Disease 病気
ある朝のことでした。
特にいつもと変わった部分はなく、強いて言えば、がなかなか起きてこなかったことでしょうか。
、何時まで寝ているの!」
の部屋を勢い良く開けた。
それはいつものことで、に叩き起こされるまで、大体は寝ていた。
「今、何時だと思ってるの?」
がベッドに近づくと、いつもと同じように寝ているが目に入った。
しかし、その姿だけはいつもと違っていた。
、あなた、具合が悪いの?」
やっとの異変に気付いたは、のおでこに手を乗せた。
「少し熱いわね・・・苦しい?」
はボーッとする頭でコクリと頷いた。
は少し考えると、暖炉に何か粉を投げ入れてシリウスの名前を呼んだ。
すると不思議なことに数秒後、暖炉からシリウスが現れた。
、どうした?」
シリウスは当惑した様子でを見た。
が風邪をひいたみたいなの。でも魔法薬を切らしてて・・・今からリリーと買ってくるから、の様子を見ててくれないかしら」
そして、はシリウスの返事も聞かず、リリーを呼びに行った。
シリウスはその後ろ姿を見ながら溜め息をついた。
また、に向き直ると、の目にかかっていた前髪を退かした。
「つらいか?」
シリウスは心配そうに言った。
「パパぁ」
は涙の溜った目でシリウスを見た。
「何かしてほしいことでもあるか?」
いつになく、シリウスは優しかった。
は首を横にふった。
そしてシリウスは優しくを撫でた。
すると、そのときバッとドアが開いて、ジェームズがハリーを抱えて飛込んできた。
バカ!ハリーまで風邪をひいたらどうするんだよ」
シリウスはジェームズを追い返そうとしたが、その行為は無駄に終わった。
「シリウス!を一人で看病しようったってそうはいかないからな!」
ジェームズはシリウスにハリーを預け、の容態を看た。
、大丈夫・・・じゃないよね」
ジェームズは自分のおでこをのおでこにくっつけて熱を計った。
「少し冷やそうか。マグルはね、おでこに氷水を乗せて、風邪を治すんだって」
そう言ってジェームズは台所に向かった。
「たっく・・・ハリーに風邪が移ったらどうするつもりなんだ、あいつ」
シリウスは盛大に溜め息をついた。

突然、ハリーはシリウスの腕の中での名前を呼びながら暴れだした。
「ハリーまでに気があるのか!?」
二家にして、のことを心配することにシリウスは驚きを隠せなかった。
だよ、まったく・・・みんなをハラハラさせて・・・早く良くなれよ」
暴れるハリーをの頭元に下ろし、シリウスはの頬を優しく撫でた。
「早く良くなれ、良くなれ」
シリウスから下ろされたハリーは、見よう見まねでシリウスと同じようにの頬を撫でた。
相変わらずの頬は赤い。
、持ってきたよ!」
そのとき、ジェームズが勢い良く部屋のドアを開けて入ってきた。
「静かにしろよ、ジェームズ」
シリウスはジェームズをたしなめた。
ジェームズはちょっと反省したのか、静かな足取りで、の枕元に座り込むと、ベッド淵に手をかけてのおでこに氷水を乗せた。
、動かないで。――そう、良い子だ」
そして、杖を取りだし、軽く振った。
「何をしたんだ?」
「氷水がおでこからずれないようにしたんだ。一々、手で乗せるのは大変だろうしね」
ジェームズは少し心配そうにを見るシリウスに言った――僕がヘマすると思うかい?
そのとき、改めてを見たとき、ジェームズはベッドの異変に気付いた。
「ハリー!また、なんで、よりによってのベッドの上にいるんだい?」
ジェームズは声も抑えるのを忘れ、ヒステリックに言った。
「ハリーを抱き上げたらの名前を呼んで暴れだしたんだ。で、降ろしてみるとこの有り様。と離れたくないってさ」
シリウスはちょっとたのしいオモチャ――ジェームズの嫉妬する様子――を楽しむように、挑発し始めた。
「ハリー!の風邪が移ったら大変だろう、直ぐ様降りなさい」
自分がハリーをこの部屋に連れてきたことも棚に上げ、ジェームズはハリーを叱った。
「やだ!それにパパだって移ったら大変じゃないか。お金が貰えないぞ」
ジェームズはハリーの言葉に頭を抱えた。
その隣でシリウスは笑っていた。
も笑っていた。
すると、ジェームズがふざけた様子で、少し傷ついたように言った。
は僕の見方だよね?」
ジェームズが優しくの頬を撫でると、は肯定も否定もせずに笑った。
「ジェームズ、が困ってるだろ?離れろよ」
「やだ!」
子も子だが、親も親だった。
ハリーと同じく、の周りでダダをこねた。
「ママたち遅いね」
既に大人らしいとは言えない醜い争いをしているジェームズとシリウスを横目に、ハリーはに優しく話しかけた。
「うん」
はハリーが撫でようとした手を掴んだ。
「眠いの」
がハリーに訴えた。
既にジェームズとシリウスの声は聞こえていなかった。
「寝ちゃいなよ。ずっとここにいるもん、が起きるまで」
ハリーは幼いながらに、に気を遣いながら言った。
は優しく笑うと、ゆっくりと目を閉じた。
もう、周りのものを何も感じない――握ったハリーの手以外は。

数時間後、リリーとが帰ってきた。
そして、そのままの部屋に行くと二人は唖然とした。
の隣ではハリーが寝て、足元にはジェームズとシリウスがベッドによりかかりながら寝ていた。
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ハリーのちょっと初恋系なお話。
<update:2005.12.19>