After Christmas 後始末
クリスマス後の26日、シリウスもジェームズも床で寝ていた。
その回りにはグラスと酒樽の残骸があった。
結局、とスネイプは帰って来ず、リリーとハリーも帰って来ないという連絡があり、大人二人――ジェームズとシリウス――を止める者はいなかった。
そのまま酒を飲み続け、とうとう朝を迎えた。
リーマスも二人に注意はしたが彼らの体は彼らのの自己責任ということで、途中で注意を止めてしまった。
その結果がこれだ。
、この家の毛布とかはどこにあるんだい?」
リーマスは共に寄りかかりながら寝ているシリウスとジェームズを見て言った。
「えっと、多分上の階だと思います。とって来ますね」
「いや、私も行こう。一人で二枚は大変だろう?」
そういって二人は階段を昇り、毛布を片手に数分後、戻って来た。
「パパたち、起きませんね」
は自分の親ながら、ダラシがないと呆れた。
「うーん。少しイタズラでもしてみるかい?溺酔している方が悪いからね」
少しリーマスの笑顔に黒いものを感じたのはの気のせいだろうか。
「でも、パパは怒るでしょう?」
「私が君を叱らせないよ」
リーマスはそういって台所からたらいに水をたくさん入れて運んできた。
「水をかけるんですか?」
「いや、違う。私がお手本をみせてあげるから少し待って」
するとリーマスは杖を取り出し、たらいにくんだ水に向かって杖先を向けるとブツブツと何かを唱えた。
すると不思議なことに水がだんだんと赤く染まっていった。
「ル、ルーピン先生、これって・・・・」
あまりの赤の鮮明さには鳥肌がたった。
「大丈夫。血じゃないよ。ただの赤く染まった水さ。これを二人の頭の上にそっと垂らすんだ。するとどうなると思う?」
「多分、血だと思うと思います」
「正解」
リーマスは軽やかにそう言うとスポイトを出してに手渡した。
「君の分だよ、。これを使って水を頭から垂らすんだ。シリウスがいい?ジェームズがいい?」
「パパじゃない方がいいです」
二人は自分のターゲットが決まったところでスポイトで赤く染まった水を吸いあげ、そっとターゲットの頭へ。
「わー!!」
シリウスとジェームズは一斉に悲鳴を上げて起き上がった。
!」
ジェームズは怒ったような、驚いたような、笑いたそうな顔でマジマジとを見た。
「リーマス!血が、血が!」
そのとなりでシリウスは慌てた様子で頭から流れる液体を触った。
その様子を見て、リーマスは堪えきれなくなり、吹き出してしまった。
「パパ、それ、ただの赤い水なんだけど・・・・・」
は笑っていいのか、いけないのか、分からずに微妙な顔でシリウスを見た。
「へ?」
悪戯に引っかからなかったジェームズと仕掛け人のリーマスは大笑いした。

「――へえ、そういうわけで」
ジェームズはこんな悪戯を考え出すのは元悪戯仕掛け人のリーマスしかいないと主張し、リーマスに事情聴取した。
「いつまでもぐっすり眠っている方が悪いんだよね、
もリーマスの言っていることが正論と思ったので、コクンと頷いた。
もリーマスの見方か。そうしたら、仕方ないね。ね、シリウス?」
ジェームズはあっさりと、認め、膨れっ面のシリウスを見た。
「だけど、あれはやりすぎだ」
「シリウス、ご機嫌直してよ。とリリーたちが帰ってくるよ、そろそろ」
リーマスがなだめてもシリウスは鼻で笑うだけだった。
「直してくれなきゃ、ママたちにパパは昨日、ずっと酔っ払ってた、って言っちゃうよ!」
すると、今度、シリウスは慌てたようにをなだめ出した。
「悪かった」
「じゃあ早くリビングを片付けて」
そういってはジェームズとシリウスを働かせ始めた。
、もしかしてあの二人の扱い方を熟知しているのかい?」
リーマスはこっそりに耳打ちした。
すると、の顔には不敵な笑みがこぼれた。

「ただいまー」
11時ごろ、とリリーとハリーが帰ってきた。
「あら、クリスマスにでも掃除したの?」
リビングで昼食の支度を始めようしたリリーがに聞いた。
「パパたちがどうしても掃除をしたいって言うからね」
の微笑みに黒い影が見えた。
「スネイプは帰ったの?」
「スネイプ先生でしょう?」
リリーが買ってきた食料を片付けるのを手伝いながら聞くと、後ろからが来て、をたしなめた。
「自分の家に帰ったわよ」
の目はに嬉しいんでしょう?と語りかけていた。
「向こうに行ってこようっと」
すると、は自分の身を守るために父親たちの方へ逃げていった。
「まったく、親子そろって・・・・・」
の背中にはため息をついた。

暖炉の前にはシリウス、ジェームズ、リーマス、ハリーと並んで座っていた。
もおいでよ」
ジェームズは自分の隣を指差した。
しかし、はそこには座らず、リーマスの隣に座った。
反対側にはハリーが座っていた。
「二人そろってリーマスの隣なの?」
ジェームズが捨て猫のような情けない声を出した。
「だけど、がジェームズの隣に座るよりは安心だ」
ジェームズの隣でシリウスがそう呟いた。
しかし、ジェームズがそれを聞き逃すはずはなく、シリウスの肩を揺すった。
「それはどういう意味さ?」
「さぁな」
シリウスはそう言ってジェームズの言葉を流した。
二人はまるで、漫才師のようだった。
リーマスもハリーももそれを見て笑ったのは言うまでもない。
「準備を手伝って!」
台所からリリーの声が聞こえ、シリウスたち五人は笑いながら台所に向かった。
来年のクリスマスは今年より、もっと楽しいといいな、とは密かに三人の大人を見ながら思った。
、どうしたの?」
すると、の視線を感じたのか、リーマスが振り返った。
「ううん、何でもありません」
はにっこりと笑った。
つられてリーマスも笑った。
優しい笑顔だった。
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Happy dayの続きです。
<update:2005.12.27>