それはよく晴れた夏の日のこと――。
「おめでとう、」
がホグワーツから巣立つ日がきたのだ。もっともそれはだけであり、ハリーとロンはヴォルデモート亡き後もホグワーツには戻らなかったし、ハーマイオニーは再びホグワーツに戻ることにしたものの、次年度に七年生をやり直すことにしていた。
シリウス、ジェームズ、リーマスにリリーに加え――もちろんハリーもロンもハーマイオニーもいる――セブルスやキングズリー、ウィーズリー家の人たちも集まってくれていた。午前中にあった卒業生主催の祝賀会にが招待したのだ。例年、祝賀会なんてものは開かれないが、あの悪夢の一年間でグリフィンドールだけでなく、レイブンクローやハッフルパフ、そしてスリザリンの何人かの卒業生がホグワーツに、そしてホグワーツにいる先生方に心から感謝し、そのお返しとして祝賀会を開いたのだ。
もちろん、祝賀会の詳細を決め、すべてを取り締まったのは首席であるの仕事だった。祝賀会は大成功で、マクゴナガル先生やハグリッドは涙ぐんでいた。
「私、ハーマイオニーの卒業式にも行きたいわ」
は、ロンと手を繋ぎ今にも嬉し泣きをしそうなハーマイオニーを見た。
「えぇ、もちろん招待するわ!」
ハーマイオニーに抱きつかれ、はクスクスと笑いながら、約束よ、と言った。
しばらくしてハリーがの手を引き、ハーマイオニーから剥がして話があるとそのまま歩き出した。
流石に、が直したホグワーツの姿を眺めていたシリウス、ジェームズ、リーマスも、何かを感じ取ったらしくこちらをチラッと見て、そして何事もなかったかのようにまたホグワーツを見上げた。しかしその表情に少しだけ笑みが浮かんでいたのには気付いた。
二人は湖までくると、腰をおろした。ハリーと二人になるのは本当に久しぶりだった。ハリーがヴォルデモートを倒した日に一緒に話をした以来だった。
は二人きりなのが嬉しくて、ハリーの肩に寄りかかり、その温もりを感じた。
「お帰り、」
ハリーはそう言っての腰に手を回した。
「ただいま、ハリー」
はそう言ってハリーの頬にキスした。
「君にずっと会いたかった――前回は二人とも疲れきっていたし――この一年、ずっと君に会いたかったんだ」
ハリーはの顎に手を添えると、少し上を向かせ、に目をつぶるように促した。
しばらくして、はハリーの腕の中にいた。
「ハリー」
「うん?」
ハリーは腕の中にいるを優しく見下ろした。
「私も会いたかったよ」
につられ、ハリーもにっこりと笑った。
「これからずっと一緒にいられるさ」
の頭を撫でながら、ハリーがそう言った。
「えぇ。本当に、あなたがいなくならなくて良かっ――」
頬にいつの間にか、自分の意思とは関係なく涙が流れていた。それに気付き、ハリーは優しく涙を拭うと、ギュッとには強すぎるかもしれないくらいの力で彼女を抱き締めた。
「独りにはしないよ、。泣かないで」
うん、とが小さく頷くのがわかった。
「家に帰ったら、確かに君とはもう別の家になるけど、君が望むならいつだって君の所に飛んでくよ」
「ジェームズが邪魔しても?」
は泣きながら笑った。ハリーはちょっとうんざりした顔になり、そしてもちろんと言った。
「父さんを上手く巻くさ」
「頑張ってね」
はもぞもぞとハリーの腕の中で動いた。ハリーがどうしたのかと腕の力を緩めると、が不意打ちにキスしてきた。
「――どうしたの?」
ハリーは驚いてをまじまじと見た。
「嬉しくて」
確かには本当に嬉しそうな顔をしていた。
「だってやっとすべての厄介事が終わったのよ――別にホグワーツの修復作業が厄介だとは思ってないけど・・・・・家に帰ってみんなと一緒にいられるのが嬉しい!」
満面の笑みでこちらを見る彼女は、かつての彼女と同じだった。
「、本当に君って――」
ハリーは苦笑しながら彼女の前髪を耳にかけ、頬に触れた。が不思議そうな顔をして自分を見上げている。
「――やっぱりやめた。なんでもない」
「何よー」
ハリーの思わせ振りな態度にが頬を膨らませた。
「ジェームズに言いつけてやる」
ハリーはのそんな脅しにも笑いながら彼女の頭を撫でた。そうすることで彼女の表情も柔らかくなっていく。
「それじゃあシリウスたちのところに戻ろうか。あまり待たせると父さんあたりが騒ぎ出すだろうから」
ハリーはを抱き締めていた腕を外し、先に立ち上がり、そして手を差しのべてを立たせた。そんな些細な行動だったが、はハリーに自分が大切にされていることがわかった。
「帰ったらさ、ダイアゴン横丁に出かけようか」
ハリーはの手を握って歩き始めた。
「ううん」
は首を振るとハリーにくっつき、彼を見上げた。
「家で一緒にゆっくりしよ」
甘えたその表情があまりにも子供っぽく、ハリーは笑いだした。すると案の定、が食って掛かった。
「なんで笑うのよ!」
「いや?」
ハリーは笑いを押さえきれないようだった。口許を押さえているが、笑い声が漏れている。そして笑い終わると少し反省した顔での顔を覗き込んだ。
「ごめんって、。一緒に家でゆっくりしよう」
はチラッとハリーを見た。
「その次の日は一緒に買い物ね」
ハリーはため息をつくとを抱き寄せた。
「じゃあその代わりに機嫌直して」
ハリーは素早くにキスをして、何事もなかったかのようにまた歩き出した。
「ずるい・・・・・」
は少し赤くなった顔でそうつぶやいた。隣からクスクスと笑い声が聞こえた。
「その赤い顔、早く直さないとシリウスたちに見つかるよ」
「誰の所為よ」
しかしハリーはしれっとした顔で、だけが赤かかった。
「ほら噂をすれば」
向こうからジェームズが自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。リーマスが優しく微笑んでいるのが見える。そしてシリウスが、どこかほっとしたような、寂しげな表情を浮かべながら温かい眼差しをしていた。
「パパのとこに行ってもいい?」
はハリーにそう聞き、彼が頷いたのがわかると駆け出した。そして勢い良く、父親に抱きつくとただいま、と一言言った。
「おかえり、」
シリウスは暖かくを抱き締めた。
「卒業おめでとう」
ハリーといちゃいちゃ。
<update:2009.06.20>