「?」
ジェームズが不思議そうな顔で彼女の顔を見た。どこか、彼女の顔は楽しそうで、いつもながらに不思議な娘だった。
「うん?」
は笑みを崩すことなく、ジェームズに目を向けた。
「いや、なんだか楽しそうだな、と思って」
ジェームズはに笑みを見せると、傍で静かに本を読んでいたリーマスに話を振った。
「ね、リーマス」
リーマスは何故だか笑いたくなって、クスリと笑った。
「ああ、そうだね」
「リーマスまで、そんなこと言うの?」
は少し呆れたような顔で二人の顔を見比べて、ハリーに話を振った。
「ハリーはどう思う?」
すると、ハリーは磨いていたファイヤボルトから顔を上げ、をじっと見た。
「昔から、君はそんな顔だから」
「ひっどーい!」
がむっとふくれると、三人はドッと笑った。
「何笑ってるの?」
二階からリリーとシリウスが降りてきた。
「の顔について」ジェームズがふざけてそう言うと、リリーが呆れたようにジェームズを見た。
「でからかうのもいい加減にしないと、の父親に怒られちゃうわよ」リリーが言った。
「僕としては、の父親より、母親の方が、恐いね」
その言葉を聞いて、シリウスはニヤリと笑うと、ジェームズの背後に近づいた。
「――言ったな?」
「わ、シリウス、ちょっとタンマ!」
ジェームズの言葉に耳も貸さず、シリウスはジェームズを羽交い絞めにした。
「ジェームズも懲りないね」リーマスが笑った。
「父さんは、いつも一言多いから」ハリーが言った。
「シリウス、もっとやっちゃっていいよ」
ハリーに挑発されて、シリウスはジェームズにもっと力を加えた。
「ハリー、僕を殺す気かい?」ジェームズが恨めしそうな顔でハリーを見た。
「違うよ、父さん」ハリーが爽やかに言った。
「シリウスに、父さんを鍛えて、っていう意思表示さ」
それを聞いたジェームズがあまりにも情けない顔をするので、は思わず噴き出した。
「楽しそうね」が笑った。
「――楽しいよ」ジェームズが微笑んだ。
シリウスも、もう飽きたのか腕の力を緩め、ジェームズの隣に座った。
「おまえだって楽しそうに笑ってるぞ」
シリウスの指摘に、は咄嗟に自分の頬を抑えた。
「楽しそうだね」リーマスが言った。
「・・・・・うーん、楽しいわ」
はちょっと迷うとそう答えた。の中では楽しそうなのはシリウスとジェームズで、自分はそんな彼らから楽しさをおすそ分けしてもらっているにすぎない、と考えていたからだ。
「なんだい、その間」
ハリーが不思議そうに聞いた。
「私とパパとの距離を表してみました」
が面白半分、冗談半分で言うと、シリウスにはそう聞こえなかったのか、フリーズしてしまった。すると、何が面白いのか、ジェームズとリリーが容赦なく笑った。リーマスはシリウスに気を使っているのか苦笑いで、ハリーはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ああ、、本当に君は面白い娘だね!」
ジェームズがガバッとに抱き着いたがシリウスは怒る元気もないのか、唖然としている。
「パパ、ねえ、パパったら!」
が必死に呼びかけると、シリウスはやっと気付いたのか、慌てたようにからジェームズをはがしとった。
「パパ、さっきのは冗談よ」
は少し冗談が過ぎたかなと、シリウスに自ら抱き着いた。
「いいなー、シリウス」ジェームズが羨ましそうな声をあげた。
「父さんはいつも自分から抱き着いてるだろ」
「それとこれは別物さ」
ハリーの突っ込みにジェームズはサラリと答えると、優雅に足を組んだ。
「向こうからされるっていうのは何だか愛されているなって思うだろう?」
ジェームズがハリーに問い掛けると、ハリーは「まあね」と曖昧な返事を返した。
「ジェームズ、自分の息子を洗脳するなよ」シリウスが言った。
いつの間にかはもうシリウスから離れ、リーマスの横で居心地良さそうに座っていた。
「洗脳される方が悪いんだよ」ジェームズが言い返した。
「サラリとそういう言うなよな」シリウスがやれやれとため息をついた。
「あら、ハリーだってジェームズと同類よ」がにこにことハリーを横目にシリウスに言った。
「、僕と父さんを同類にするなんて良い度胸だね」ハリーがをにらんだ。
「私を泣かしたら、あなたの最愛で最悪な父親が黙ってないわよ」がにっこりと笑みを浮かべ、ハリーを見た。
「どっからそんな笑みを覚えてきたんだか」
シリウスがその様子を見ながらため息をついた。
「シリウス、そいつは愚問だね。もちろん彼からに決まっているだろう?」
ジェームズがそう言って見た先は、と同類の笑みを浮かべてこっちを見ているリーマスだった。
「ジェームズ、君は僕を怒らせたいの?」
「とんでもない。褒めてるのさ」
ジェームズがふざけてそう言うと、リーマスがやれやれとため息をついた。いつの間にかジェームズに乗せられている自分に気がついたのだ。
「君は油断も隙もないね」リーマスが呟いた。
「でも、そこがジェームズらしいよ」がリーマスの隣で口を挟むと、リーマスが「そうだね」と優しい微笑みを浮かべた。
「僕はそんなところが君らしいと思うよ」今度はジェームズがに向かって言った。
「どんなところ?」
が不思議そうな顔をしてジェームズに問い掛けた。すると、ジェームズはにっこりと笑い、を見つめた。
「見かけで判断しないで、どんな人にも良いところはあると、その長所を捜し出せるところ」
たしかに、とジェームズの話を聞いていたシリウスやハリー、リーマス、リリーも頷いた。
「私、そんなことしてないと思うけどなあ」
が首を傾げた。そんな仕草が愛らしくて、シリウスは重症だな、と自分を少々嘲笑った。
「自惚れないところも君らしい」リーマスが言った。「ジェームズと違ってね」
噴き出したのはもちろんだけのことではなかった。
笑いが絶えないグリモールド・プレイス十二番地。
<update:2007.07.08>