「あぁぁ!!」
真夜中に響くの声で、シリウスは目覚めた。
今日はリリーとジェームズとハリーは里帰して、留守だったし、も顔を出すと言っていたので、彼らが部屋に駆け付けるということはなかった。
シリウスはの声からただ事ではないと感じ、部屋にすっとんで行った。
「どうした、!?」
シリウスが部屋を覗くと、まだ3才のは毛布を被って震えていた。
「パパ・・・」
近付いてよく見ると、泣いていた。
「どうした、大丈夫か?」
「ガタガタって・・・タンスが揺れるの。クリーチャーも部屋に入ってくるし・・・」
はそう言うと、毛布をギュッと握った。
シリウスはその手を優しく触り、毛布を握ったをそのまま抱き上げた。
「大丈夫。明日になればもジェームズたちも帰ってくる。そうしたら、タンスが揺れる原因を調べてやるから――」
シリウスがそう言った途端、またタンスが揺れた。
「多分、ボガートだ。タンスを開けなければ害はない。クリーチャーの方には二度との部屋に入らないように言うから」
未だ泣きじゃくるをベッドに下ろすと、シリウスは部屋を出ていこうとした。
「パパ!」
は叫んだ。
「やだやだ、一人にしないで!!」
のせっぱ詰まった様子に、シリウスは迷いながらも一つ、良いアイディアを出した。
「一緒に・・・寝るか?」
今日はがいないから十分広さはあるし、リリーにそんなことをしたら教育に悪いと叫ばれる心配もない――シリウスはそう思いながらを抱き上げて、寝室に向かった。
寝室につくと、はまだ小さいためか、すぐに寝付いた。
の顔に掛った前髪を退けてやると、の顔がよく見えた。
まだ幼い顔立ちなのに、言うことは鋭い。
しかし、まだ恐怖心が強く、何かに自分から手を出そうとしない、おまけに無防備だ。
ジェームズはよく女の子の子でいいね、と言うが、シリウスには理解出来ない。
いつも女の子のどこがいいのかと思う。
一緒に遊ぶことも出来なければ、大人になると、だんだん自分から離れていく――シリウスはふと、の頭を撫でていた手を止めた。
ギュッとがシリウスの左手を掴んで、シリウスは左手に温もりを感じたのだ。
はまだ小さいので反射的に側にあるものを掴んだのだが、シリウスには、とても良いタイミングで掴まれたので、が違うよ、と主張しているように思えた。
「おやすみ、」
シリウスはもう一度だけ、の頭を撫でると、眠りについた。
次の日の正午前、ジェームズたちが帰ってきた。
帰ってくる早々、ジェームズはを抱き上げた。
「ただいま、!元気だったかい?寂しかったかい?」
「パパと一緒だったから寂しくなかったよ」
の返答にジェームズは一瞬黒い陰を見せた。
「でもね、昨日、タンスが揺れたの。だからパパと一瞬に寝たよ」
に悪気はないが、ジェームズには無邪気に言っているようには思えなかった。
「・・・それは怖かったね」
ジェームズはを下に下ろした。
リリーはそれを横目で見ながらハリーに言った。
「さぁ、ハリー、荷物を片付けましょう。――パパは放っておいてね」
「うん!わかった、ママ」
二人はそう言って階段に向かった。
「さぁ、私も片付けしようかしら」
も大して何も入っていないようなバッグを持ち上げて、言った。
「手伝うか?」
シリウスが聞いた。
「いいわよ。あなたはジェームズと一緒にボガート退治でもしたら?いつまでもそのままじゃが可哀想だわ。それとも、また一緒に寝たい、とか?」
「寝たい!」
は勢い良く手を挙げたジェームズを丸ごと無視し、二階に上がって行った。
「さて、パッドフット。の部屋に向かおうか。事を片付けてから、ゆっくり話しを聞くよ」
ジェームズはシリウスを先に行かせ、と手を繋いだ。
「僕の勇姿を見せてあげるよ」
はコクリと頷くと、ジェームズに半分引きずられながら、自分の部屋に向かった。
「あのタンス?確かに揺れてるね。、ドアのところで待っていて。中に入ってはいけない。きっと、君が狙われることになる」
「じゃあ、何故、連れて来たんだよ」
シリウスはジェームズに突っ込んだ。
「何故って、僕の勇姿を見せるからさ」
それを軽くスルーしながら、ジェームズはタンスに杖を向けた。
「さぁ、始めよう。君がドアを開けて」
シリウスはジェームズの真剣になった表情を読み取ると、ゆっくりとタンスに近付いた。
そして、に危険がないのを確認し、扉を開いた。
中からはディメンターが出てきた。
はそのものが出す雰囲気に空恐ろしくなり、悲鳴をあげようとしたが、それは素早く、の元へ来たシリウスによって妨げられた。
「大丈夫。何も怖いことはない。お前には指一本触れさせない――指があったらの話だが」
の口を塞ぎながら、耳元で安心させるように囁いた。
その間に、事は片付いていた。
「シリウス、勝手に退散させちゃったけど、よかったか?」
「あぁ」
シリウスは軽く頷くと、未だ不安そうな顔のを抱き上げた。
「ジェームズ、女の子って案外いいもんだな」
シリウスは唐突に話始めた。
「どうしたんだい、いきなり」
「大した理由はないが・・・が娘でよかったな、と改めて感じただけだ」
シリウスはに対してにっこり笑った。
ジェームズが言った。
「だから前から言っていただろう?女の子はいいって。パパ、パパって可愛く助けを求めてくれ――」
「そんなんじゃないさ、プロングズ」
シリウスが遮った。
「別ににそんなことは求めていない。ただ単に、この子がであることに感謝したのさ」
いつになく、シリウスが真面目そうに言ったので、ジェームズも真面目に答えた。
「うん、そうだね。例え、彼女が有名人だとしても、僕らにとっては大切なだ。いい子だね、」
ジェームズがそう言うとは嬉しそうに、言った。
「パパもジェームズもみんないい子だよ」
「そうだね」
クスクスと笑いをこぼしながら、ジェームズとシリウスは一階に降りていった。
パパとのほのぼの場面です(^O^)/
<update:2005.11.11>