の手で塞いだ。シリウスはノリノリだったところを邪魔されて不満そうな顔をしている。
「シリウスをトップバッターにしたのは間違いだったね・・・・・」
ジョージがため息まじりにつぶやいた。
「流石のわたしも、シリウスがこんなにノッてくるとは思わなかったよ」
リーマスはシリウスをちらっと見て、今度はの方を見た。
は相当お気に召さなかったようだね」
「人事だと思って!」
クスクス笑うリーマスを、は思いっきりにらんだ。
「いいじゃない。愛されてるってことだし」ハーマイオニーが言った。
「ちょっとあぶない方向だけどね」
ロンがニヤリと笑うと、ハーマイオニーがジロリとロンを見た。
「だって、ほんとだろ?」ロンが肩をすくめた。
「シリウス、あれじゃあ親馬鹿だぜ?」
ロンの容赦ない言葉に、シリウスと以外、全員吹き出した。
「ま、シリウスが親馬鹿になるなんて、誰も予想してなかったけどね」
ジェームズが笑いすぎで息も絶え絶えになりながら言った。
「麗しの姫」
「色才兼備の嬢」
フレッドとジョージは、新しいおもちゃをもらったようにご機嫌で、をからかい始めた。
「将来はシリウスのお嫁さん?」
フレッドとジョージが声を揃えてそう言うと、また客間に笑い声が響いた。ハーマイオニーでさえ、笑いを抑え切れないようだ。
「パパ、最悪」
がシリウスをにらむと、シリウスがニヤリと笑ってに言い返した。
「でも、まんざらでもない顔してるぞ。本当は褒められて嬉しいんだろ?」
は慌ててほっぺたを押さえたが、みんなが見ているので、慌てて後ろを向いた。
もしかしたらシリウスにはバレていたのかもしれない。最近、シリウスがハリーばかり構っていて、ハリーに少なからず嫉妬していたことを。一人ぼっちで寂しかったことを。しかし、傲慢で、自意識過剰なシリウスの言葉を認めるのは釈にさわる。
は勢いよく振り向いた。
「さっさと子離れしなさいよ!」
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シリウスの親ばか騒動。
<update:2007.07.28>