小さな君へ
「ゲホ、ゲホ」
?」
ある日の朝、たまたまの部屋の前を通ったルーピンは、なんだか辛そうな咳を聞いて、部屋を覗いた。
「大丈夫かい?」
「あ、はい」
はたった今起きたようで、まだ寝ぼけ眼だった。
「風邪かな?」
ルーピンはゆっくりとのベッドに近づくと、彼女の額に手を当てた。
「うん、少し熱いね」
「リーマスの気のせいよ」
はルーピンを見上げた。
「鼻声で言われても信頼性はないね」
ルーピンはやれやれとため息をつきながら立ち上がった。が風邪をひいたとなれば、この家が騒然となるのは目に見えている。
「風邪のひき始めで治ればいいけど――ほら、、横になって」
ルーピンにうながされては渋々ベッドに逆戻りした。
「今日はおとなしくしてるんだよ」
ルーピンはそう言い残してシリウスたちを呼びに行った。
数分後、少しうつらうつらしていたのもとに飛び込んできたのは騒がしく、心配そうなシリウスとジェームズだった。ハリーはの病状をしっかり理解しているのか、ただ心配そうにベッドの脇に座っただけだった。
「リーマスの馬鹿・・・・・」
はシリウスとジェームズの心配性に内心、イライラしながらそうつぶやいた。
「誰が馬鹿なのかな?」
ギクッとして目を上げると、恐ろしく笑顔のルーピンと目が合った。
「父さん、は風邪のひき始めなんだよ?静かにしないと」
ガーガーとシリウスにの体調管理について文句を言っていたジェームズに、ハリーが口を挟んだ。
「おっと、そうだね。こんな馬鹿犬にかまっている暇なんてなかった」
誰が馬鹿犬だ、と怒鳴るシリウスをまるごと無視して、ジェームズはの枕元に座り込んだ。
「何か欲しいものはある?」
「そうね・・・・・」
はジェームズに聞かれて迷わずにニッコリ笑って言った。
「パパもジェームズもいない寝室よ!」
の希望通り、シリウスもジェームズもの部屋の外に追い出された。多分、ドアの前で聞き耳を立てているのだろう。時々、シリウスとジェームズの話し声が聞こえる。
「――それにしても、が風邪をひくなんて珍しいね」
ハリーがの頭に冷たいタオルを乗せながら言った。
「きっと疲れたんだよ。シリウスとジェームズがうるさいから」
ルーピンがドアの方に目を向けると、なんだかドアの向こう側のシリウスとジェームズの焦りが感じられた。
「リリーに魔法薬でももらってこよう。そしたら少しは治りが早くなるから」
ルーピンはハリーに「後は任せたよ」と言うと、足音を忍ばせてドアをバッと勢いよく開いた。ガツンと痛そうな音がして、恨めしそうなシリウスとジェームズの顔が見えた。
「君たちももう少し学習したら?――ほら、行こう」
ルーピンに強制的に引っ張られ、シリウスもジェームズも廊下を歩いていった。きっと一緒にリリーのところに行くのだろう。
はルーピンに頭が上がらない二人を見てクスリと笑った。ハリーが不思議な顔をしてを見た。
「だって、シリウスもジェームズも、いつもリーマスからは一目置かれているのに、こういうときだけはこき使われるんだなって思って」
はまたクスクスとおかしそうに笑った。
確かににしてみれば三人とも頼りになるのだろうが、強いて言えば、シリウスやジェームズの方が自信たっぷりで、強くて正しい。しかし、そんな二人もときにはルーピンの尻に引かれるのは不思議で、興味深く、おもしろいのだ。
「ホグワーツにいるときにひかなくてよかったね」
ハリーがふとつぶやいた。
「どうして?」
「だって、もしかしたらシリウスも父さんもホグワーツに乗り込んでくるかもしれないだろう?」
ハリーの言葉に最初はキョトンとしていただが、本来の重大さに気付いたのかサッと青くなり、赤くなった。
「そんなことをしたら、ただじゃおかないわ」
の凄い剣幕に、ハリーは少し言わなければよかった、と後悔した。
、開けるよ」
そのとき、部屋のドアがノックされてゴブレットを持ったルーピンが現れた。部屋に踏み入れないギリギリのラインに、おとなしくシリウスとジェームズが立ってを見ていた。
「んもう、パパ、入って良いってば」
捨てられた犬のような目をしてこちらを見るシリウスに、は観念して言った。
「リリーが、ちゃんとも飲めるように甘くしてくれたよ」
ルーピンはゴブレットをに差し出した。はゆっくりとゴブレットに口をつけるとニッコリと笑顔になった。
「甘くておいしい」
「よかったね」
ルーピンも優しい笑顔をに向けた。
「もう一度寝たらきっと良くなるよ」
ハリーはから空になったゴブレットを受けとりながら言った。
「ううん、もう良くなったわ」
はそう言って、ベッドから上半身だけ起き上がると大きく伸びをした。
「やっぱりは元気じゃないとねえ」
ジェームズがこの部屋に入ってきて初めて口をきいた。
「私が元気になると、騒いでいても良いと思ってるんでしょ?」
が「違う?」とジェームズに問い掛けると、ジェームズは勢い良く頷いた。
「まったくもう!リリーに叱られるよ」
がクスクス笑うとジェームズは肩をすくめた。
「それで元気なが見れるなら満足さ。ね、シリウス」
ジェームズがシリウスを振り返るとシリウスは「ああ」と満足げな笑みを見せた。
「なら今日はリーマスと一緒に遊ぶわ。きっと、今朝見つけたのがパパたちなら私が風邪をひいていたなんて気付かなかっただろうし」
が嫌味っぽくそう言うと、ジェームズがとたんにべらべら弁解し始めた。
「そういうことをするからにうっとうしがられるんだよ」
ルーピンが学習しないジェームズに呆れて言った。
は僕のことをうっとうしがったりしないよ」
ジェームズが「ね?」と同意を求めると、は勢い良く首を縦にふった。
「ええ、うっとうしがるわ」
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一体、どんなオチですか;;
<update:2007.08.08>