「っ!」
シリウスはガバッとはね起きた。
隣でが心配そうな顔でシリウスを見ていた。
「シリウス、どうしたの?汗だく・・・・・」
はシリウスの頬に手を添えた。
「少しいやな夢を見ただけだ。気にしなくていい」
「でも・・・・・」
シリウスはいまだに心配そうなを抱き締めた。
「大丈夫だって、」
はジッとシリウスを見つめた。
シリウスは軽く溜め息をつくといつもの不敵な笑いをして言った。
「そんなに構ってくれるのなら、襲っていいということかな?」
はすぐさま表情を変えると勢い良く毛布をかけるとシリウスに背を向けた。
シリウスはククッと笑うとの髪にキスをした。
そして起き上がると、シリウスはの様子を見にきた。
のベビーベッドは二人のベッドのすぐ隣だ。
「ごめんな、。起こしてしまったか」
シリウスはベッドの手すりにつかまって必死に立とうとするを抱き上げた。
「あー」
は嬉しそうに笑った。
「ずいぶんご機嫌だな、」
シリウスはチラリと肩越しにを振り返り、まだ背中を自分に向けているのを確認すると、そっと寝室を出た。
「暗黒の世界でどうやって彼女を守ればいいと言うのだ」
シリウスは腹立たしそうに窓の外を見た。
は嬉しそうだ。
「あー」
窓から見える星に興味津々だった。
「手をいくら伸ばしたって取れやしないさ、」
シリウスは小さなの手を掴んだ。
「キャイ」
はシリウスが自分に構ってくれて嬉しそうだ。
「お前をこの世に授かったのは不幸だったのだろうか」
「だー」
はシリウスの厳しい顔を笑うと、頬をつねった。
シリウスは困ったようにの手をどけた。
「お?」
はキョトンとした。
「お前をこれ以上起こしておくわけにはいかない。戻るか」
「あー」
はま抜けな声をあげ、シリウスの短い髪を掴んだ。
「あう――だ・・・・・あー」
そして到底理解出来ないような言葉を吐き続けながら、寝室に入った。
「あんま」
シリウスがをベビーベッドに降ろすと、はシリウスにしがみつこうとした。
「シリウス、今晩くらいは一緒に寝かせてあげましょう」
いつの間にか、がシリウスの後ろに立っていてシリウスに寄りかかっていた。
「蹴り落とすなよ」
シリウスは茶化した口調でに言った。
「それはあなたでしょう」
はそれをサラリと流し、を抱き上げ、ベッドの自分とシリウスの間に突っ込んだ。
三人は毛布にくるまった。
はにくっついて、シリウスとは向き合っていた。
「明日、また会議があるわね」
が少し疲れ気味に言った。
「は私たちが構ってあげられないことを怒っていいはずなのに、いつも笑ってくれるわ。こっちが元気づけられちゃう」
はを抱き締めた。
「そうだな」
シリウスにはそれだけが精一杯の反応だった。
「ねぇ」
がシリウスを見つめた。
「ダンブルドア先生がね、は良い子だ、と誉めてくださったの」
シリウスはを見つめ返した。
「この子が幸せであれば私はどうなっても構わない――おやすみ、シリウス」
は一人で勝手に話を切り上げると目を瞑った。
シリウスは疲れた様子でとを見て、自分も目を閉じた。
本当は寝てなどいられない、しかし会議中に居眠りなどできやしない。
シリウスは無理矢理に寝ついた。
翌朝、は騒動を一発引き起こした。
「駄目よ、!杖を返しなさい!」
は浮遊の術を使って自分を浮かべているを見上げた。
「落ちるなよ」
シリウスは別に怒る様子もなく、が無事ならそれで良いといった感じだ。
「あー」
はそんな二人をケラケラと笑うだけだ。
「夫婦そろって子供に杖を捕られるなんてな」
会議開始時間より余裕をもって現れたジェームズがリリーに同意を求めた。
「笑ってる時間があったらをとめなさいよ」
リリーはジェームズを一喝し、を引き下ろした。
はをだっこしながら、二本の杖を取りあげた。
「ありがとう、リリー。助かったわ」
「から目を離しちゃ駄目よ、」
リリーが苦笑してに言った。
「そうね。これからは首に縄でもつけておくわ」
は冗談ともつかぬ言い方だ。
「だー」
はだっこに飽きたのか、ジェームズの方に手を伸ばした。
「、そんなに僕が好きなのかい?」
ジェームズは嬉しそうだ。
「いや、ただ珍しいものに興味があるだけだと思うぞ」
シリウスは有頂天のジェームズを突き放した。
「そんなことないよ!、を貸して」
ジェームズはからを受け取ると、頭を撫でた。
「ほら!はおとなしいよ」
しかし、ジェームズがそう言ったとたん、はジェームズの眼鏡を奪い取り、シリウスの方に浮かんで飛んでいった。
「どこがに気に入られているんだ?」
ジェームズはニヤリと笑った。
「うー」
はシリウスにだっこされて嬉しそうだ。
ジェームズの眼鏡をシリウスにかけようとしている。
「まったく。もう!この子はどうして魔法をこんなに使うのかしら。マグルが一緒じゃなくて本当によかったわ」
は疲れた様子でそう言った。
「う?」
はに首をかしげた。
「そんな顔したってダメよ、」
はを睨んだ。
そしてリリーに合図するとシリウスとジェームズを残して別の部屋に移動した。
「なんだ、あの二人」
ジェームズが首をかしげた。
「おまえは、この戦いでどれだけの人が死んでいくと思う?」
シリウスは突然口を開いた。
「どうしたんだ、いきなり」
ジェームズは呆気にとられて笑うばかりだ。
「昨日、がヴォルデモートの手によって殺されるのを夢に見た」
ジェームズはじっとシリウスを見た。
「は何がなんだか分からないまま死んでいった」
「シリウス」
ジェームズが静かに言った。
「を見ろよ」
シリウスはジェームズにそう言われ、に視線を合わせた。
はシリウスが自分を見たのがわかると、にっこりと笑った。
「だー」
はご機嫌だ。
「考えていることって案外実際に起こるものだ。もし、とか、もしも、なんて考えていたら本当にそうなってしまう」
シリウスはジェームズは見て、フッと笑った。
いつもの顔だ。
「俺は何を考えていたんだろうな」
「さぁな」
二人は顔を見合わせて笑った。
は相変わらずシリウスにジェームズの眼鏡をかけようとしていた。
シリウスの深い愛を感じられたら幸いです。笑
<update:2006.03.19>